幼馴染とイチャつこう(?)
氷は、寝起きの人間が話す量とは思えない文をつらつらと並べ立てた。でも、さっきの氷の発言は攻略のための大きなヒントになるかもしれない。簡単に言えば、俺がトミーになりきって氷とイチャつけばいいわけだ。
確か、長い黒髪、青い目、スキンケア好き......うーんこれらは、今の俺には再現不可能だ。っていうか、これ豊臣秀吉じゃなくね? すごい美化されてるよね? なんだよ長い黒髪って。最初から違うよね。いや恋愛ゲーにそんなことを指摘するのは無粋なのか?
俺が攻略に必要な情報を氷の言葉から集めていると、氷がまたも話し出した。こいつには、やはり俺がトミーに見えているらしい。
「......エピソード326話の、私が敵国の武将にずばっと斬られた時の、心配するセリフ言ってぇ〜......トミー......」
「お前、敵国の武将に斬られたのかよ......くそっこんなに重要なヒントが目の前にあるっていうのにまるで分からない」
その時だった。
視界左上の攻略チャートちゃんからのメッセージが届くポップアップ。そこに、新たな言葉がずらりと刻まれ始めた。
『探し出してきたぞ! エピソード326話のトミーがかけた言葉は『姫......あなたを、奪いたい......ああそれだけじゃ足りない。あなたのその透き通るような声、ブロンドの髪、驚いた時にしゅんと下がる抑揚、整えられた眉、振り袖が似合うその身体......その全てを、奪いたい』らしい! ほら言え!』
「いやだあああああああああああ!」
もう一度、視界左上の表示を見る。そこに記された制限時間は、あと三十秒。やれるか? やれるのか、俺。
いややるしかない!
俺は、ベッドの上で虚ろなままの目をした氷を見る。
「姫っ......あなたをっ奪いたい......ううっあああああ! それだけじゃ足りないっ! あなたのそのっ......ぐあああああああああっ!」
俺は悶絶しながらも、そのこっ恥ずかしいセリフを全て言い終えた。すると、攻略チャートちゃんからメッセージが。
『そこでチューしろ、チュー! ゲームではチューされてんぞ! やれ!』
「悪魔かっ......! しかもチューじゃなかったろ確か! おでことおでこをくっつけるとかじゃなかったか!?」
なんか氷がチュー待ちみたいな顔で俺を見つめてくるし。絶対にあとで後悔することになるぞ氷。マジでやめとけ。
「さ、さあトミー私とチューをっ......」
「いいや駄目だおでここつんだけだ!」
「な、なんでぇっ269話で約束したのにっ」
『うっまた新しいエピソードか調べてくる』
「そ、そうじゃったか姫っ。しかし、今はそれどころではないのじゃ」
「あんなにチューしてくれるって言ったのにぃ!」
『269話......あったこれだ『姫......ワシとキスをした暁には、一生ワシの隣でっ......ああっ恥ずかしいで候』」
「なんでトミーが照れてんだ! ......こ、今度してやるで候」
「なんか『もし約束を破った時には、わしのこの自慢のちょんまげから何から刈り尽くして、その毛でおしゃれな小物でも作ってくれてやろう』とか言ってたくせに」
トミーなに余計なことしてくれてんだ!




