こっ恥ずかしくても氷のためにっ!
「えーと『君のブロンドの髪は誰よりも美しいぜベイビー』」
「むにゃ......」
「んーと『いつも宿題見せてくれてありがとう』」
「ふにゃ......」
「うーん『来週、一緒に映画でも行かぬか姫よ』
「むにょ!」
!?
最後の『映画に誘う』くだり、氷がちょっと反応したぞ!
映画? 映画なのか? お前は映画に行きたいのか? そうなのか氷?
「氷、ポップコーン奢るから映画にデート行こうぜ」
「むにゃ......」
あれ、違う? じゃあ何に反応したんだ?
『おい全然駄目じゃないか若人よ』
「うるさいなお前も若人だろ」
『見た目だけで人を判断するなとはよく言ったものだけど、ボクには年齢という概念はないよ』
「じゃあ赤ちゃんの可能性もあるし、あるいはおばさんの」
『それ以上言うな。とにかく、さっきのがイイ線いってたのは確かだから。探し当てろ、綾瀬 木綿! さもなくばお前の幼馴染は死んでしまうぞ?』
「その武士みたいな話し方やめて! 気が散るから......」
ん? 俺、今なんて言った?
ーーー武士?
「さっき氷が反応したのは......映画に対してじゃなくて......」
武士=戦国武将? 氷が好きなキャラ攻略ゲーの、豊臣秀吉のセリフと、俺の口調が被った?
そんなことあり得るのか?
ーーーものは試しだ。制限時間は、残り一分ほど。
俺は、眠る氷が頭からすっぽり被った可愛いキャラクター掛け布団の山に、少し近づいた。
「『氷殿......ワシと一緒に、天下を統一してはくれぬか』とか」
「にゃうっ!?」
あ、これだわ。氷、反応してるわ。これだわ。
しかし、視界左上の表示には依然として『達成!』の文字とそれに伴うキラキラのエフェクトは現れない。まだこれじゃ足りないって言うのか。
そうだよな。そもそも『イチャつくこと』が達成のための条件なんだから、これじゃイチャついてることにはならないか。
俺が答えにたどり着いた時には、制限時間は残り一分もなくなっていた。うひょー間に合うかな。仕方ない、氷を起こしてしまうしかなさそうだ。もうゆっくり寝かせてあげている場合じゃない。これが終わってからなら、どれどけでもめっちゃ寝てくれ氷。
「氷、起きろっ......お前の命がヤバいぞ。頼むから起きてくれ......じゃなくて『起きろ姫っ......裏切り者が出たぞ!』」
「ぶはっ......ほ、ほんとトミーッ!?」
「あ、起きた」
「あ、あれ......? なんでトミーが私の部屋にっ......?」
はい?
「え? 何言ってるんだ氷。俺はトミーじゃない......じゃなくて『起きなすったか姫よ!』」
「はっはい起きましたトミーッ」
これはどういうことだ?
俺の戦国武将的なセリフに反応した氷が、目をぱっちり開けて起床してくれたのはいい。だが、どうやら幻が見えているのかもしれない。
ーーー視界左上《氷のドキドキ・ゲージ》の数値は......
「《もう最高にドキドキしちゃってる》か。お前どんだけトミーのこと好きなんだよ」
「その長い黒髪......作戦会議の時にしか見ることのできない細められた青い目......大雑把な性格なのに、スキンケアは決して怠らないその几帳面な一面っ......それから私が風邪をひくと、おでことおでこをくっつけて『姫......具合はいかがか? まだ熱っぽいではないかっ......ほれワシに掴まれぃ』とお姫様抱っこでベッドまで連れて行ってくれるその」
「寝起きで喋る量じゃないよね?」




