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学生に不人気な時代を研究していた大学教授、異世界で奴隷から皇帝へ  作者: 越後⭐︎ドラゴン
北部攻略編

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33/41

33話

 チョウシは、皇太子こうたいしフコウをおさえきれなくなっていた。フコウは毎日まいにちのように「出撃しゅつげきさせろ」と言ってくるようになった。


 この戦で、フケン即位そくい立役者たてやくしゃであり、興国こうこく英雄えいゆうであるリキが死んだ。リキはフコウの家庭教師かていきょうしでもあった。


「見ろ! あの燕軍えんぐん散漫さんまん攻撃こうげきを!やつらは我らをおそれているのだ!」


 このところ燕軍の攻撃は、一日いちにち何度なんどしんじんの前に現れては、ぱらぱらと矢をかけるだけのものになっている。


「きっと作戦さくせんがうまくいき、北部ほくぶ混乱こんらんして燕軍の士気しきが落ちているに違いない!」


 燕北部がモクラン軍の焦土作戦しょうどさくせんにより大混乱におちいっていることは、諜報部隊ちょうほうぶたい報告ほうこくにより事実じじつであった。


 だが、その成果せいかが本当に現れるのは、もうすこあと――収穫しゅうかく季節きせつになってからだ。


 おそらく燕の今年の年貢ねんぐ例年れいねん半分はんぶん以下いかになる。飢饉ききんが来るよりもひど状況じょうきょうになると見られていた。


「燕軍の攻撃は、こちらが出てくるのをさそっているのです。あのようなやす挑発ちょうはつに乗ってはいけません」


 チョウシはフコウをさとす。だがフコウはリキのあだつのだと言いつのり、チョウシが諭すたびにたりらし、自分の軍営ぐんえいへ戻っていった。


 カクは、チョウシの陣の中の気配けはいらいでいるのを感じていた。自分が感じているということは、ボヨウスイも同じだろう。


 だが、ボヨウスイは不気味ぶきみなほど動かなかった。


 北部はモクラン軍により散々《さんざん》にらされ、現地げんちの軍も、ボヨウスイが送った援軍えんぐんも、秦軍に翻弄ほんろうされ、まともなぶつかり合いができていないという。


 カクは魔道具兵まどうぐへいを出した。チョウシの陣の揺らぎが見える方角ほうがくに、水弾すいだんを撃たせた。


 もちろん陣のおくまでとどくものではない。だが、揺らぎはたしかに大きくなった。


 フコウは、カクが魔道具兵を連れて陣の前に現れたと聞き、いそいで馬にび乗った。


「カクを討つ! 余に続け!」


 尊敬そんけいするリキを、卑怯ひきょうにも魔道具で殺害さつがいしたカクがゆるせなかった。


 そのカクが、こともあろうに魔道具兵を引き連れて現れたのだ。フコウは完全かんぜん冷静れいせいさをうしなっていた。


 フコウの軍営のさわぎを聞きつけ、チョウシはあわてて馬に乗り飛び出した。そして出撃しようとするフコウの馬の前へ、進路しんろさえぎるように飛び出す。


 フコウの馬はおどろいて立ち上がり、フコウをとした。チョウシは急いで馬を降り、フコウを助け起こす。


「ご無礼ぶれいつかまつる。フコウ様、ここはえてください。ここで出撃すれば、お命に関わります!」


 フコウはチョウシの手をはらいのけた。


めるな! リキの仇を討つのだ!」


 なおも言い募るフコウに、チョウシはいしばった。


「……御免ごめん!」


 チョウシはやむを得ず、フコウのくび手刀てがたなを入れて気絶きぜつさせた。部下に幕舎ばくしゃへ連れて行き、監視かんしせよと命じる。


 カクは、チョウシの陣の揺らぎが収まるのを見て引き上げた。


「チョウシも、面倒めんどうなものをかかえたものだ……」


 カクはチョウシの立場たちば不憫ふびんに思った。だが、それはカクもたようなものだ。叔父おじ存在そんざいが、カクをしばっている。


 幕舎に戻ると、ボヨウスイの伝令でんれいが来ていた。


「ボヨウスイ将軍は、あと三日みっか、何もするなとおおせです」


 その言葉に、カクは首をかしげる。三日待てば何があるというのか。


 トウジンが援軍に来ることもなく、そのような報告もない。燕にも、これ以上いじょうぎょうへ援軍を送る余力よりょくはなかった。


「……何を考えている」


 カクはボヨウスイの考えが読めなかった。だが、それを見定みさだめてやろうと決める。


「ボヨウスイの動きをしっかり見ろ。遅れを取らぬよう、準備じゅんびを整えよ」


 ⸻


 三日後のよる


 その日は新月しんげつであった。


 月明つきあかりはなく、漆黒しっこくやみほしだけがえ冴えとかがやいている。


 ボヨウスイの陣は、篝火かがりび最低限さいていげん薄暗うすぐらかった。


「出撃だ。今宵こよい決着けっちゃくをつける」


 その声は小さく、闇にけそうでありながら、確かに全軍ぜんぐんに伝わった。


 馬には革靴かわぐつかせ、口には布をませている。ほとんど物音ものおとを立てず、ボヨウスイ軍は全軍、陣を出た。


 カクはそれを気配で察知さっちする。


「……出たか」


 カクも、ボヨウスイのさくを邪魔してはならないと、極力きょくりょく音を立てず出撃の準備をさせた。


 陣門じんもんで馬に乗り、を待つ。隣にはハクエンがならび立っていた。


無理むりはするな」


 カクの言葉に、ハクエンは静かにうなずく。


 やがて、ボヨウスイの総攻撃そうこうげきが始まった。チョウシの防壁ぼうへきえ、火の矢が次々《つぎつぎ》と撃ちうちこまれる。


夜襲やしゅうか!」


 チョウシはね起き、外へ出た。


 防壁を越えた火の矢は幕舎や馬草ばそうを焼いたが、へいたちがすぐに土砂どしゃをかけ鎮火ちんかする。その程度ていどの攻撃は、チョウシの陣には無意味むいみだった。


 直後ちょくご、防壁から爆音ばくおんひびわたる。


 ボヨウスイの火のとら魔法まほうが、防壁にぶつかった音だ。


 陣全体じんぜんたいが揺れるが、防壁はくずれない。


「なぜだ……」


 なぜ、ボヨウスイが夜襲まで仕掛け、このような無意味な攻撃をするのか。チョウシは理解りかいに苦しんだ。


 燕軍が梯子はしごをかけ、防壁を登ってくる。


「突き落とせ!」


 かり占拠せんきょされても、防壁は合図一つで外側そとがわ崩壊ほうかいさせられる。ヨウチョウを下敷したじきにしたことを、ボヨウスイも知っているはずだ。


「……何かある」


 チョウシは警戒けいかいしたが、正体しょうたいつかめない。


 攻撃は続き、防壁には再び衝撃しょうげきと爆音。二発目にはつめの火の虎が放たれた。


「これで終わりか……?」


 防壁にはひびが入ったが、修復しゅうふく可能かのう範囲はんいだ。


 チョウシは修復のため、少し前へ出た。


 ――その時だった。


 背後はいごで、地鳴じなりのような音が響く。


 振り返ると、地面に無数むすうあなが開き、そこから燕軍がい出てきていた。

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