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タクシー代は、お前が払えよっ!

 いつものドジ属性によってまたもころりんと転んでしまいそうになった月嶋、その救助見返りとして高級なお土産を購入させようとする打算的に生きる山田、まだバスに乗って十分も経っていないのに、既にレジ袋を用意し、それに顔を突っ込んでいるワタコ、最後にずっと寝てる氷。


 俺はこのマトモな人間が消去法で月嶋くらいしかいないメンバーの中で、この四日間にわたる修学旅行を乗り越えることができるのだろうか。


 本来、修学旅行の移動用バスと言えば、一クラスに一台のバス……という形で振り分けられるのがセオリーだ。しかし、我が校の伝統としてクラスの垣根を超えたなんちゃらとかいう意味あるのか分からない『班決め』の文化が存在しているために、先述の常識は通用し得ない。


 と、なればどうなるか。

 クラスを跨いだ班を単位として、振り分けられることとなる。なので、氷のみ別クラスの生徒でありながら、俺たち五人は一つのバスに集合して座ることとなったのであった。そんな俺たちのバス内での座席位置は、最後尾の広いシートとその右前二つだ。本来なら、バスの左側列の三人掛けシート一つ、右側の二人掛けシート一つで一班分とされる席分布のはずだった。しかし、俺たちの班番号が奇数とかなんとかで不具合が生じたために、俺たちだけ余分に二つ分のシートを獲得し、計七席を贅沢に使えることとなったのだ。右側の窓際に座るのが山田、その横が氷で、俺は最後方にあるシートの右から二番目、そして月嶋がその隣だ。


 だが、その二つ分の余分なシートと自身の一つの計三つを占領している者が存在する。それはもちろんコイツ、ワタコさん(寝そべっている哀れな姿)である。


「うぅ……苦しい……くそが…」

「マジで自分のせいだろ」

「うるさい……」


 バスに乗る前の道の駅では、絶対に飯を食いすぎるなと口酸っぱく注意されていたのに、ワタコは食べた。意味分からんくらい食べた。この後に、ご当地昼食を控えているのに『大丈夫っしょ! だってこういう時に食べないでどうするのさ特別な日に』という御託を並べ立て、天ぷら蕎麦二杯とおにぎり三つを完食したワタコは、しきりにめそめそ嘆いていた。


「な、何で止めてくれなかったんだよ……」

「いや止めただろっ! メチャクチャ止めたぞ俺は。どうして蕎麦二杯も食べた? しかも天ぷらを何故に三倍増しにしたんだよ」

「お、美味しそうだったから」

「アホすぎてとても擁護できない……」

「誰がアホだってぇ……? あとで覚えとけよぉ……」


 覚えとけよと俺に言うが、その頃にはお前の方がその恨みを忘れているのではないだろうか、というツッコミは飲み込んでおこう。これ以上刺激するのは可哀想だ。


「ワタちゃん、苦しんでいるわね。私の持っている吐き気止めをプレゼントしましょうか」

「も、もう粉末の薬さえも入らない……キャパ無い……もう喉のところまで食べ物で埋まってる……」


 思考回路小学生か。

 氷が心配しているが、ワタコにはそれに感謝を述べる力さえも残っていない。

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