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最悪なデスゲーム

「今……なんて」


 竜は耳を疑った。

 聞き間違いか?と思った。

 しかし、


「だからデスゲームだよ。このゲームの三つ目の特徴」

「……えっと……それって人が死ぬあの?」

「そう。ソー〇アートオンラインと同じ」

「嘘だろ?」

「僕が人を殺せないとでも……」


 微笑みを浮かべる魔女。

 そんな彼女を見て、竜はすぐに理解した。


(彼女は嘘を言っていない……)


 竜は多くの人達と話してきた。

 多くの男子や男性教師と出会い、仲良くなった。

 竜はバカだが、コミュニケーション能力は普通の人より高い。

 だから分かった。目の前にいる少女は嘘を言っていないと。


(でも……本当にデスゲームなのか、これは?)


 目の前にいる少女は嘘を言っていない。

 だからと言ってデスゲームだと信じられない。

 そんな彼の考えを読んだのか、魔女は証拠を見せる。


「黒川竜……これを見て」


 魔女はローブから水晶玉のようなものを取り出す。

 その水晶玉には道路を走るバスの映像が流れていた。


「これは今、現実の映像。このバスを爆発させるね」

「なにを言って」

「はい、ドカ~ン」


 魔女が指をパチンと鳴らしたその時、バスは爆発した。

 それを見て、竜は言葉を失う。


「これでバスに乗ってた人達は全員……死にました」

「……お前、イカレてるぞ」


 竜には分かる。今の映像は本物。

 そして……多くの人が死んだと。

 

「よく言われるよ。あ、でも安心して。君がこのゲームでクリアできなくても……プレイヤーである君は死なない」

「え?じゃあなんでデスゲームって」

「だってこのデスゲーム。死ぬのは()()()()()()()()だから」

「は?」

「だ・か・ら……このゲームで一度でもゲームオーバーすると、君の家族や友人が死ぬの」

「……」


 想像の十倍以上の最悪なデスゲーム。

 ゲームオーバーになれば、大切な人たちが死ぬ。

 自分が死ぬよりも恐ろしいデスゲーム。


「さて四つ目の特徴は……現実世界でもスキルが使えるようになるということかな」

「……お前は……お前はいったいなんなんだ!」


 竜の質問に対し、少女は笑みを浮かべて答える。


「魔女だよ。誰よりもゲームが大好きな魔女」

「なにが目的だ……」

「目的?目的は……このゲームを最後まで生き残ったら教えてあげる」

「最後までってどれくらいだ?」

「ゲームは十種類。いつやるかは後で伝えるよ。あ、もし参加しなかったら君の大切な人が死ぬと思っておいてね」


 魔女は手を振りながら「じゃあ、がんばってね~」と言い残し、姿を消した。


「魔女……デスゲーム……もうなにがなんだか」


 まだ現実を受け入れなられないでいた時、竜の目の前にウィンドウが現れる。


<><><><>


 クエスト:討伐

 クエスト内容:ゴブリン十体を倒す

 制限時間:一時間


<><><><>


「討伐?」


 竜が疑問を抱いている時、茂みから何かが飛び出した。


「グギャギャ!」


 現れたのは緑色の肌をした醜い人型生物。


「ゴブ…リン?」


 ファンタジーゲームやアニメでよく登場するモンスター……ゴブリンが竜の目の前にいた。


「グギャアアァァァァァァァァァ!!」


 ゴブリンは鋭い爪で竜の頬をひっかいた。

 すると竜の視界の端に100/98という数字が現れた。


(この100/98って……HPか!?)


 すぐに状況を理解した竜は覚悟を決める。


(戦え、俺!……じゃないと両親や友達が死ぬぞ!でもどうする?どうやって戦う?)


 ゴブリンの攻撃を躱しながら、彼は考える。


(そうだ。スキル……スキルがあるんだ!でもどうやって使えば……えぇい、物は試しだ!)


 竜は告げる。


「スキル発動!」


 次の瞬間、彼の身体が瞬時に機械仕掛けの鎧に覆われた。

 白い装甲……そして装甲の隙間から輝く蒼い光。

 まるでSFに登場するパワードスーツのよう。


「これが……スキルか」


 機械鎧を纏った竜は驚く。

 そんな彼にゴブリンは爪で切り裂く。

 しかし傷一つ付かず、HPは変わらなかった。


「グギャ!?」

「次はこっちの番だ!」


 竜は力強く拳を放ち、ゴブリンを殴った。

 鎧によって強化された竜の拳撃はゴブリンの身体を爆散させる。

 血と肉が地面に飛び散る。


「う……おええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 爆散したゴブリンの血肉と臭いに耐えられず、竜は吐き気を覚える。

 だがゲームの世界だからか、口からものが出ることはなかった。


「……止まるな、俺」


 そう自分に言い聞かせて、竜は歩き出す。


「絶対にこのゲームをクリアしてやる!」

 読んでくれてありがとうございます。

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