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ワタコは中二病

 俺たちのやり取りを不思議そうに『んー?』と見たあとで『こそこそ話はずるいぞー』と不満そうな顔をする山田。確かに成り行きとは言え、同じ机を囲んで昼食を食べるメンバーが自身を除いて、楽しそう(?)に話していたらムズムズするだろう。


「すまん山田。このワタっこがさっき意味の分からん自己紹介をしたから混乱しただろう。そのことについて話してたんだ」


 俺が申し訳なさそうな顔で、その額の前で両手を合わせ『ゴメン』のポーズを作ると、気のイイバドミントン部元エースはすぐに理解を示してくれた。


「いんや、別に謝らないでいいよ綾瀬くん。それにワタコちゃんの自己紹介も……何というかですね……なんか『この腕に秘めた力、今こそ解放せん』みたいな底知れぬ力強さを感じてすごく面白かったよ」

「そら見ろワタっこお前やっぱり中二病だと思われてるぞ」

「はぁーッ!? 本当のこと言っただけなのに! 正直に生きて何が悪いんだよ!」


 ワタコは、俺の親が詰め込んでくれたハムサンドを頬張りながら俺への抗議をより一層強めた。


「と、このように彼女ことワタコさんは中二病の濁流に飲まれて流されて、はたまた岸辺へと手が届きそうになれば、またもや強い波にさらわれてより中二病の奥地へと進んでいく、そんな面白いヒトなんだよ」

「わはは、ひと目見た時からすごく面白そうな予感がビンビンしてたんだよね。わたしの野生の勘は未だ健在のようですな」

「コイツらボクを揶揄いやがってぇ……」


 ピーンポーンパーンポーン……


「あれ!? チャイム鳴ったよね今っ! もう昼休みおしまい? いけない話しすぎちゃった」


 未だおかずのいくつかが残っている弁当箱をそそくさと閉め始める山田。


 今のチャイムは、昼休みの終了を示すものだ。しかし、時計を見るとその針は昼休み終了時刻のおよそ十五分前を指している。直感で、いくらなんでもチャイムの鳴るのが早いなと感じたのだが、やはり今のは誤放送であったようだ。


「山田、多分今のは間違いだと思うから……」


 俺が焦る山田(もう弁当箱を鞄へ収納し、歯磨きをする準備に入っている)をたしなめようとすると、その間を強引に塞ぐかのようにノイズの入った放送が流れ始めた。


『ーーーああっいけないチャイムの音色間違えちゃった……ええい、もうどうでもいいやっ……えー、二年生の皆さんにお知らせです。来週に控えている修学旅行の班決めを本日の放課後で行うことになりました。六時間目の授業が終わり次第、体育館に集まっ……』


 ピーンポーンパーンポーン……


 ずいぶん適当な放送委員がいたもんだ。なんだ『ええいもうどうでもいいやっ』って。ツッコミどころが満載すぎるよ。


「……綾瀬くん、聞いた? 班決めらしいぞ班決めっ」

「おお、やけにテンションが高いな……」

「そりゃそうでしょ高校生のゴールデンイベントと言っても、間違いではないこの班決め……この班の構成次第では、カップルが誕生することもあるだろうし、さらには一日目、二日目で生まれる恋人たちは三日目の『フォックスアイランドパーク』のアトラクションを一緒に回れるんだぞ!? くぅーっ……女の夢!」

「そういや、そんな話も聞いたような」

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