085 武王は追いつけない
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《武王サイラスの視点》
俺は、可愛い孫娘ミーチャを預けてお嬢様の元に駆けつけているところだ。
なぜかって?
きまってんだろ!
お嬢様をお一人で迷宮なんぞに行かせられるかよ。
あのイケメン公子様と剣王のお嬢ちゃんが一緒に行ってくれるとばかり思ってたら公子様は一人留守番すると聞いた。
何してやがんだと言ってやりてぇがあとの祭りだ。
仕方がねぇから後を追うことにした。
へ?
過保護だ?
ほっとけよ。
彼女は俺の可愛いご主人様なんだよ。あのイケメンに惚れ込んで付いていくってんで仕方なしにお任せしたが。
本当にあのイケメン野郎。
「おーい。武王じゃないか?」
あれ?
イケメン野郎の声が聞こえたような気がしたが。空耳か?
「よう。武王。なんでこんなところにいるんだ?」
いつのまに俺の前に?
イケメン公子様が俺の前に立ってニコニコしている。
俺、全力で走ったんですけど?
「なんでってあんた、あいや。公子様。後ろ向きで俺より早く走ってんの?」
「ん? そうだな」
イケメン公子様。俺の横に並んで走り出した。それにしても脇に抱えているのは執事の女の子のようだ。
「ちわっす!」
照れたように女の子が挨拶して来た。
「おお。どんな状況なの?」
「はあ。公子様がこれの方が早いと仰られて」
困ったように女の子が言った。
「それよりも武王。どこに行くの?」
「はあ。メーラシア様が迷宮に行くってんで心配なんで後ろからこそっと見ていようかと」
「はは。なるほど。僕も皆と合流するつもりだから武王も一緒に行こう」
「はあ。それは構いませんが、女の子を抱えて走るんで? 俺は急ぐので先に行きたいですけど?」
「そうだな。先に行くといいよ。あっちで合流すればいい。僕が来るって伝えておいてくれたら助かる」
「ホイよ。じゃあ先に行かせてもらいまさ」
俺はそう言うと本気の全速力で飛ばし出した。武王様に叶うやつなんてそうそういないはずだ。マッハの速度なんちゃって!
「武王。どうした先に行くんじゃないのか? なぜそんなに遅く走ってんだ?」
は?
イケメン公子が俺と並走しつつ尋ねてきた。
どうしてこの人、女の子を抱えてるのに俺よりも早く走れんだ?
「公子様。俺も歳かな。先に行ってくんなせぇ」
「武王。急ぐんだろ。ならお前も運んでやろう」
そう言うや、イケメン公子様。俺を片手で抱えて走り出した。
「早えぇ。早えぇ。怖いですって!」
「ははは。武王ともあろう荒武者が女の子みたいな悲鳴をあげて。冗談もほどほどにね。じゃあ飛ばすよ」
「「ひぇーー」」
武王とリビエラ嬢の二人のデュエットの悲鳴が街道にこだましたのであった。
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