チューだけに折衷案だ(激サム)
「わ、私約束を守ってくれないトミーなんて嫌いっ! やだっ」
氷がそう言った瞬間、視界左上の《氷のドキドキ・ゲージ》に《もうお前なんか嫌いだっ》と表示された。極端かっ!
こんな風邪っぴきで理性を失ってしまっている氷とチューなんてできない。でも、このままじゃ氷はもしかすると......
こうなったら......チューだけに折衷案だ。俺の中の男をみせてやる。
「氷......目を閉じろよあっ間違えた『姫......そなたのかく美しきまぶたを、ほんのひとときの間だけでいい。その眼差しを覆い隠すのに使用してはくれぬか? もう耐えられぬのじゃその瞳の美しさに』」
「ひゃっひゃい」
氷が顔をさらに赤らめて、目を閉じる。同時に《氷のドキドキ・ゲージ》も《やっぱり好きっトミー》に変化した。これならいけるぞ。
まずは、氷の視界を完全にシャットアウトだ。
チューはできない......だけど攻略失敗も駄目......
ならば!
***
「ト、トミーったらぁ......情熱的......」
てけてててててん! こおりをたおした!
「よ、よし......これでどうだ?」
視界左上へと目を向ける。そこには......
《SUB MISSION 達成》の文字と、制限時間の残数を表す数字。残りは......三秒!? うわあっぶねあっっぶ......
良かったぁー!
『ふっよくやったな木綿。まさか、そこまでの意気地なしだとは思わなかったで候』
「お前まで戦国武将にならなくていいんだよ攻略チャートちゃん」
『ちなみに、どうだった? 幼馴染とチューした感想は?』
「ふむ......柔らかくも、はかなく溶けてしまうようなそんな感触であったで候」
『オエエエエエエエ!』
「せっかく乗ってやったのに! お前マジでどんな......」
「あ、あれっ......わ、私ったら寝ちゃってたんだ......」
俺が自身の健闘を讃えつつ、攻略チャートちゃんからの酷すぎる仕打ちをいなしていると、氷がようやく理性を取り戻したようだ。
あと数秒これが早かったら俺はどうなっていただろうか。もしかしたら、逆上した氷の右フックを顔面にモロに食らい、かの豊臣秀吉殿のような結末を迎えていた可能性すらある。
とりあえずは良かった、時間ギリギリだったけど氷に何らかの危険が及ばなくて......
ちらりとこちらを見た氷。
普段でも男子人気の高い幼馴染は、パジャマをはだけさせているせいでますます色気をまとって見える。何この人。俺の知ってる氷さんじゃないなぁ。
背後にある窓からは、降り続く雪が見える。氷の部屋に来てから、まだそんなに時間は経っていないはずなのに、辺りはやや暗くなりつつあることに驚いた。
ーーーそもそも、俺がこの部屋に来た経緯を氷は覚えているだろうか。家を訪問した時点で、すでに理性を失っていた氷は、部屋にいる俺を見て驚いてしまうかもしれないぞ。そりゃマズい。
「あ、あのな氷。俺はお前の看病に来たんであって......」
「ん......? ううん......分かってるわ本当にありがとう......トミー」
「いいんだ。気にすることはない。え?」




