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修学旅行前って空気がふわふわするよね

 氷さん風邪っぴき事件から早二週間。その間、俺と氷の視界に《SUB MISSION》が出現することはなかった。


 氷は、あの日ーーー《攻略チャートちゃん》が実体化し、幼い少女の姿となったり、冷静で高嶺の花的存在の幼馴染があり得ないほどデレデレになったりしたあの日ーーーのことを完全に忘れていた。学校で次会った日、ちょっとドギマギしてた俺がアホみたいじゃねーか。


 視界には相変わらず邪魔な表示が映り込んでいるが……まあそれは仕方ない。心強い味方……攻略チャートちゃんことワタコが、なんか俺の視界だけの存在だったのを脱出して現実世界に実体化したんだから多分大丈夫だろう。


 それでだ。一つだけ問題がある。


 あの日からずぅっと俺の部屋で居候状態にあった(そりゃ仕方ないことだが)ワタコ。親には『その子は誰? お友達?』と聞かれるわ、俺の分のご飯まで全部平らげるわで大変だったのだが、何やかんやコイツがいると面白い。このワタコ、見た目は完全に小学生なので親にどう説明しようか迷った。


 だが、そんな俺を見てワタコは『ちょっと記憶をイジるから』と俺の両親の脳みそに細工をしやがった。その結果、この攻略チャートちゃんは『綾瀬 木綿のいとこ』として認識されるようになったのだった。これ良いのか? 俺の親の記憶を勝手にイジるなよ……


 コイツが来るまで考えもしなかったことだが、このワタコ、どういうわけかゲームの相手として、丁度いいのだ。


 俺から生まれた存在らしいのでーーーそう言われてもなかなか納得できないがーーー当然と言えば当然かもしれないが、妙に気が合うし、ゲームの腕前、頭の良さ、好きな食べ物までほとんど同じ、ということらしい。


 そんなワタコが俺の部屋のベッドを占領し、俺が地べたに布団敷いて寝ることになってるのは、まあいい。まあ、いいんだよ。でもさぁ。


「今日からお世話になります。綾瀬 ワタコですどうぞよろしく」




***




 修学旅行直前の、俺の高校へ転入してくるとは思わないじゃん。まさかだよ。


「はぁ? ま、待てお前っ」

「何さ」


 俺は、教室で皆の前に立ち自己紹介をやってのけたワタコを、教室の外へと連れ出した。


「お前何考えてんだっ!? そんな子どもの姿で……」

「え? あぁ、これ? 大丈夫だよ、ボクなら。こうして……」

「いや大丈夫なわけあるか……どう見ても子どもだろ、しかも中学生の身長にも満たないのに、どうやって……しかもどうして来た!? まず手続きはどうやって……」


 俺がまくし立てると、ワタコは『分かった、分かった』とため息を吐いた。


「木綿を手伝ってやろうと思って来たってのに、全然歓迎されないなぁ。昨日、ゲームで300連敗目を達成したのがそんなに悲しかったのか? それで八つ当たり?」

「いや違うわ! 確かに悔しかったけどそれはどうでもいいわ!」

「うるさいなぁ。皆に怪しまれちゃうよ? ホラ皆がザワついて来たみたい」

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