本領発揮!
――変装用のマスクだった。
なぜこんなところに本格的な変装道具があるんだ?
そう思ったが、冒険者ギルドに近いということは、冒険者たちが利用しているのだろう。
ユウラが得意とする声真似を駆使して、ギルド内に潜入することを考えた。
お店から、タレ目で銀髪のモノを選んだ。瞳の色は紫を連想させないように、澄み切った青空のようなシアン色を選択した。
両方をお店の更衣室で装着すれば、ユウラ感は亡くなり、少し大人っぽく見える。
「これは、なかなかいい出来だな」
その場で声を整えるための咳払いをし、「あー、あー」と高さなどを細かく変えていく。
俺の話し方は比較的、早口で大げさ。ピン芸人をするうえで、リアクションが大きくなり、男女関係なく口説くために、早口めで相手を褒める癖が出来ていたからだ。
全部を消すために、ゆったりとした速度で、動作は控えめな大人しい性格に変える。
「これ、いただいてもいいですか?」
「まいど」
変装をしたまま、教会へ一度戻り、完成度を確かめることにした。
ちょうど、外に出てきたサナに声をかける。
「あのー、すいません。僕、この街に来るのが初めてで迷ってしまって」
サナは、俺の方を向き最初にあった時のような大人っぽい微笑みで対応する。
「どちらに行かれる予定ですか?」
「この、カーム街で人気のパン屋さんなのですが……途中で道を間違えたのか、看板がなくて」
「そうだったんですね。それなら、私が案内してもよろしいでしょうか?」
「是非、お願いします」
控えめな動作でお辞儀をした後、サナの裾を軽くつまんだ。
その動作にサナはあわあわと手を動かした。
「サナさん、俺ですよ。気づかなかったですか?」
咳払い一つで、元の声を出しいつも通りの話し方に戻す。
彼女は、俺の顔をじっと見つめても首を傾げる。
「えっ? 本当にユウラ、さん、ですか?」
「そうですよ。変装どうでしたか?」
「全然わかりませんでしたよ」
サナは俺の身体を触りまくり、感心しているようだった。
「じゃ、ありがとうございました」
変装の確認が出来たところで、サナには何も言わずに立ち去った。
向かう先は、先ほど入れなかった冒険者ギルド。
路地裏で何度か咳払いをして声を調整する。
「あー、あー、んん、あー」
後ろ姿だけ見ると変な人だろうな。
チューニングを終えて、冒険者ギルドの扉を開けた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。初めてですか?」
左右に丸い机と椅子。そこに冒険者パーティーの人たちがたむろっている。
声をかけてきてくれたのは、正面奥の受付の女性だった。
「あの、初めまして」
近づいたとき、本当の名前を名乗るべきか迷いとっさに偽名を言った。
「ユウです……」
受付員は、笑顔を浮かべて水晶玉を机に乗せる。
「こちらに触れてみてもらってもよろしいでしょうか?」
言われるがままに水晶玉に触れてみる。透明だった色が徐々に青く光り始める。
「水魔法持ちですね。Gランクからのスタートになります。名前を記入後、掲示板に貼ってある中から依頼を選んでください」
「ありがとうございます」
冒険者の登録が終わり、依頼を見に行くとGランクの仕事はトイレ掃除くらいしかなかった。もう一つランクが上がってFランクになれば、薬草採取もできるからひとまずそこを目指すことにした。
数の多い公衆トイレの掃除を終えるとすぐにランクが上がり、少し拍子抜けを食らったが、これで薬草採取の依頼もできる。
トイレ掃除の金額はかなり良く、本が何冊か買えそうだ。
思ったらすぐに銀貨を握り締めて、本屋に向かった。
魔力詰まり症についての書籍は、値段が高く数も少ない。そのため、薬草についての本を数冊買うだけにした。
ひとまず、邸に戻り本を開く。
見たことが一般的に流通しているようなものから、珍しいものまで――。
「これ……っ」




