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063 満点は万点

《時間は遡る。昨夜のとある教授の視点》


 わたしは、ヤコーブ・ベールリックである。我が家は栄えあるテンシラーオン大公爵家の騎士爵家だ。それが誇らしくて仕方がない。


 何よりもセシーザス国立魔法学院の教授に抜擢された。これは本当に名誉なことなのだ。


 しかもサインシース・テンシラーオン大公爵様から直々に若君の『神実の門』への入門儀式の次第を確認し、大公爵様に報告するように通達された。本当に名誉なことだ。嬉しくって仕方がない。


 レリトニール公子様の入門の儀式ははっきり言って異常としか言いようがなかった。


 あの方は本当に人間なのか。もはや神々の1柱と言っても良いのではないだろうか。


 『神実の門』で奏でられる音は太鼓と鐘と笛の三種類が確認されていた。ところがレリトニール公子様のは今までに聞いた事もない音ばかりだった。


 あの最初に天を揺るがすような音だ。あれは太鼓の音でいいのだろうか? さらにはあの野太い腹の下から身体全体に振動が響いてくるような音。あれは角笛の音だよな。


 そして数えきれない、あの連鐘だ。一体どれほど巨大な鐘を何個連ねたらあれほど豪華で重々しく連続させて鐘を鳴らし続けることができるのか。


 しかも主神の娘にして美の女神アルテミス神がご照覧遊ばしたとか。


 あの様を正しく言葉で表現するのは不可能だし。わたしにはそんな才能はないしな。


 入門の儀式だけでも凄すぎて報告書が纏まらないんだよ。


 それなのに筆記試験ももうめちゃくちゃだし。


 天才の前評判の高かった公子様だ。合格されるのは決まっていたけどあの答案は何なんだ。


 公子様の答案は、我々の知識では知り得ない事ばかりが綴られていた。


 特にスキルに関する回答が凄いらしい。


 あんな論文をあの短時間に書き上げるなんてただの天才なんて言葉では済ませられないよ。


 もはや神技だな。


 確かにたくさんの回答用の白紙を渡すのが我が校の入試のしきたりだけどね。


 白紙全部を埋める気概で試験に挑むようにとか意味の分かんないこと言う。言うわたしたちは気持ち良いけど、生徒の時はほんと、何言っての? プレッシャーかけやがってって思ったよな。


 実際に全ての用紙を埋め込むなんてそもそも物理的に不可能な量だったはずだよ。


 あれって白紙を用意するのをやめようって毎年なるのに、あの白紙を見る絶望感に浸る受験生達を見る快感がやめられないから無くならないんだよな。


 聞くところによると紙が足りないと追加を催促したらしい。


 あんな量の文字をあの短時間で埋め尽くすだけでも無理だ普通は。


 キャペラの野郎が採点もやらずに必死で書き写していたのには驚いたが、この論文が手に入ったのはありがたかった。


 でもこの回答が全部凄い論文になっていたのには脱帽だ。いやはやとんでもない天才がいたものだ。


 答案を採点するはずのキャペラ教授が途中から採点をやめて必死で書き写し出すほどの内容だったってことだ。


 試験に満点と言う天井を付けず、明らかに優秀な答案には満点以上を付けるのがこの学園の流儀だけど。


 キャペラの奴は途中で一万点なんて馬鹿らしい点数を付けて周りに笑われていたっけ。でも本当に一万点でも良いかもと思えてくるし。


 はー。


 ため息しか出てこん。


 実技試験までマジ凄かったし。


 剣聖マーキュラス子爵家の天才少女って本当かとか思ってたんだよね。美少女だと聞くし。前評判が高すぎるし。


 あんな可愛いのに剣王って。


 あの大木って幹の太さが五メートル以上あった奴だ。創建当時からの大木の一つだよあれ。あんな大木を飛剣技で斬り倒せるなんて信じられないよ。


 あれをレリトニール公子様って手で跳ね返したんだよね。


 そんなことができる存在などもはや強さを計測する方法すら見つけられるないほどのレベルだ。恐らくレベルは伝説の勇者を上回りレベル700などと言うあり得ない高みにおられるに違いない。


 公子様は最後にデコピンで終わらせてしまわれた。デコピンで相手を無力化したのだ。


 しかし、デコピンで剣王を退け反らせるってどれほどの攻撃力なのだろう?


 剣王ともなると片手で牛を持ち上げ、全力を出せば馬を何十メートルも投げる事さえ可能だと聞く。


 そもそも鋼鉄よりも硬い鬼竜の外皮を太刀一本で切り刻むほどの膂力を持つ存在、それが剣王だ。


 生きる戦車ではないか。そんな存在をデコピンで退け反らせられるものなのだろうか?


 そうそう。剣王の『神実の門』の入門の儀式もそれはそれはエグかった。


 もし、彼女の前に公子様の入門の儀式を見ていなかったら。


 レリトニール公子様の従者達も皆凄かったな。


 叡智の結晶リューペンス閣下をして天才と言わしめた三年生筆頭賢者リビエラ嬢と同格者があれほど存在するなんて。


 何もかもレベルが違い過ぎてもはや学園の入試なんて吹っ飛びそうだ。


 さて、何点にすればいいのだろうか?


 さて何点とするべきか。


 テンシラーオン大公爵様から「我が家に相応しい点数を付けよ」などと命じられているんだぞ。


 倍満。三倍満点なんて新語を作るか? なんか下品だしな。


 あゝ。キャペラ教授のように無責任に一万点なんて点数をつけられたら良いのに。

学園の入試ですが最初二日の日程でした。無理矢理一日に変更しました。さすがに冗長かなと。時間的には明らかに無理があります。このため前後多少矛盾が生じているのをお許しください。

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