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学生に不人気な時代を研究していた大学教授、異世界で奴隷から皇帝へ  作者: 越後⭐︎ドラゴン
北部攻略編

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24/41

24話

 モクラン軍は四万で太原たいげん出撃しゅつげきした。

 騎馬きばは一万五千まで増強ぞうきょうされている。えん北部ほくぶ都市とし常山じょうざん目指めざした。


 常山は、燕が遷都せんとしようとしている中山ちゅうざんの西側に位置する。

 常山へ向かうには山脈さんみゃくえる必要ひつようがあった。山脈を通る道はせまく、いくつものとりできずかれている。


 大軍たいぐんは通りづらく、まもりやすい地形ちけいであるため、しんはこれまでここを通って燕に侵攻しんこうしたことはなかった。


 チョウシは、洛陽らくようの北に位置する要衝ようしょうぎょうを目指した。

 チョウシ軍は歩兵ほへい中心で八万はちまん攻城兵器こうじょうへいきともなっている。

 さらに皇太子こうたいしフコウの二万も合流ごうりゅうし、総勢そうぜい十万の大軍であった。

 フコウには老臣ろうしんリキが補佐ほさについた。


 鄴一帯を取られれば、洛陽は孤立こりつする。

 それほどの重要じゅうよう都市であった。


 燕は騒然そうぜんとなった。

 東晋とうしんとの関係が王の優柔不断ゆうじゅうふだんによってこじれている中、秦は早くも軍を立てなおし、侵攻してきている。

 ヒョウは秦の底力そこぢから驚愕きょうがくした。


意図いとがわからぬな……」


 ボヨウスイはつぶやく。

 鄴は燕の中でも最大級さいだいきゅう重要拠点じゅうようきょてんであり、防御ぼうぎょ万全ばんぜんである。

 鄴を攻め取るには、いかにチョウシが良将りょうしょうであっても、十万の軍では足りないはずだった。


 しかも皇太子フコウを伴っている。

 老将ろうしょうリキが付いているとはいえ、大事だいじな皇太子をこのような難易度なんいどの高い戦に出撃させる意図が分からなかった。


本命ほんめいは北だな」


 ボヨウスイとカクが、ヒョウに呼ばれる。

 秦軍の侵攻に対し、どのように対応たいおうするかを協議きょうぎするためである。


 ヒョウはあせっていた。

 東晋との関係が拗れていることが要因よういんだった。

 ここで再び東晋に援軍えんぐん要請ようせいすれば、洛陽の即時そくじ引き渡しを求められるだろう。

 それだけでなく、許昌きょしょうなども割譲かつじょうしなければならなくなる可能性かのうせいが高い。


 今回は、東晋に援軍を要請することはできなかった。


 そして鄴を取られることは、今の燕にとって命取いのちとりである。

 中山遷都への大きな障害しょうがいとなり、北部の穀倉地帯こくそうちたいとの通路つうろ遮断しゃだんされてしまう。


「鄴を失うわけにはいかない。洛陽にいる主力しゅりょくも動かし、救援きゅうえんに向かう」


 ヒョウは半ばめいずるように言った。


「鄴には三万の軍が駐屯ちゅうとんしている。守将しゅしょうのシュンも人望じんぼうがあり、良将である。それより北部に援軍を急行きゅうこうさせるべきだ」


 ボヨウスイは反対はんたいした。


「秦から北部に出るには険峻けんしゅんな道を通る必要がある。大軍の移動に不向ふむきだ。現地げんちの軍に任せて問題もんだいない」


 ヒョウは意見をげなかった。その見方も間違ってはいない。


「来るのはモクランだ。あなどってはいけない」


 ボヨウスイの言葉に、カクがわずかに反応はんのうした。


 ――モクラン……


 カクの脳裏のうりから、その姿が消えなかった。

 カクは目を閉じる。


「お主の意見はどうなのだ?」


 ボヨウスイに問われ、カクは目を開けた。

 ヒョウは、モクランを甘く見すぎだと感じていたが、真っまっこうから反対意見を述べる立場たちばではなかった。


「俺は叔父おじの意見に賛成さんせいだが、ねんのため北部に一万の援軍を送るべきだと思う」


 カクは本心ほんしんとは違う、どこか中途半端ちゅうとはんぱな意見を口にしてしまった。


 ボヨウスイはあきれた顔でカクを見る。

 カクは視線しせんらした。


「鄴救援のため、ボヨウスイは六万、カクは四万をひきいて出撃せよ。北部には、ボヨウスイの副将ふくしょうの誰かを派遣はけんせよ」


 ヒョウは宰相さいしょうとして二人に命じた。

 カクをモクランに当てるのは危険きけんだ。

 カクはどこか女性じょせいに甘い。先の戦のように遅れを取るわけにはいかなかった。


 ボヨウスイは返事へんじもせず部屋を出た。

 こうなっては、徹底的てっていてきに鄴に来る秦軍をたたつぶすしかない。


 ボヨウスイはエイゲツに一万を与え、ジョウザンへ急行せよと命じた。


「秦の女将軍おんなしょうぐんくびを、この手でもぎ取ってまいりましょう」


 モクランのような女将軍には、こちらも女性を当てるのが得策とくさくだった。

 ボヨウスイは先のカクの戦いを分析ぶんせきし、カクには油断ゆだんがあったと考えていた。


 さらにボヨウスイは、トクとヨウチョウを呼ぶ。


「鄴へ急行せよ。秦軍より先に到着とうちゃくし、有利ゆうりな地形をおさえよ」


 トク一万、ヨウチョウ一万が騎兵きへいを率いて出撃した。

 鄴周辺は平坦へいたんな地形が多い。

 チョウシに土魔法つちまほう防御陣ぼうぎょじんを組む余裕よゆうを与えてはならなかった。


 カクもハクエンを伴って出撃する。


「ボヨウスイに遅れを取るな」


 この戦で大功たいこうを立て、名実めいじつともにヒョウの影響下えいきょうかから抜け出そうと、カクは考えていた。


「今回の敵は、モクランではないのですね……」


 ハクエンは、どこか残念ざんねんそうであった。


 カクは、やはりハクエンがモクランを殺したがっていると確信かくしんした。

 自分のせいとはいえ、ハクエンにはそのようなゆがんだ感情かんじょういだいてほしくなかった。


 カクはハクエンを抱き寄せ、そっと口づけた。


 ⸻


 モクラン軍は、太原から燕北部へ通じる狭い道を進んだ。

 馬二頭分も並んで通れないはばである。

 輜重車しちょうしゃは通れないため、兵糧ひょうろうなどの物資ぶっしは馬の背に載せ、徒歩とほ進軍しんぐんした。


 やがて、燕最初の砦が視界しかいに入る。

 砦の前も、かなり狭い地形であった。

 このような砦が、十か所は続く。


 モクランは、一つ一つの砦の攻略こうりゃくに時間をかけるつもりはなかった。

 この戦には四か月という期限がある。

 その間に、徹底的に北部をらす必要があった。


 目の前の砦には、千人ほどの兵が立てもっている。

 モクランはジュンカンを呼んだ。


先鋒せんぽうだ。時間をかけずに抜き、次の砦も襲撃しゅうげきせよ」


 ジュンカンは拝礼はいれいし、こう言った。


「ケイの百人隊ひゃくにんたいをお貸しください」


 ケイはモクランの直属ちょくぞく部隊である。


「よかろう……あなたに預けましょう。決して無駄死むだじにさせないように」


 ジュンカンは礼を言った。

 だが、モクランの言葉に違和感いわかんおぼえた。

 無駄死にさせるつもりなど毛頭もうとうない。

 なぜ、あえてそのような言葉をかけられたのか、分からなかった。


 ジュンカンはケイを見る。


特訓とっくん成果せいかを見せてみろ」


 ジュンカンに従い、ケイは出撃した。

 砦に掲げられた燕の旗を見る。

 ――必ず武功ぶこうを挙げる。

 そう意気込いきごんでいた。


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