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学生に不人気な時代を研究していた大学教授、異世界で奴隷から皇帝へ  作者: 越後⭐︎ドラゴン
初陣編

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5話

 オウモウはもともと(しん)の役人であった。切れ者であったが、切れすぎるが(ゆえ)に敵が多く出世しなかった。秦が中央に進出(しんしゅつ)し晋を追い払うと、オウモウは隠棲(いんせい)していた。晋は南の大河を渡って亡命政権(ぼうめいせいけん)として東晋(とうしん)を起こした。オウモウはそれに従う気はなかった。腐敗(ふはい)し王侯どうしの内乱(ないらん)を起こし遊牧民を介入(かいにゅう)させ分裂(ぶんれつ)していった国に興味はなかった。


 秦の王は暴虐(ぼうぎゃく)そのものであった。オウモウはとてもそのような国に使えようとは思わなかった。かといって燕や涼といった国に行こうと思わなかった。


 秦はフケンのクーデターにより王が変わった。オウモウはしばらく様子を見ていたが、フケンは前王と違うようだ。善政(ぜんせい)といってよい。そのうち、オウモウの噂を聞きつけたフケンが庵を訪れてきた。はじめは断った。フケンは種族共生(しゅぞくきょうせい)を語った。同じ種族でも平気で裏切り敵対(てきたい)する時代、とても信用できる言葉ではないと思った。


 「わたしは隠居の身。お断りさせていただきます」


 フケンは再び訪れてきた。今度も断った。フケンはオウモウを宰相(さいしょう)にすると言う。少し心が動いたが、官職に飛びついたと思われるのも嫌なので断った。


 「宰相になりたいわけではありません。おかえりください」


 フケンはオウモウの言葉に肩を落として帰っていった。もう来ないかと思ったが、フケンは再びやってきた。


 三度目の来訪。三顧(さんこ)の礼という言葉がある。三度断るのは礼に失すると思いフケンに仕えることを承諾(しょうだく)した。


 オウモウはフケンに秦が天下を統一する道を説いた。


 「まずは代を討つことです」


 代と燕は隣り合っており同じ種族が元になっているが、昔からの因縁(いんねん)の積み重ねで犬猿(けんえん)の仲であった。代を攻めても燕が助けることは無い。国力で劣る代を併合(へいごう)することで力を付けよと言った。


 ダイの次は燕だ。ここは強敵である。南に逃れたとは言え東晋も(あなど)れない。燕と東晋が結ぶ可能性も無い分けではないが、東晋は揚子江(ようすこう)の上流地域に目が行っていた。そこは山が険しく移動が困難であった。だが鉱石の産地である。東晋がある地域は農耕地ばかりで鉱石が欲しかった。涼もこの地域を狙っており、涼と東晋でしばしば小競り合いとしている。


 オウモウはその間に燕を討てと言った。燕を討てば涼を平定するのは容易になる。涼を従えれば東晋との最後の雌雄(しゆう)を決せる戦いに臨める。


 燕はボヨウ氏による遊牧民の国で、秦ほどでは無いが城郭(じょうかく)に拠り戦いにも強かった。中でもボヨウスイという名将は不敗(ふはい)の将軍である。オウモウはボヨウスイと戦う為に戦力増強を進言(しんげん)する。トウキョウやチョウシと言った猛将が登用された。だがそれでもボヨウスイと互角に戦えるかどうかであろう。


 唯一の救いはボヨウスイと燕の宰相のヒョウと仲が悪いことであった。オウモウは秦が力を付ける前にボヨウスイが攻め込んでこないようにヒョウに工作(こうさく)をした。ボヨウスイは大きな手柄を立てると必ずや裏切って独立すると王であるボヨウイに吹き込んだ。

 

 ボヨウイは判断力が弱く、ヒョウの言うことを全面的(ぜんめんてき)に信じたわけでは無いが、かといってボヨウスイを遠ざけることもしなかった。だが、ボヨウスイはヒョウの後ろ盾が無い為、大きな戦に必要な戦費を調達(ちょうたつ)することが出来なかった。


 秦はオウモウの働きにより数年で国力が倍になった。


「いよいよ燕を討つ時がきたか?」


 フケンはオウモウに問う。オウモウは静かに首を振る。


「攻めるとなると、ボヨウスイが出てきます。勝てる保証がありません」


「だが、ボヨウスイは若い。死ぬのを待つことも出来ないであろう」


 フケンはボヨウスイを恐れるあまり、動かずにいることは出来ないと言った。フケンは部下と喧々諤々(けんけんがくがく)と議論をしたうえで、自ら判断をするやり方を好んだ。燕を攻めることはフケンの中では決まっている。だがあえてオウモウの反対意見も聞くということで、賢王として振る舞うのであった。


「ならば軍を二つに割り進軍させ、ボヨウスイを()()けにしましょう」


 オウモウは燕攻略の軍を編成(へんせい)した。主将はチョウシである。副将にやはり最近頭角(とうかく)を現してきたジョセイを付けた。これにトウキョウの軍が付き、三軍を持ってボヨウスイと対峙(たいじ)する。容易に攻めかかることはしない。チョウシの得意とする土魔法で防壁(ぼうへき)を築き対峙させる。


 そしてもう一軍、本命の燕の首都である洛陽(らくよう)攻撃軍としてモクランを指名した。オウモウ自身は後方で指揮をする。こうして2方向からの進軍が始まった。


 チョウシ軍4万、ジョセイ軍2万、トウキョウ軍3万は洛陽を狙うと見せかけ、手前の寿春(じゅしゅん)に布陣する。チョウシの魔法により防御壁(ぼうぎょへき)を築き、即席(そくせき)の砦に籠った。燕は首都洛陽の喉元(のどもと)を突き付けられた形である。


 それに対しボヨウスイが10万を率い、寿春と洛陽の中間地点に布陣し、やはり防御壁を築き対峙した。少々、距離はあるが睨みあう格好になる。ボヨウスイはモクランの3万が北から別動隊(べつどうたい)として動いていることも把握していた。それはヒョウに知らせた。あとは対処(たいしょ)するはずだ。


 ヒョウは予備兵も民兵(みんぺい)もすべて駆り出し、洛陽の北へ展開した。その数は名目上(めいもくじょう)は40万人である。数こそ多いが実際に戦えるのはヒョウ直下(ちょっか)の3万だろう。オウモウは燕がここまで総力を挙げてきたことに驚いたが、一撃で(ほうむ)り去るよい機会だと思った。モクランに構わず進軍するよう指示した。


 千人将でもあるタクゲンはモクラン軍に配属される。そこにはジュンカン、そしてケイの姿があった。

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