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愛しかない時

 夜な夜な隣の部屋から、「Je t’aime, je t’aime. Oh oui je t’aime.」「Moi non plus.」「Oh mon amour.」って聞こえてきて二人のフランス人がうるさいんだ。録音されているみたいに毎日毎日……Je t’aime。しかし僕にも彼らにも等しく朝は来るのである。

『命題:シェアは呪われる』

 近所のカフェに貼られた謎のポスターには謎の言葉が書かれていた。きっとカフェには無断なのだろう。淡いピンク色を背景に、柔らかい印象を受けるアルファベットのフォントが黄色や黄緑色に彩色され、全体的に満遍なく散らされている。そして本題の『命題:シェアは呪われる』が線の細い斜体ででかでかと印字されたポスターは、カフェの窓の外側に四隅をテープで留められていた。きっと無断なんだ。そして無断のはずのポスターを外さないまま営業しているこのカフェだって無断に違いないのだろう。全部無断なんだ。僕以外全部が無断に過ぎないのだ。

 駅前の無断駐輪はいつだって無断で蹴飛ばされていた。無断に次ぐ無断が無断の業者、無断の行政を呼び込むし、学校で習うあるいは大学で研究される物理法則が無断で世界を語ったつもりでいやがる。

「バカな科学だ。100回ボールを落として100回ボールが落ちたら101回目以降の結果なんて無視しやがる。101回目で手放したボールが上昇したかもしれないのに。101回目で手放さないままボールが落下したかもしれないのに。101回目を完全に見捨てた上で成り立っている世界だ。科学なんて。バカ。テスト101回やれや。」

 本当にバカだ。宗教から生み出された科学はいつの間にか宗教を追い越していた。それだというのにその科学の精神とやらは全く民衆に定着する様子がない。やたらと根拠を求めたがる連中は増えた気がするが、それは決して科学の本質ではない。科学とは世界にあてる方眼を整える試みである。それが正方形でも正三角形でも、ようは見えていればいいってことだ。僕は古来より星々の影を追い、そこに世界を見出してきた。だから僕にとって会う人会う人、全員の顔が☆の形をしていて精神的に参ってしまいそうなんだ。まったく、昔はこんなことなかったのに僕はいつから……。

 ……☆彡☆ミ☆彡☆ミ☆彡☆彡☆ミ☆彡☆ミ☆彡☆ミ……。すると僕は黙って空を見上げるしかなかった。誰しも等しく夜が来るのである。

 「Je t’aime, je t’aime. Oh oui je t’aime.」「Moi non plus.」「Oh mon amour.」「Je t’aime, je t’aime. Oh oui je t’aime.」「Moi non plus.」「Je t’aime, je t’aime. Oh oui je t’aime.」「Oh mon amour.」「Je t’aime, je t’aime. Oh oui je t’aime.」「Moi non plus.」「Je t’aime, je t’aime. Oh oui je t’aime.」「Oh mon amour.」「Je t’aime, je t’aime. Oh oui je t’aime.」「Je t’aime, je t’aime. Oh oui je t’aime.」「Je t’aime, je t’aime. Oh oui je t’aime.」

 うっせえ!!!!

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