雪原 氷の心の中(1)
私は『戦国武将の心を掴むのは君〜ラブの数は銀河の広大さをもってしても計り知れぬ〜』ってゲームがすごく好き。
だから、来る日も来る日もずっとこのゲームをプレイしていたわ。
それこそ、もう完全クリアしてしまった後も......実際の歴史人物とは見た目も何もかもが全く異なる超イケメンの豊臣秀吉を攻略することに熱中していたのよ。
今が十二月で、このゲームを初めてプレイしたのが確か七月。画面の左上に攻略をサポートしてくれる《エンタイス・スクエア》というシステムが存在しているのだけど、これも私がこの恋愛ゲーにのめり込む大きな理由だった。
《好感度》がカンストしようが、ものすごい量のデータが溜まってしまって、豊臣秀吉がバグって『やあ! 今日はいい天気だね』っていう表示が『やあやあやあやあやあやあやあやあ』みたいなことになっても、私は豊臣秀吉を愛していたわ。
私のこの愛は本物で、これからも豊臣秀吉を愛していくーーーそれは変わらない。
でも、最近おかしなことが発生した。
この恋愛ゲーの《エンタイス・スクエア》が......現実の私の視界左上にも出現したの。あり得ないでしょう? 私もあり得ないと思うわ。ちょっと邪魔だし。あと心配になったわ。このままずっとこんなのが視界にあったらどうしよう......って。
でもーーー
『おい氷!? 俺の視界左上に変なのが出たんだけど......』
『うわぁ何だこれ』
『じゃあまた屋上に集合な』
幼馴染の綾瀬 木綿の視界にも、まったく同じものーーー《エンタイス・スクエア》が出現していた。
こればかりは驚いたわ。
正直なところこの《エンタイス・スクエア》が出てきた時は『ああ恋愛ゲーにガチになりすぎて、とうとう頭がおかしくなったんだわ』と自身を憐れみの目で見たほどだった。
でも、木綿にも同じ表示が出たことでその説は消えた。
しかも何よ。
私たちの《攻略》する相手が、私は木綿で木綿は私? 私たちがお互いを好きになれってこと?
無理ね。木綿はすごくいい人間だわ。ちょっと頭悪いけど。でも恋愛に発展するなんて、まずあり得ない。
《綾瀬 木綿と結構しっかりめなキスをしろ》
いや何よこれっ! 無理に決まってるでしょ!
でもーーー
守らなかったら、多分木綿は恋愛ゲー版豊臣秀吉と同じ最後を辿るわ。すなわち、馬に乗って戦地へと赴き合戦の末に死亡。
いや馬もいないし戦地もなければ合戦も無いけれど。
でも、最悪の可能性が少しでもあるなら......阻止しなくちゃいけないわ。
私は、昼休みの木綿との作戦会議のあとで、気合いを入れた。
「私は木綿とキスする私は木綿とキスする私は豊臣秀吉とーーーじゃなくて木綿とキスする......」
そうやって、自身の胸のうちにあるこっ恥ずかしさをどうにか消すことができないか、と考えた。
でも無理よ! 絶対無理っ! いくら幼馴染でも異性! 異性! ああでも、私がやらなきゃ木綿は死ぬ......
きっと、木綿からはキスしてこない。私のためを思って、キスしてこないはず。
ーーーなら私からしてやる!
未だかつて、こんなにも瞳孔を開いた状態でキスをしようと思い至る女がいたのかしら。
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