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班決めへの道中(1)

 公共の場で、はた迷惑な音量をもって『豊臣秀吉の愛は宇宙の広さを持ってしても計り知れぬ〜君に会えて、本当に良かった〜』をヘッドホンから垂れ流していたのは、俺の幼馴染こと氷さんであった。


 ーーーいや、正確にはまだ氷と決まったわけではない。だって、もしかすると氷の他にも豊臣秀吉のキャラソンを好き好んで、こんな教室移動のわずかな隙間でさえも聞くような人間が、この学校にいる可能性も捨てきれないのだから(ちなみに、氷がプレイしている戦国武将攻略ゲーの総ダウンロード数は75)。


 そうだ、決めつけるのは良くない。自分の独りよがりな推測を持って、誰かをその枠に当てはめてしまうことがどんなにヒドいことだろうか。俺はなんて思い違いをしてしまっていたんだ。


 なので、俺は一応氷の名を呼んでみた。


「こ、氷〜。もしかするとそこにいるのか」

「いるわよ」

「ぎゃあああああああああああああ!」

「うわあああああああああああああ!」

「し、失礼ね人を化け物みたいに」


 突然、俺とワタコの隣へ現れた雪原 氷は、その小さな顔には到底似合わない巨大なヘッドホンを付けていた。しかも、何故かこれまた大きなサングラスをかけて……

 ワタコがあり得ないほどに驚いている。


「び、びっくりしたっ……びっくりしたぁ」

「こ、氷お前いきなり耳元で『いるわよ』って言ってくるなよ」

「いや、そういう問題じゃなくない? どうしてこの人サングラスかけてるのさ誰なんだよもはや」


 ワタコの指摘はもっともだった。確かに、突然現れた幼馴染に驚いた理由は意味分からんくらいに黒いサングラスだ。一瞬、パーティーピーポーに声かけられたかと思ったじゃん(音漏れヘッドホンも相まって)。


 俺とワタコに加わって、氷も一緒に雑踏の中で流されていくことに。どうにかならないのかコレ。学校として何らかの対策を講じる必要がありますよね?


 雑踏のなかで合流した俺たちは、仲良く流されることとなるのであった。




***




 氷の合流から約三分。

 ようやく廊下から屋外に脱出したことで、かなり体勢が楽になった。氷が、ワタコを見て『それで、そちらの麗しい女性はどなたかしら』と首を傾げていたので、ワタコがにやにやしながら自己紹介していた……

 そんなに嬉しかったのか『麗しい』と言われたのが。


「いやぁ『麗しい』だなんてぇ。まあ、どっちかと言えば『キュート』の方だと思うんだけどなぁ」

「それで、今日は班決めね。楽しみだわ」

「氷、それでいい。ワタコは無視しないと永遠にこの『自分の可愛さについて』というトークテーマに縛り付けてくるぞ」


 氷は賢明だった。というよりいつも通りか。


「楽しみね、木綿と同じ班になれるかもしれないし?」

「う……」


 この幼馴染はこういうこっ恥ずかしいことを平気で……というより真顔で言ってくる。しかも真っ直ぐ目を見つめてくるのが、揶揄ってるわけじゃなさそうで反応にも困る。


 ーーーいや、いつも通りか? 俺が意識し過ぎているだけなのか?


 未だペラペラと喋るワタコを無視して、氷と話していると、雑踏の中から聞き覚えのあるクラスメイトの男子たちの声が。


「う、うわぁぁぁ流される……ヒューッ! お二人さんアツいねっ! その『熱』俺にも分けてくれよ」

「ぎゃぁぁぁっ誰だ足踏んだヤツ……新婚だねお二人っ! 物事には、必ず『終わり』がある。でもお前らには……無いような、気がしてんだ」

「やめろそこは弱いんだッ……綾瀬は俺のモンだぞ渡さねえッ……」


 前もいたけど最後の一人は誰なんだよ!

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