044 獅子
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俺は、試験官の方に歩いて行った。
自己紹介しようとしたら、試験官達がその場に膝を付いた。
「これは、これは御坊ちゃま。よくぞ起こしなされました。わたくしは、御家にて騎士爵を拝命致しておりますヤコーブ・ベールリックと申します。
本日は、公子様の晴れの御入試に立ち会いできること、末代までの語り草となりましょう。
本日は、よろしくお願いします」
なんと試験官は、我が家の家臣だそうだ。なんともズブズブな関係である。
もしかしたら悪い結果が出ても下駄をはかしてくれるかもと期待してもいいよね?
「ご苦労。では」
俺は軽く会釈をして門に入って行った。
鳥居門の中ほどまでくると、どこからか重厚な感じの太鼓の音が響いてきた。
あれ? リビエラと違うじゃん。リビエラは最後に太鼓だったよね。
ドン ドン ドン ドン ドン ドン ドン、、、
大きな音の太鼓の響きが続き、それを聞いていた周りの人達が騒ぎ始めた。
あ、これはもしかしたら最悪の感じか? リビエラは鐘の音からだったよな。なんか変なのは確実だ。
続いてラッパの音。
ブーオーーーーォォン!
ブーオーーーーォォン!
ブーオーーーーォォン!
ブーオーーーーォォン!
ブーオーーーーォォン!
これって角笛?
お腹に響くような音響の笛の音だった。
そしてこれに続いて無数の鐘の音が鳴り引きだした。しかもカンカラーンカンカラーンとけたたましく鳴り響き音も大きくて喧しいし何よりもいつまでも鳴り止まない。
え?
門、壊れた?
余りの喧しさに俺は顔を顰めた。
次の瞬間。
俺は白い空間にいた。
目の前には、見てはいけない物が。
慌てて俺視線を避けたがもう遅い。見えたもんは取り消せない。
金髪だった。
どこがとは聞かないで。
「わたくしは、美の神アルテミス。汝に神託をくだしにきた」
へ?
「汝。異界より来たりし者。
面をあげい」
「はっ」
って言われても見えるって!
「よい。
気にせずに面を上げよ」
「はい」
仕方なしに俺は顔を上げた。なるべく下の方は見ずに、とは言え顔をジロジロまるのもまずかろうと首の辺りに視線あてた。
「汝とは間近に話したいと思っておったのだ。
今回は良い機会だった。依代としては不十分だが汝を呼び出せば、会うことも可能じゃろうとやってみたのだ。会えてよかった」
「はっ。女神様と直接お目見えする機会を頂きありがたき幸せでございます」
「よいよい。堅苦しい挨拶は不要だ。
それよりも、妾がこうして汝に会ったのは、汝にモブなどと言う職を与えてしまったことを詫びたかったからだ。
これは神界のやむなき理由によりそのような職に就かせるしかなかったのじゃ。
許せ」
女神はそう言うと頭を下げて見せた。
「いやいや。女神様が頭を下げてはいけません。頭をあげてくださいませ」
俺は慌てて女神様よりも低く頭を下げつつ叫んだ。
「うむ。
また会おう。
これからも励め」
女神様は、キラリと白い歯を見せて笑ってくれた。
「はい。ありがとございます。女神様」
俺がそう答えると女神様は、優しく微笑んだまま消えた。
ふと我に帰る。
あれ?
能力とかは? お告げは?
教えてくれなかった。なんのお告げもなかった。強いてあげれば謝罪と激励の二つをお告げと言えるのか?
残念だが、お告げで伝えるような能力が無かったのだろう。
ガッカリする俺を他所に、おずおずと前の方から女性の試験官がやってきた。
「公子様。なんと素晴らしい。どなたが参られたのでしょう。前例の無い凄いことになってましたが」
女性の試験官は、目をハート型にしそうなほど興奮していた。
どうやら先程の太鼓やら笛やら数えきれないほどの鐘の音やらはとても異例らしくかなり驚いている様子だ。
「ああ。美神アルテミス様が参られた」
何にも能力を教えてくれなかったけどね。
「は? 十神のアルテミス様ですか? それはまた前例を聞きませんね。そのような尊い神様がお出ましになられるなんて、それは正に奇跡です。わたくしは、奇跡を目の当たりにしたのですね」
俺の説明を聞いた女性試験官は勝手に興奮して勝手に感動し涙ぐんでしまう始末だった。
なんか勘違いしておるぽいが放っておくしかないよね?
「それで、どんなお告げを?」
それでもさすがに我が名門の貴族学園の優秀な試験官である。必要な質問は忘れない。
「ん? 俺のモブって職業は、異界の特別な理由のために付けたらしい。それ以上は特に何も」
あははは。
特別な理由でモブ認定なんて、やめて。神様から謝られましても。って感じだが。
それ以外に何のお告げももらえなかったなんて言い難い。
結論として女神アルテミスは、恐らくなんの能力もなくてお告げができないと言いたかったのだろう。
まぁ、女神様の貴重な金髪も拝められたのでよしとしておこう。
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