057 わたくしのウィークポイントがチャームポイントなんだから
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《レリトニール公子の視線》
その後自己紹介したのは、女性ばかりだった。
某侯爵の娘さん。某辺境伯の娘さん。それに某某、、、伯爵の娘などなどだ。
女性率が高いのには誰かの意思が含まれていそうな気がするのは気のせいだろうか?
お連れの従者数十人もほぼ女の子なので本当に女の子ばかりだ。しかもよくこんなに美人ばかりがよく集まったもんだ。
最後に俺の左隣の伯爵令嬢が挨拶を済ませると、乾杯の音頭をリージィー公女に取ってもらってから食事を開始した。
俺は主催者として席を立つと皆に酒を注いで回った。13歳でワインを飲むのもどうかと思うので、軽く注ぐだけにした。
さすがに全員に注いで回る訳にもいかないので、従者達は遠慮させて頂いて会釈だけにした。
会釈だけでも恐縮してくれていたが、元々が日本人の俺は従者の人には悪いことをした気分が拭いきれない。
そんな俺に、全く遠慮せずに話しかけてきたのは平民の娘リザだった。
目の前のリザの顔にはなぜか勝ち誇ったような笑みがあった。
「公子様のモブって職業はどのような職業なのでしょうか?」
俺はこの娘何聞いてるの?
最初にそう思った。
なぜならこの世界では能力を詮索するのはタブーだ。
たとえ、相手の能力が普通に公表されて広く知られていても能力を聞くのは失礼とされている。
親しい間柄では能力をネタに相手を弄るのは良くある。また、目上の者や身分の上の者が下の者の能力を聞くことはタブーとまでされていない。
とは言え、ただの従者が他家の御曹司に向かって能力を聞くのは完全にマナー違反である。
そして次の瞬間。
俺はなるほどと違和感の正体を理解したのだった。
この娘やりやがったのだ。
俺は一瞬、どう対処するか迷ったがこの娘の手に乗って様子を見ることにした。
「まぁ変わった職業だよ。僕はあまり良い職業だとは思っていない。世間ではちょっと違うように受け取られて持ち上げられたりしているね。でも過大評価だと思っているよ」
俺はさらりと答えてやった。
すると娘は満足げにふふふと笑った。
この娘に最初に感じた違和感の一つが何だったのか、それがこの笑いを聞いて分かった。
この娘はこちらの世界の身分制度というのが俺と同じように身に付いていないのだ。
だから俺のような身分の人にも普通に接することができるようだ。
普通なら不敬罪が適用されてもおかしくない質問を平気でしてくるのだ。俺も身分制度なんて馬鹿馬鹿しいものに興味はない。
一方で目の端に、プンプン怒ってこちらを見ている我が家の従者達の姿が見えている。
俺はそちらの方にはジェスチャーで静まるように指図しておいた。
「そんなことを言っても大丈夫なんですか?」
平民の娘リザの質問は止まらない。
「大丈夫とは?」
「だってモブでしょ?」
少し馬鹿にしたようなニュアンスがある。剣王や賢者などの強敵が目の前にいるのに呑気な娘だ。しかしこの質問でモブがどんな職業かをこの娘が完全に理解していると確信した。
カタカナで書かれたモブを完璧に発音し、意味を知っている。つまり彼女は転生者なのだ。そう確信すると同時に彼女の自信や不遜にも見える態度が腑に落ちた。
しかし俺の感じた違和感はこの彼女の身分制度に対する態度だけでは無く他にもう一つあった。
それは、どうしてこの娘の不遜とも取れる態度をリージィー公女だけでなく彼女の従者達は黙って見ているのか?
それよりもどうして従者達はこの娘を今日の晩餐会に連れてくることを反対しなかったのか。
要はこんな失礼な態度を平気で取る娘が入り込むなど貴族社会ではあり得ないのだ。
つまりこの娘はリージィー公女や従者達に何かしたってことなのだ。さて、そろそろ種明かしだ。
それは魅了だ。
魅了などの精神制御系の魔法はかなりレアな魔法だ。普通の職業では生えない。
そもそも平民の小娘がたとえ能力を有していても高貴な貴族様に魅力などをかけるとは誰も想像もしない。それほどにこの世界の身分制度は深く根付いているのだ。
この娘は、それを悪用しているのだ。
なによりも俺はさっきからこの娘から散々魅了攻撃を受けていた。
種明かしをすればなんのことはない。
先程から俺の危機察知系の様々なスキルが魅了攻撃を受けていると警告音を出し続けているのだ。
俺にも魅了スキルがあるし、スキルレベルがこの娘よりも上のようだ。それに精神攻撃人数対する耐性も持っている。
なによりステータスの開きが大きいようで彼女の魅了攻撃を跳ねつけているようだ。
魅了スキルの最大の弱点は接近戦で戦えるほど近づく必要があるってことだ。
そしてその間合に俺は不用意に入ってしまったと言う訳だ。
先程のリザの勝ち誇ったような顔はそういう理由からだったようだ。
ここは魅了された振りをしつつ彼女の目的や能力を確認する。それが最上の対応だろう。
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