班メンバー発表っ!
俺たちが通う高校は、実はマンモス校だ。一学年に千を超える生徒が在籍している。普通の学校なら、修学旅行の班決めなんてクラス内だけで済ましてしまうところであるが、我々の高校ではこの人の数を活かした(ようだ)。
社会に出た時に、関わる人間は今まで一度も話したことのない者ばかり……そんな場面で困ることが無いように、と三代前の校長がこうした『クラスの垣根を超えた修学旅行の班決め』を決定した。そんな狙いがあって……ということなので、もちろん班決めはくじ引きで行われる。これが、学校側の狙いから始めた新たな効果を生み出した。
それすなわち『恋の成就』である。
この班決めで、かなり低い確率のもと思い人と同じ班になったならば、その恋は必ず叶う……という効果だ。もちろん、そこに科学的なものは一切存在しない。だが、どうしてか叶うのだ。今までの先輩たちは、皆そうだったらしい。
なので、もしも俺が誰かを好きになったならば、きっとこの機会に願うはずだ。『頼むから親愛なるゴッドよ。あの子と同じ班にしておくれ』と。そして胸をときめかせ、体育館の巨大モニターに映し出される五名一組の班メンバーの結果表示を待つのだ。
しかしだ。
今の俺には、そんな運が絡むイベントは無縁のものである。
何故ならば。
「木綿〜。お前と氷の班、管理者権限で同じにしといたからな〜今日の夜ご飯のおかず全部寄越せよ」
この《攻略チャートちゃん》がいるからである。
後ろに座ったワタコは、俺のお尻を暇つぶしに足でげしげし蹴りながら、そんなセリフを俺の背中へぶつけた。五回に一回くらい本当に痛い蹴りが来るのがムカつくが、日に一度までしか使えない(無理やり二回目を使うと、お腹を壊すらしい)管理者権限を使ってくれたのだから、文句は言えない。くそが。
『それじゃあ〜。次の班……発表しまぁす!』
校長は、さっきまでと同様のテンションで二十五個目の班を発表し始めた。メンタルどうなってんだ? 鉄か?
『まずは……綾瀬 木綿くんっ!』
「俺じゃん」
俺が呼ばれたということは、氷も呼ばれるのだろう。
『次に……綾瀬 ワタコさんっ!』
「お前じゃん」
ワタコが呼ばれた瞬間、背後のクラスメイトたちが『うわぁぁぁぁワタコちゃんがぁぁぁぁ』と叫んでいる。
それを聞いた性格ヤバ女ことワタコは立ち上がって振り返り『呼ばれちゃったっ! でも、皆のお部屋に遊びに行くから、待っててねっ』と、きゅるんみたいな効果音が出そうなポーズをもってクラスメイトたちをなだめた。
声援を受けながら座ったワタコが『チョロいヤツらめっくひひ』と笑ったのを俺は忘れないだろう。
『続いて……月嶋 有栖さんっ!』
「誰?」
「お前自分が知らないからって失礼だぞ。しかもクラスメイトだし」
この人、確か山田の友達だよな。同じバドミントン部の親友だとか聞いたことがある。
『さぁ! もう残り二人ですよ! 次は……雪原 氷さんっ!』
あ、氷だ。もう全然びっくりしないや。
いいのかな? こんな皆が楽しんでるビッグイベントを流れるように過ごして。なんかスゴくもったいないような気がする……
『最後は……山田 百々瀬さんっ!』
わお山田。ここで山田と同じ班か。もしかして、ワタコが今日仲良くなった山田を管理者権限を使って班にねじ込んだのか? 五人中、四人がクラスメイトなんだが。これ全然クラスの垣根超えてないよな?
俺の心を読んだかのように、ワタコが暇そうな顔のままでその答えを教えてくれた。
「どうやら、元々他のクラスの人が入る予定だった枠にボクが無理やり入ってしまったことで、バランスがメチャクチャになったみたいだね」
「……そういうことか。これ大丈夫なのか? 違和感を感じた校長たちが、再抽選なんて言い出したら」
『校長、違和感を感じたのでこの班だけ再抽選します!』
「ほら見ろ!」
「そんなこともあろうかと、ボクはちゃんと用意していたんだよ。見ててね」
すると、ワタコは目をぐっと細め、校長を睨みつけた。コイツ、何をしている? 校長に何をしているんだ?
「むむむ……今だっ! ふん!」
何も起こらないぞ。
いや、ちょっと待てよ。校長の挙動が急におかしくなった。それどころか、なんかお尻を押さえて空を仰いでいる。
『………はぐぅっ!? ちょ、ちょっとすみません。私は急用を思い出して……ふぐぅっ!』




