表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

嫌われ者の過去(一)

 どうにかして、父親と兄に好かれなければならない。

 俺がこんなんだと、いつまでも剣を向けられる。

 悪い奴じゃなく、良い奴だとわかってもらわないと。


 ユウリに俺の部屋を聞いてから、外に出る。いまだに僕に剣を向けていた。


「お父様、お兄様。俺は、これから変わります。なので、様子を見てくれませんか」

 地面に頭を下げ、謝るが返ってきたのはぁ頭に乗っかる足の重さと「死ね」という暴言だけだった。


 二人に、好かれるのは骨が折れそうだな。


 仲良く作戦はとりあえず置いとくとして、お金を稼がなきゃ何も始まらない。

 行動力だけが取り柄の俺は、邸の外へと繰り出した。

 前世? との街並みとは違い、同じような色合いの家が所せましと建っている。

 足元はレンガで埋め尽くされ、ゲームの中の世界観に興奮が抑えられない。


「おー、すっげえー」


 街を抜けた先にあったのは、清潔感のある白い壁に、青い屋根をした教会だった。

 太陽の光が反射して、輝いている。

 ここまで来るのに、冷えた目線で見られていたが、気にせずに仕事を探す。


「あの、この辺で仕事ありませんか?」

「すまん、他を当たってくれ」


「あの――」

「ごめんなさい」


「あ」

「ひっ、ごめんなさい」

 声をかける前に逃げられてしまう。


 怖い顔なんてしてないのに、一応貴族だから恐れているのか?

 だが、あの怯え方は……。


 しばらく、考え込み。思い当たる節を探す。

 悪役令息のユウラは七歳のころ、ある事件を起こしていた。

 これをきっかけに、家族はユウラを嫌い、暗殺の計画を立て始める。


「誤解なんだけどな……」

 ユウラ誘拐事件。俺の名前が入ってしまった辛い事件だ。


 ことの始まりは、平民の女の子が誘拐されたことだ。僕はたまたま、ユウリのために家族で買い物に来ていた。


「父様、兄様。誰か誘拐されたみたいです」

「そうだな」

「まぁ、俺達には関係ないから、ほっとけ」

 二人の返事は、自分が求めるものと違った。


「なんで? 助けを求めてるのに行かないの?」

「平民だからな」


 兄様の一言に、胸の奥が痛んだ。身分が違えば助けないの?

 父様と繋いでいた手を離し、誘拐されている子どもを追う。

 裏路地に入ったとこで、止まった。


「その子を離して、誘拐は悪いことだよ」

「うるせぇな、クソガキ」

 ナイフを持った男が、俺の方に向き直る。


「おい、ちょっと待て」

「ああ?」

「こいつ、貴族じゃねえか?」

 ナイフの行き先は俺から女の子の方へと戻る。


 ゆっくりと近づいてきたもう一人の男が、僕を担ぎあげ小屋に閉じ込めた。

 小さな作業部屋のような場所に二人、身を縮めてお互いをあっためた。


「僕の名前は、ユウラ・アイジェント。君は?」

「……ミーユです」

 小さな声で答えてくれた。僕は、ミーユを守ると決めて安心できるように少しの嘘をついた。


「僕がいるから大丈夫だよ。すぐに、助けが来る」

 彼女に笑いかけた時、扉が開いた。


「なーに、こそこそ話してんだ」

 ナイフを持った男が僕たちに近づく。首元に刃物を突き付けて、少しでも動けば傷がついてしまう。


「大人しくしてろ。助けを呼ばれると困るからな。おい、お前」

 呼ばれたミーユは震えながらも男に近づく。


「もし、逃げるそぶりをしたらこいつの命はねぇ」

 彼女は干し草に投げ捨てられ、先ほどナイフが触れていた頬から血が流れた。


「ミーユっ」

「ふんっ、わかったか?」

 立ち去る男を睨みつけ、僕は汚れていないシャツを切り裂いて、彼女の怪我を抑えた。


「痛いよね、本当にごめん。絶対に助けるから」

「っ、うん」

 その時、去ったはずの男が扉を蹴破り中に入ってきた。


「クソガキ。お前、助け呼んだな?」

 ナイフが眼前で光る。「ひっ」喉が引きつく。


「お前のせいで、こいつは死ぬ」

「っや、やめて、助けて」

 ミーユに向けてナイフが向かう。


 ――その瞬間、身体は勝手に動いていた。


 彼女の前に立ちはだかると、男は少し躊躇したのち刺そうとしてきた。

 僕は、目をつぶり覚悟を決めた。だが、一向に刺される気配がない。

 固く閉じていた目を開くと、目の前の光景に絶句した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ