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班決めへの道中(2)

「な、何とか体育館まで流されることができた……」

「学校ってこんなに大変なものなんだね。人間たちはすごいや。今までものすごいバカにしててごめんね」

「いや本来はこんなんじゃないんだぞ。それに今お前何て言った? ねえさらっとスゴいこと言ったよな」

「何が?」

「そうやってきゅるんとさせても無駄だぞ。クラスの男子たちには通じたからって、俺の部屋に住んでるヤツにされてもどうってことないからな」

「くそが」

「言葉使い!」


 どうにか体育館までたどり着いた俺とワタコ、そしてサングラス姉さんこと氷は、既に疲労困憊であった。それもそのはず、当初は集団によって廊下を流され続けていたところ、後半はほとんど胴上げみたいな状況になりつつの移動だったからだ(?)。


 2-Aの所属である俺と、2-Cの高嶺の花たる氷さんは別々の列に並び、冷たい体育館の床へと腰を下ろした。俺の後ろに座っているワタコーーー二人とも一応『綾瀬』の名字なので出席番号的にそうなるーーーは、あまりに冷たいその床にお尻をつけた時に『みゅぬんっ!』という奇妙な声を上げていた。


 一番の疑問は、どうしてか転入初日にしてワタコのファンクラブが構成されていることだ。ビジュアルこそ良いものの、性格は『くそが』とか平気で言ってしまう横暴なそれなのに。皆にその本性がバレてしまう日もそう遠くないのかもしれない。クラスメイトから『ワタコちゃ〜ん!』と呼ばれると嬉しそうに『はぁ〜い。どうしたの皆っ』と駆け寄っていくその姿は、滑稽としか言いようがなかった。


「寒いよ〜木綿〜」

「えぇ……んーじゃあコレ使うか?」


 俺が右ポケットに入っていた、ホカホカのカイロを差し出すと『気が利くじゃん』と言って受け取った。何様だコイツは……




***




「えー。それじゃあ皆さん集合してくれましたので、毎年恒例……修学旅行の班決めちゃおうぜの会を始めます!」


 張り切っているのは、壇上で右手を掲げて叫ぶ校長だけで、二年生一同は冷ややかな目を向けている。

 しかし、それは六時間目終わりの疲労が溜まっている時間帯における校長という存在のカロリーが高すぎるからで、別に班決め自体に興味が無いわけではない。むしろ、山田のように心底ビッグイベントであると捉えている生徒が大多数だろう。

 胸のうちにあるワクワクと、しかしそれを悟られては高校生の名が廃るぜ……とのプライドとが、思春期たる彼らの胸のうちでせめぎ合っているがゆえの、この落ち着いた空気感。


「あれっ……皆どうしたの? ほら班決めっ! 他の高校では見られないクラスの垣根を超えた班決めだよっ? 皆で楽しまなきゃ!」


 しーん。


 ここまで無反応だと校長が可哀想である。皆、話に興味がなくて無視するわけでもなく、無駄話に花を咲かせるわけでもない。単純なる静寂が、校長の心を深く抉った。

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