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俺でもできる仕事?

 女性は柔らかい微笑みを作り、黒い服で身を包んでいる。

 胸元には、金色の十字架がぶら下げられていた。


「聖職者?」

 考えたことをそのまま言ってしまったのに、彼女は笑みを崩さない。


「はい、その通りです。それよりも、体調は大丈夫なんですか? 中で少し休みますか?」

「あ、いえ」

 彼女に断りを入れて立ち去ろうとした時、もう一度声をかけられる。


「なにか困っていませんか?」

 心配するような表情で顔を覗きこまれ、俺は、手を握り締めて答える。


「仕事を探していたのですが、事情があって働けなくて」

 本当のことを素直に話せば、この人も俺から離れるはずだ。

 お願いだから、俺にお金を稼がせてくれ。


「わかりました。それでは、教会の外の清掃を手伝っていただけますか?」

 彼女は眉根を下げて、困ったような顔になる。

 何があったか知らないけど、仕事ならなんでも引き受けたい。


「大丈夫です。いつから働いてもいいですか?」

 食い気味に彼女に詰め寄る。彼女は、先ほどの顔が嘘のように明るい笑顔を取り戻した。


「今からでもお願いしたいです!」

「是非、あ、俺ユウラ・アイジェントと言います」

「申し遅れました。私は、サナです。清掃は基本的に教会の信徒がやるのですが、流行り病でいろいろと人手不足なんです」

 瞳を潤ませながら、事情を話し出す。


 本当に大変だったようで、俺の手を掴んで上下に振る。


「ありがとうございます。ありがとうございます」

「いえ、お役に立てそうでよかったです」

 感謝を示してくれるのはありがたい。だけどこれ以上ここにいれば、いろいろと目立ってしまう。


「サナさん。感謝は伝わったので、教会へ行きましょうか」

「はっ、そうでした。すいません、すぐにご案内します」

 頬を赤く染め、両手で顔をぱたぱたと仰ぐ。


「私、大人っぽくなりたくて頑張っているのですが、気を抜くと素が出ちゃって、あはは」

「いいじゃないですか。俺はかわいいと思いますけど」

 その一言に、サナは両手で顔を覆ってしまった。何か気に障るようなこと言ったかな?


 とりあえず、教会の中まで話さないよう口をつぐんだ。

 

 


「こちらでお待ちください。私は司祭様に確認を取ってきます」

 案内された椅子に座り、中の様子をうかがう。


 外から見てもわかっていたが、埃一つない清潔な場所だ。ステンドグラスは大きく、太陽の光で反射した色が混ざり合い、輝いている。


「ユウラ様。司祭様から許可が出ましたので、今日からよろしくお願いします」

 笑顔のサナは手にほうきとちりとりを抱えて戻ってきた。


「ありがとうございます」

 俺はシャツを腕まくりしてから、サナさんが持ってきた掃除セットを手にする。


「あ、それと、お金を稼ぐには冒険者ギルドに行ってみてはどうですか? ここで掃除をするよりも、まとまったお金を貰えますよ」

「そうですね。掃除が終わったら行ってみようと思います。ありがとうございます」

 俺は、頼まれた外の清掃を終わらせたその足で、冒険者ギルドに向かった。



 

 剣と盾がシンボルの看板がぶら下げられている冒険者ギルドにやってきた。


 中から、強面の男たちが次々と扉から出てくる。

 反射的に足が邸の方へと向かうが、深呼吸で気持ちを落ち着かせる。


「どうしたんだ……お前、アイジェント家の……」

 話しかけてくれた冒険者パーティーの男は、俺をみるなり露骨に顔を歪めた。


「どうした?」

「なになに~」

 次々に俺の様子を見る野次馬が集まってきて、その場を離れるしかなかった。

 俺の顔はこの街の人たちには知られてしまっている。どうすれば……。


 仕事をしたいだけなのに、なんでこんなに試練があるんだよ。

 教会へ戻って他の方法を聞こうと思った時だった。ふと、あることを思い出した。


 そんな俺の目に飛び込んできたものは――。


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