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首根っこを取る者たち④…オーストラリア 小話編

作者: 徒然生成
掲載日:2025/11/10

✦首根っこを取る者たち④ ― オーストラリア小話編 ―


(南の楽園のデモ行進と日本の若者の沈黙)


---


❥第一話 壁の向こうに橋がかかる


アメリカは鉄鋼に50%、自動車に60%、

電子部品に25%の関税をかけた。


同じ週、中国はアフリカ53か国を「関税ゼロ」に。

上海では第7回「国際輸入博覧会」が開催されていた。


「アメリカが世界に壁を作る間に、

 中国はアフリカに橋をかけた。」


港のコンテナは止まり、牧場の牛だけが太り続ける。

どちらの船にも積めない羊毛が、風に焼けていく。


壁と橋のあいだで、南の楽園は息を詰めている。


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❥第二話 多国籍DNAの国


先住民アボリジニの憲法上の権利は、

国民投票で61%が反対された。


「平等」を叫びながら、

南国のルーツを否定した。


教室の出席簿には、

インド、ギリシャ、フィリピン、アフリカ…

誰もが“多国籍の血”を持ちながら、

本当のルーツを問われると答えられない。


鏡を見つめた少女が、ぽつりと呟く。


「私の敵は外になんていないわ。

 この沈黙の中にいるのよ。」


---


❥第三話 メタン排出の国


カルグーリーの坑道は45℃。

マスクもなしで12時間労働。

移民鉱夫が笑う。


「ワシが稼げば稼ぐほど、

 地球はどんどん暑くなる。」


この国は毎年2億トンを超える石炭を輸出し、

その半分は中国へ。


口では「対中牽制」。

手では「石炭輸出」。


Z世代は気づいている。


「親父らの成功は、この矛盾の上に立ってる。

 これがこの国の現実だ!」


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❥第四話 飢えの楽園


GDP世界12位、平均年収9万AUD(約870万円)。

それでも、5世帯に1世帯が「次の食事が不安」と答える。


「Hope Kitchen」の炊き出しで、

Z世代のボランティアが言う。


「スープを配る私らも、昨日は何も食べてない。」

「それでも私たちは配る。もっと 貧しい人々のために…」


倉庫には缶詰の山。

でも燃料費が高くて“運べない”。


そして、

猫の毛皮が闇市で売れる。


「これ、笑えん現実なんよ。」

「かわいそうだけど、安いから。寒いしね。」


---


❥第五話 火の川


2019〜2020年の山火事で、30億匹の動物が死んだ。

コアラ6万頭、カンガルーの群れが灰に沈む。


「山が燃え、海が腐り、空が笑っとる。」


漁師の声は届かない。

海水温は**+5℃**。

赤潮と毒藻、白化したサンゴ礁。


自然の怒りは静かだ。

ニュースは30秒で終わり、広告だけが続く。


川の幸も、海の幸も、山の幸も、

灼熱地獄の中で姿を消していく――。


---


❥第六話 橋をかけない国


パレスチナの陰で、

スーダンでは1,290万人が避難民となり、

400万人が国外へ…


国連は「世界最悪の飢餓」と発表した。


シドニーの学生はSNSに書く。


「中国はアフリカに橋をかけた。

 僕らはフェンスを立てただけ。」 

 

「この国には橋をかけるお金もないの?」


100万の“いいね”。

その橋の上には、またデモが生まれた。


「パレスチナに自由を!」

「難民に家を!」


しかし、怒りは一本の線にならず、

思想も宗教もバラバラのまま、

炎だけが広がっていく――。


---


❥第七話 楽園の裏通り


ゴールドコーストの裏に、

家を追い出された人たちのテント村が並ぶ。


物価+7.8%、家賃+14%、電気代+27%。

年金暮らしの日本人が言う。


「日本円で月15万の年金が、この国では家賃の半分も払えん。

 めちゃくちゃな円安 じゃ」


「わしらは、日本の家も売り払ったし、

 もう帰るふるさともない。」


「あの日本亡国論、

 “海外脱出ブーム”は

 一体なんだったんじゃろうな?」


評論家とは何?

『講談師見てきたような嘘をつき』

とはこのことか…?


その南国の楽園では、

**“Welcome to Paradise”**の看板が剥がれ、

白い砂浜に、

焦げたアスファルトの匂いが立ち上っていた。


---


❥第八話 黙認の国(Silenced Accounts)


2025年11月、メルボルン。

白昼のネオナチ集会。

ヒトラー式敬礼、黒い旗、そして沈黙の政府。


現地のABCニュースは伝えた。


“Neo-Nazi gathering left unchecked.”


デモ映像を投稿したZ世代のアカウントが、

翌日には削除された。


YouTube、X、Facebook…、

「過激」「扇動」「虚偽情報」のタグを貼られ、

次々と凍結されていく。


「俺らの声は、サーバーごと消されるんか!」


オーストラリア政府は沈黙したまま。

「安全のため」という名の下に、

“正しい怒り”までもが検閲されていく。


「声を出さない国は、息を止められる。

 声を出した人は、命を狙われる。」


---


❥第九話 デモの国と沈黙の島(Digital Silence)


オーストラリアでは年間900件超のデモが起きる。

SNSは彼らの拡声器だった。


しかし「Secure Voice」監視プログラム導入後、

反体制系アカウントの約12%が閉鎖された。


同じ波が、日本にも押し寄せている。


Xでは社会批判系アカウントが相次ぎ停止。


Facebookは政治投稿を“アルゴリズム外”に追いやり、

ニュースアプリはコメント欄を閉鎖した。


67歳の老人がスマホを見つめてつぶやく。


「声を出さない日本人も、

 とうとう息の根が止められる時代が来たのぅ…」


テレビを消し、

カーテンを閉めた息子の部屋を見つめる。


「ワシも、沈黙に慣れすぎたわい。」


「お前のアカウントが閉じたのは、

 ワシが声をあげんかったからじゃ…」


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❥第十話 タコのいない祭り(Boiled Octopus)


広島、三原やっさ祭り。

「本日、タコ飯ございません。」


海水温28℃を超え、タコは深みに逃げたという。


屋台の少年が言う。

「おじいちゃん、タコは逃げただけ。

 まだ生きとるよ。海が冷めたら戻ってくる。」


老人が笑う。


「そうか? なら、わしも逃げるかのぅ。

 茹でダコにされる前になぁ…。」


太鼓の音が鳴り、スマホの画面が光る。

“#声を出せ”――。

Z世代が広島の夜空に投稿した、最後のタグ。


アルゴリズムがそれを消す前に、

67歳の老人が小さく呟いた。


「瀬戸内の海は、

 オーストラリアみたいに

 まだ熱くなっとらん。」


「お前らの声が出るように、

 わしも頑張るけぇ…」


そして笑った。


「茹でられたのは、あんたじゃなくて

 わしの方じゃった。」


瀬戸内の海では、タコがまだ息をしている。

ブクブクと、泡の音を立てながら――。

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