085 走るぞ
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《レリトニール公子視点》
「リビエラ嬢。さあ。さっさと行くぞ。皆が待っている」
俺は街道を軽くジョギングしていた。あんまり急ぐと置いていかれて寂しがっているのを見破られてしまい恥ずかしいと思ったからだ。
「は? 公子様。どうして騎馬よりも早いんですか? 待ってください」
あゝ。リビエラがわざと馬をゆっくり走らせてそんなことを言ってからかってきた。馬よりも早く走ってますよと揶揄したいに違いない。
「ほら。そんなからかいなどよいからさっさと走らせて」
俺は馬のお尻に手を添えると優しく後ろから押しながら言った。
「公子様。早いです。怖いです。馬も怖がってますよ!」
国内でも乗馬術随一とか称されているはずの才女のリビエラらしい冗談だ。
しかし馬をいじめているとか言われるのはとても嫌だ。なのでここは馬を放っておいて急ぐことにする。
俺は高くジャンプすると、馬に跨るリビエラを抱えて飛び降りた。
「悪いがお前の悪ふざけに付き合ってはいられないんだ。俺は乗馬は苦手だし、お前を抱えて走るぞ」
もう。ヤケクソだ。
俺は乗馬が苦手すぎる。
どんなに飛ばそうとしても這うよう遅い。馬は賢い動物だ。俺のような下手くそが乗るのを極度に怖がってしまうのだろう。
なんだか可哀想になってしまい、騎馬ではパレードでやるような一番緩い歩き方しかやらないようにしている。
才女のリビエラに限ってそんな筈もない。こんな感じで時々、悪ふざけをしてくるのがリビエラの楽しいのころでもあるし好きなところでもあるが、今はこれ以上遅れてクラスメイト達と会えず、このままボッチが常態化してしまうのだけは避けたい。
「すまんが、急ぐぞ」
俺はそう言うとリビエラを抱えて本気で走り始めた。
「びぇーーー。早すぎですぅ」
いつまでも悪ふざけしているリビエラを無視して俺は全力で走った。
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