管理者権限でチート使用もお手のもの
だいたいおかしいだろ。どうして俺の攻略チャートが実体化して、学校まで攻め込んでくるんだ。
いや確かに、この前はSUB MISSION達成するうえで非常に活躍してくれた。だからすぐさま『帰ってくれ』と言うのもなんだか礼儀に反しているような気がする。
しかしだ。お前の今の姿は明らかに小学生。良くて小学六年、最悪の場合、お前は低学年ほどの見た目にすら見られてしまう可能性がある。
見たか? さっきお前が自己紹介した時のクラスメイトたちの顔を。皆、口をあんぐり開けて目をしぱつかせていたぞ。先生ですらだ。先生すらも呆然としていた。
教室を出てすぐそばの廊下。そこで俺たちはひそひそ話を続けていた。
「どうするんだよマジで。転入じゃなくて、子守りとかの方が口実としては良かったんじゃないか」
「失礼な! ボクはこんな見た目だけど、ちゃんと仕事をバリバリこなす攻略チャートの中でもトップレベルの実力者なんだぞ」
「なんだそれ! 凄い根幹に関わるようなそんな話聞いてないぞ! お前そういうことはちゃんと言っておけよ」
「だって木綿馬鹿っぽいから、言っても無駄かなと」
「失礼な! 俺はこんな見た目だけど、体力に関しては自信があるぞ! この前は疲労で倒れただけで体育も得意なんだぞ!」
「そんな話してないわ!」
教室の入り口でごちゃごちゃと言い合っていると、しびれを切らしたのか、担任がスライド式扉をがらりと開けた。
「あのぅ……綾瀬さん……あ、二人とも綾瀬だよなえぇと、ワタコさんで、いいんだよな……?」
「せ、先生……」
マズいよ。明らかに怪しまれてるよ。だっておかしいもん小さすぎるって。
その時、ワタコは『もぅ……面倒だな人間のカルチャーは』と呟いた……俺にしか聞こえないような声の大きさで。しかし、その怪訝そうな表情をすぐさまパッと切り替え、先生に『ちょっとだけ待ってもらえますか』と切り出した。それに応え『朝礼の時間もあるので』とだけ言って、教室内へ引き返して行った。
先生の戻った教室内は、ややザワついているのが分かる。どうするつもりだ、この小学生。
「おいどうすんだワタコ。今からランドセルでも調達するつもりなのか?」
「ふざけんな、馬鹿にしてんのかっ……違うよここをこうして……」
ワタコは、自身の顔の目の前で何やら右手の指をスライドさせて、スクリーンを操作するような挙動を始めた。これはーーー俺の視界左上にある表示に対して、メニューを呼び出したり、そこからオプションを選ぶ時の動きと同じだ。こいつの視界にも、何らかの表示が見えているのだろうか。なんか管理者画面的なヤツとか。
「うん……これで良いかな」
「おい何したんだ? やっぱりランドセルの……」
「違うわっ! ほら早く教室戻るぞ。話合わせろよ木綿?」
「んぇ? な、何を合わせるって……な、ななな!?」
そこにいたはずの小学生ワタコ。
ソイツは、そのランドセルお似合いの面影を何処かへ放り投げ……先ほどよりもやや低い声で俺に囁き、そしてこちらは変わらない水色の髪をなびかせた。身長も、高校生と言われて遜色ないほどに伸びている。
「お前誰だよ」
「いやなんとなく分かれよ、どうしてこういう時は察し悪いんだよ……身体、管理者権限で成長させたんだよ木綿がうるさいから。これなら文句ないっしょ」
ワタコはどういう原理なのか、先ほどまでの小学生の体格から脱し、高校の指定ブレザーを着こなすまでにその姿を変化させていた。故意なのか何なのか、水色のネクタイを軽く緩めた胸元は、微妙にはだけており、チラリとかさ増し過ぎな胸が覗いていて……
「どこ見てんの木綿?」
「いや見てない」
「いや見てるよ」
「見てない」
その後、教室は別の意味でさらにザワつくこととなった。特に男子によって。




