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084 ドラゴンの咆哮

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《魔女っ公女リージィーの視点》


 この迷宮はとても有名な迷宮。『嘆きの壁』と呼ばれている。


 最深部は500層だそうだ。


 今までにこの迷宮を踏破者したのは目の前の剣王アイリス様とレリトニール公子様のお二人だけだ。


 たった二人だけでそんな偉業を成し遂げたことに驚いてまう。


「剣王様。わたくし達だけではとてもあのような数の魔物を倒すのは無理です」


 もう。魔力が尽きそうだ。


「そう。分かったわ。そろそろ帰りましょうか」


 何でもなさそうにアイリス様は答えてくださった。


 わたくしの横ではレリトニール公子様の従者のお一人であるメーラシア様が戦っていらっしゃる。彼女の無尽蔵にも見える魔力には驚かされる。でもそろそろ限界なのでは?


「メーラシア様。大丈夫ですか? 最近まで伏せってらっしゃったのでしょ?」


 なんでも不治病と言われる魔力枯渇症をレリトニール公子様の奇跡により直していただいたのだとか。


 わたくしの実家ヤーフィルカート公家が探って得た情報なので間違いない。


「わたくしなら大丈夫です。わたくしの護衛の爺やに鍛えて頂いておりますもの」


 にこやかな笑顔を振りまかれてメーラシア様が答えた。


 メーラシア様は元は小国とは言えディーガ王国の王女だったお方だ。さすがに凄い気品だ。


「でもこんなにも魔物に取り囲まれましたわね」


 そう言ったのは鍛治公女エカテリーナ・ベーベンダール様だ。ドワーフの王国から留学に来られた公女様だ。小さい身体が本当に愛らしい素敵なお姫様。


「本当ですわ。エカテリーナ公女様は魔力は大丈夫ですか?」


「わたくしももう余裕がありませんの。闘いは得意ではありませんし」


 鍛治公女エカテリーナ様が青い顔をされて答えられた。相当疲弊れているご様子。


 ここは迷宮の第十層のボス部屋付近。


 たくさんの魔物がわたくし達を取り囲んでいる。


「大丈夫でしょうか?」


 心配そうに、わたくしが言った時だった。


 心臓を鷲掴みするような恐ろしい咆哮が通路の向こう側から響いてきた。


 一瞬身体が凍りつくように身動きが取れなくなった。これは強い魔物が放つ威嚇の咆哮だ。


 大変だ。加護が大きく削られているのが分かった。


 これ以上加護が削られると生死に関わりかねない。


 わたくしがそう危惧した時、ドラゴンの咆哮を吹き飛ばすような大きな音が背後から響いた。


 身体を縛るような恐怖が嘘のように無くなり、加護が回復していくのが分かった。


 後ろを振り返ると、剣王アイリス様が剣を鞘に収めるところだった。


 見ると、わたくし達の周囲を取り囲んでいた魔物のほとんどが消えて無くなるところだった。


 剣王アイリス様が切り捨てると同時にわたくし達の加護を回復してくださったのだと理解した。


 剣王アイリス様がスタスタとわたくし達に近づいてきた。


「ドレイクの咆哮ね」


 剣王アイリス様がそう呟いた。


 ドレイクとはドラゴンのことだ。北国の山脈の地方言語でドラゴンをそのように呼ぶ。


 その地方に住むのは小ぶりなドラゴンだった。


 いつしか小ぶりなドラゴン種をそのように呼ぶようになったのだと聞いたことがある。


 ドレイクは小ぶりなドラゴンの亜種だ。とは言えドラゴンであることに変わりはない。


「ドレイク如きが、わたくし達に威嚇など。身の程を知らせましょう。皆さんはわたくしの後ろから付いて来てくださいね」


 剣王アイリス様は、そう言うとわたくし達を伴ってスタスタと歩き始めた。


 本当に大丈夫なのだろうかと不安になったが何も言えず剣王アイリス様に付いて行くしかなかった。

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