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SUB MISSION出現

「氷。さっきのメッセージって」

「......もうアンタも気づいてるんでしょう? 《エンタイス・スクエア》......すなわち私たちの視界に棲みつく魔物の変化について」

「何て?」


 俺は氷からの号令を受け、四限の現代文終了後、すぐさま屋上へ向かった。冬の風がびゅうと吹くとかなり寒く、やや雪もちらついていたので、仕方なく屋上手前の階段に二人して腰掛けた......


「何だその《エンタイス・スクエア》とかいうのは。もしかしてお前これに名前付けたのか? 何か絶妙にダ......」

「その先は聞かないでおくわ。ところで、この《綾瀬 木綿を攻略せよ》の文字に変化が起きたことについてだけど」

「ああ、こっちもだ。緑色だった文字の表示が、黄色に変化した。どうだお前の恋愛ゲーとの相違点は」

「まんま同じよ。あのゲームでも時間経過で、ミッションの表示ーーー色合いが変化していくわ」


 やはりか。氷のプレイしている恋愛ゲーと同じ仕様である、俺たちの視界左上にも同じ変化が起きる。


 ーーーん? 待てよ。


 普通、ゲームというものには《設定》項目があるよな。ゲームに飽きたり、一度休憩をしようと思ったら《ログアウト》とか《ゲームを終了》とかを選択して、ゲームをやめる訳だ。


 今まで、俺たちの画面左上に発生した表示と、氷の好きな恋愛ゲーのミッション表示は、同じシステムに動かされているかのような振る舞いをしてきた。ならば、氷の恋愛ゲーと同じように、俺たちも《設定》項目を探せば......


 俺がこの発想を氷に伝えると、氷は『なるほど』と頷いた。


「試してみる価値はありそうね」

「だろ」


 氷は腰掛けていた階段から、すっと立ち上がると左手を自身の左目辺りに掲げ、何やら動かし始めた。俺たちの状況を何も知らない他人がこの場面を見たなら魔法でも使うのかと恐怖を感じることだろう。


 しかし、同じ状況下にある俺には、氷がしようとしていることが分かる。


 あれは、視界左上ーーー氷の言い方で言うなら《エンタイス・スクエア》ーーーに触れ、メニュー画面を呼び出そうとしているのだ。どうやら、スクエアの操作方法は氷の恋愛ゲーの操作方法と全く同じようだった。


「ええと......《セーブ》して《ゲームをやめる》を選択......あら?」

「どうした?」


 氷は、すらすらと操作していたその左手を突然止めた。


「......無いわね。《ゲームをやめる》が」

「まあそりゃそうか」


 何となく分かってはいた。もし、今の俺たちの状況がアニメとして放映されているとしたら、こんな序盤で物語がすんなり終わるわけがない。全く理由は分からないが、俺たちは厄介とも、何かの幸運だとも言いがたい中途半端なフィクションに巻き込まれてしまったようだ。


「......まあこれで《ゲームをやめる》の項目があっても面白みがないし、いいわ。クリアしましょうこのクソゲーを」

「おうよ。クリアしたら何かもらえるのかな」

「《戦国武将の心を掴むのは君〜ラブの数は特上寿司をも超える〜》をクリアした時は、主人公の攻略した戦国武将抱き枕が送られてきたわ」

「いらねーし何かゲームタイトル微妙に変わってない?」


 違う、こんな抱き枕の話なんてどうでもいいんだ。


「違くて、どうして文字の色が変わったんだ?」

「......ついに言わなくてはならない時が来たようね」

「言わないつもりだったのかよ」

「......これは、SUB MISSIONの追加を意味するわ」

「サブミッション?」


 氷によると、一度表示されたMISSION(俺で言うなら《雪原 氷を攻略せよ》という表示)には制限時間があるらしく、それがいつまでも消化されないままでいると、クリアを促すための救済措置。SUB MISSIONが追加されるらしい。


「私も苦労したわ。豊臣秀吉をオトすのに幾つのサブミッションを積んだか......」

「お前の恋愛ゲーって豊臣秀吉をオトすゲームだったのかよ」

「最終的に、私とトミーは結ばれることとなったわ」

「豊臣秀吉をトミーと呼ぶのはお前くらいだろうな」

「本題はここからよ。この法則が必ずしも私たちの《エンタイス・スクエア》にも当てはまるかどうかは分からないけど......」

「もうその呼び方浸透してきたな」

「SUB MISSIONをクリアできなかった場合......攻略対象の相手は例外なく死亡するわ」

「へえ、そうなのか......ふぅおわっ!? え!?」


 死亡!? なに今までのほんわかした流れからの死!?


「な、何をそんなに怯えているのよ。わわわ、私たち二人でならクリアできるわ」

「お前も足ガクガクしてんじゃねーか!」


 氷は、この法則が当てはまるかは分からないと言った。しかし、ゲーム内の表示スタイルから《設定》画面のレイアウトまで全てが一致しているらしいこの状況からして......おそらくSUB MISSIONをクリアできなかった時には......本当に相手は死ぬのだろう。


「お、お前なんでそんなに冷静なんだよ。足に関してはありえんくらいガクガクしてるけど」

「ふっ。大丈夫よ木綿。このゲームをクリアするための秘策があるの」

「秘策?」

「と、言うよりトミーを攻略するためには必須のスキルとでも言った方がいいかしら」

「攻略するのはトミーじゃなくて俺だけどな」


 ーーーそのスキルとは。


「《フラグ》の存在よ」

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