070 策はいくつかあるけど思いつくまま話ましょうか?
途中でレリトニール公子が長々と話すところは、適当に読み飛ばしてください。なんか凄そうなことを軽く言ってる感じです。
読み飛ばしても影響ありません。
《レリトニール公子視点》
なんでこうなった?
いきなり教授から前で講義しろとか。このキャペラとか言う教授なんか変だ。
「しかし、何を講義すれば?」
「いやぁ。公子様の講義ならどんなことでも聞きたいんだが、そうそう。なら外征論を」
「外国の攻め方ですか?」
なんてことを聞くんだ。
レベル上げしかしたことないのに外征論とか。
「そうだね。これはただの遊びとして考察してみて欲しいんだが、なら最近活発に拡張外交をしているリールセラートを対象とした外征論を論じてみてくれないかな」
「え? リールセラートですね」
名前を聞いて少しやる気が出てきた。リールセラートはメーラシア元王女の祖国ディーガを正当性もないのに滅ぼした国だ。
メーラシア嬢には悪いが俺はそのことでリールセラート王国と事を構えるべきではないと思っている。しかしお遊びというなら考えてみるのも良いだろう。
「リールセラートはまぁ、そう長く持たないと思っていますが。それを早める方法というならいくつか方法があります。
まずは経済的な封鎖のため通商路を閉ざすのです。しかし完全に閉ざしてはいけません。完全に閉ざすのは一番効果的な時です。それがどんな時かは後で述べましょう。
多くの通商路が閉ざされると物価が高騰するものです。そこで物価の高騰を更に推し進めるために、彼らの貨幣の価値を下げさる策を講じるのが効果的でしょう。彼らの主要な通貨に含まれる金の含有量をかなり抑えた偽物とは言えないような貨幣を作りばら撒くのです。その方法も後に説明しましょう。
次の手は、リールセラート王国の国王がセミーツ国の王女を妃としていることに注目し、セミーツ王国との仲を悪くする策を講じるのです。
方法は色々あるのでしょうが、例えばリールセラート国民になりすましてセミーツで悪さをするとかですかね。例えば麻薬を売るとか?
それらの効果が発揮し、経済が悪くなったところで、断続的にリールセラートを攻めます。
リールセラートを攻める場合は、様々な場所から特に戦略的意味のないところも含めて断続的に攻めるのが肝要です。
意味のないことをされるのが一番効くのです。断続的な攻撃は人々のフラストレーションをとても溜めます。しかし決してやってはいけないことは本格的な戦争です。小さな部隊で速攻で攻めて帰るのです。奇襲は効果的です。やられる方はたまったものでは無いはず。
これと同時並行してリールセラートの貴族の買収を行います。ここで先程の貨幣の登場です。その貨幣は偽物ではありませんが本物と比べると金の含有量が少ない上に大量にばら撒くのですから貨幣の価値はダダ下がること確実でしょう。それと共にリールセラートの内政に不満を持つ貴族を取り込めるのです。あ、貨幣の質は同じである必要もないですね。いろんな質の貨幣が混じっている方が効果的かもです。
また、リールセラート内に工作部隊を侵入させます。この工作部隊は、野盗の振りをするなどして我国の部隊と分からないようにして様々な破壊工作をさせます。この工作の意味はリールセラート国内の反乱分子の蜂起を促すのが目的です。また、この工作部隊はリールセラートの反乱分子と接触させるのです。
買収した貴族などを使って反乱分子を養成するのも良いでしょう。そして彼ら反乱分子に先程の粗悪な貨幣による資金提供、さらには武器の供与などを行います。武器の供与の方法についても後で説明します。
特に旧ディーガ王国領では不満分子も多いでしょうから工作に適しているでしょう。
次に武器を製作する者達への工作です。彼らを雇ってリールセラートに武器を渡させないようにするのです。武器が高騰しているように見せかけます。
高価な武器でも入手すると言うなら粗悪品を売り付けるなどの妨害を試みさせます。
彼らには作った武器を我らが育てている反乱分子に渡させるのです。この時、武器を購入する時も先程からの粗悪な貨幣をばら撒くのに利用します。
次にリールセラート王国周辺国との協定についてです。リールセラートを分割するなど利益を示し、同盟もしくは不可侵条約などを結びます。同盟は多いほど効果的です。
ここでは資金は不要です。リールセラートを安売りして同盟を増やすのです。しかし、結果的に何もしない国に利は与えぬと虚の噂を流して、無理矢理参戦させるようにします。これは協定違反なので相手方に利を渡す必要もなくなりますし、今後この協定違反を理由にしてその国から損害金なり様々なものを奪う理由付けに利用できます。
本格的な戦争などしなくても二年で内乱が起きるでしょうが、もし戦争するならリールセラートから手を出させるように仕向けるのが肝要です。
なんの権威もない私人に最後通牒のような文章を持っていかせ、あたかも脅されたかのような錯覚に陥るようにするのです。私人に文章を持たせることこそ肝要です。なぜならそれが最後通牒である必要がないからです。我らが戦争を仕掛けたなんてことは後世ですら噂にもなって欲しくありません。我国は平和を愛する正義の国なのですから。
そしてこの時が好機です。全ての商路を完全に閉ざすのです。
それでなくても物資が入りにくく、貨幣の価値は下がり、今にも大国ラッシート王国が攻めて来そうだと疑心暗鬼になっているのです。彼らはまともな判断もできないでしょう。ついには己が有利な通商路の確保のために彼らは必ず先に大々的な捨て身の戦争に踏切るはずです。
しかし、頃合いを見計らって仕掛けているのはこちらの方です。彼らは、戦争ができるような経済力などほとんど残されていないでしょう。
彼らは、恐らく大した準備もせずに充分な食料も整えず戦争にノコノコやってくるのです。彼らは戦争先がとても豊かな穀倉地帯を選んでやってくるでしょうが、果たして彼らの思惑通りに都合よく穀物や物資が残されているでしょうか?
答えは否です。なぜなら我々は事前にそれらを他に移しておくからです。
我々は、時期を知り、彼らを誘導するために豊作だとか好景気だなどと反感を買うような噂を流しておくのです。そうすれば欲目を怒らせて彼らはそこにやってくるでしょう。彼らを思いのままの場所に誘導するのも恐らく想像以上に容易いことでしょう。
そして掠奪し放題だと思ってやってきたのに、そこは何も無い誰もいない不毛地帯なのです。我軍は反撃したくもなくなるほどの大軍をもって、彼らの退路を断ちます。簡単です。だってやってくる時期も場所もこちらが段取りしたのですから。
彼らの軍は自滅するでしょう。
恐らくこのような戦争にまではならないでしょうが、リールセラート王国の滅亡は更に早まるでしょう。
もし、彼らの中に少しでも利口な者がいるなら、我々の多角的な内部工作を感知した時点でディーガの一部を差し出して交渉にくるでしょう。ですがそんな気の利いた人はいないと聞き及んでいます」
大体、歴史で習ったような戦争の仕方をなぞってみたがどうだろうか? いやらしい手ばかりだ。反吐が出そうになるが、これが歴史だし、本当の世界だ。いや。俺のいた前世の世界がいやらしすぎるのか?
ああ、そう言えば他国から難民を呼び込んでそれを送り込むなんて信じられない汚い策を使う奴らもいたっけ。忘れてたよ。まぁ良いか。
俺は歴史オタクではないので、それくらいしか思い出せない。でもこっちの世界の貴族になって地頭が良くなったのか結構すらすら言えて良かった。良かった。
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