達成できるわけないSUB MISSION
「つまり、恋のフラグを立ててその流れに乗ればいいって訳よ」
「なるほど。トミーの時もそうやって攻略してたのか?」
「トミーをトミーと呼んでいいのは私だけよ」
「めんどくさいな」
氷の説明によればこうだ。
俺たちに表示されている、いわばMAIN MISSION(《雪原 氷を攻略せよ》の文字)には制限時間がない。しかし、サブミッションにはそれがある。しかもクリアタイムオーバーで相手が死亡というとんでもないお仕置き付きだ。
出てしまったサブミッションは、どうにかして処理するとして......サブミッションを出さないようにするためには、定期的に《フラグ》を立て『俺たちはメインミッションの攻略に少しずつ近づいてますよ』というアピールをシステムに行う必要があるらしい。どんな恋愛ゲーだ。
「ちなみに、お前がやってたゲームではサブミッションを処理できなかった時、戦国武将はどうなったんだ?」
「いろんなパターンがあったけど、一人は打ち首になったわね」
「ええ!?」
もうこの話を聞くのはやめよう。
「そ、それで《フラグ》ってのはどうやって立てるんだ?」
「いたって簡単よ。相手と恋人っぽいことをすればいいだけ」
「それは簡単なのか?」
「さあ?」
「さあって何だ」
「少なくとも、そうすればシステムは正常なゲームの進行に安心してサブミッションを出現させなくなるわね」
な、なるほど......とにかく《フラグ》を立てまくれば互いに命の危険はないと。
「もう一つ質問いいか?」
「どうぞ」
「サブミッションの......出現頻度は?」
「......三日に一回よ」
「それを阻止するためには《フラグ》をどのくらいの頻度で立てればいい?」
「それは分からないわ......というかそれより、もう出現してしまったサブミッションの処理からした方がいいと思うんだけど。見て《残り時間 三時間二十六分》って書いてあるわ」
何!? そんなに残り時間がないのか!?
「ちょ、ちょっと待ってくれ。確認する......ぬわっ! 本当だ俺の方も《残り時間 三時間三十七分》......」
「あら? 私のと少し時間が違うわね」
氷は雪のような長髪に両手で触れ、腕に付けたヘアゴムで細いそれらを一つ結びにした。
「え? ......確かに、十分くらい違うな」
「まさか」
氷は顔を引き攣らせ、またも左手で視界に映っているであろう《エンタイス・スクエア》を操作し始めた。
「......私の方のサブミッションは」
そこまで言って、氷の動きが止まった。みるみるうちに顔が青ざめていく。そのままぴくりとも動かない。
「お、おーいどうした氷? どんなサブミッションだったんだ?」
俺が隣に座る氷に数センチ近づいた。
「近寄らないでもらえるかしら」
「ええどうしたんだよ氷」
何故かすごい勢いで距離を取られてしまった。どうして?
「で、でもサブミッション確認しないと......」
「私のを教える前に......アンタも確認してみなさい」
「え? ああ分かった......」
数日前に、氷からスクエアの操作方法を聞いたばかりだが、ある程度は馴染んできたその動きで画面を操作する。《ミッション一覧》を開いて《サブ、その他》から入って......あった。これか。
「......ええと《難易度 ふつう》。ミッション名が......」
《攻略対象と手を繋ぐこと》。
この程度のミッションなら難なくこなせそうだ。それに、これで《難易度 ふつう》とは。たかが手を繋ぐだけで? 簡単の間違いじゃないのか。
「おい氷。お前のも《手を繋ぐこと》だったか? こりゃ意外とすぐクリアできそうで良かったな」
「......うの」
氷の声が小さすぎて、何を話しているかが分からない。
「......違うのよ」
「へ? 何が?」
「あろうことか......あろうことか......」
「何で急に戦国武将のモノマネを?」
「私の方には《対象と結構しっかりめなチューをすること》と表示されているわ」
あ、俺死んだな。




