修学旅行出発当日の朝
班の構成メンバーが、色とりどり個性豊かな五人組であると判明してから早五日。
他の高校ではあり得ない年末年始を跨ぐ修学旅行が開幕したのであった。
この前の班決めの直後に、俺の視界左上には新たなSUB MISSIONが出現したことに気づいた。実に、約一ヶ月ぶりの登場にしばしの感動を覚えたのも束の間、その内容は『幼馴染を笑わせろ』だったのだから尚更に感動させられたのであった。
あぁいつでもSUB MISSIONはこうであってくれ。そうであれば、どんなに幸せなことか。
その様子を見ていたワタコから、俺の『一ヶ月ぶりに出たぞSUB MISSION』という発言を訂正された。
俺自身は、かなり久しぶりの登場だと思っていたそれだが、実際のところは三日ごとにしっかりとSUB MISSIONは出現していたらしい。しかし、その内容がかなり簡単なもの(仲良くおしゃべりしろとか)だったので、気づかないうちに達成してしまっていたとのこと。
あぁずっとこうであれSUB MISSION。
***
12月30日の午前五時。
俺とワタコは、自宅の俺の部屋にて修学旅行の準備をしていた……というより、ワタコだけ準備をしていた。目を充血させながら。俺はベッドでその様子をにやにやと見物である。
「うぅ準備が終わらないっ……! どうしようマジでっ!」
「だから早くにやっとけって言っただろ」
「だって何持っていけばいいか分かんないしっ!」
「俺はもう一度眠りにつくぜ、また会おう」
「起きろぉ! 見ろこのぐちゃぐちゃなリュックの中身をっ! ボクだけで間に合うと思うか? スキンケア用品にお菓子にお菓子におやつに」
「ほとんどオヤツじゃねーか! これもこれもこれもいらないだろ!」
俺は、慌てふためくワタコ(髪はぼさぼさで、胸がほぼ見えそうになっているというクラスメイトが見たら目を飛び出させて喜びそう)のリュックからあり得ない量のオヤツを発見。パズルみたいにぎちぎちに組まれたソイツらを、全て外へ放り出した。
「こんなものを詰め込んでいたら、いつまで経っても準備が終わらないぞ……」
「だってお菓子好きなんだもん……むーっ」
「その可愛いポーズは、俺には通用しないと何度言えば分かるんだね?」
「あ、一応ボクのこと可愛いとは思ってくれてんだ」
「思ってねーよ! 早く準備しなさい!」
「はぁ!? 管理者権限で氷の家にテレポートさせちゃうぞ?」
「もったいないからそんなことに使うのだけはやめろ! 一日に一回までなんだろ?」
「うーん……今ね、氷はお風呂に入ってるよ……これが、どういうことか分かるかにゃ〜?」
「お、おいお前まさか……」
「木綿を〜? お風呂にテレポートさせたら〜? 好感度ガタ落ちで攻略できなくなっちゃうけど〜」
悪魔か! お前攻略チャートだよな!?
「やめろ……手をわきわきさせながら俺に近づいてくるなっ!」
「この手で少しでも木綿に触れたら……お前は、氷ん家にテレポートされちゃうぞぉ?」
ワタコの水色のネイルを施した手が、俺に襲いかかる……その前に、ワタコの運動不足な足がメチャクチャに攣った。
「はぅっ……! あ、足がっ……」
「……お前マジで何してんだ」
地面でごそごそもがきながら『黙れぇ〜……ボクは全人類に可愛いと思われてないと駄目なんだぁ〜』と呟き、ベッドの上に避難した俺に手を伸ばしてくる。
「可哀想なワタコよ……お前は可愛いよ……悲しいほどに」
「ちょっと意味違うじゃん! 哀れむなよ!」




