042 校門さまは不思議な形
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王立魔法学園。
俺は今、その正門に向かって歩いている。
俺の供回りの騎士たちや使用人達の一団は、先に寮に行ってもらった。
何しろ百人を超える大人数だ。そんな一団を校舎内に連れて行ける筈がない。
俺は、嫁候補のお姫様達に連れられて階段をしずしずと登って行った。
階段は、百八段。なんで?
煩悩か?
とにかく、一番上だ。
夏の日差しが目に眩しいが、俺には赤い大きな日傘が掛けられ、恐らく嫁候補の誰かが掛けてくれているのだろう、風属性魔法で温度調節されているのかとても快適だ。
高貴な貴族は、日差しや熱気などからすら守られるているのだ。熱くても涼しいなんて現代日本よりもよっぽど快適だ。
下を見ると俺と同じように護衛に守られて階段を登ってくる人達でいっぱいだ。
「なんで彼等、先に来てたのに上がってこなかったの?」
俺は疑問を口にした。
「さあ。なぜでしょうか。待ち合わせでしょうか?」
女執事リビエラが曖昧に答えた。
なんと彼女のような優秀な人でも知らないことがあるんだと途端に嬉しくなる。
俺なんて無知すぎて吐きそうだ。恐らく入試の学術試験でも悲しい点数になるだろう。
しかし、公爵様特権で受ける前から満点が確定しているので勉強はおざなりだ。
女執事リビエラは今年16歳で俺より三つ歳上だ。それから昨年、俺が修行のために家を空けるまでの二年間。彼女は学校から通って俺に家庭教師をしてくれていた。
学校生活と女執事の仕事を両立したのだ。本当に凄い。
聞くと三年前の成績トップ入学だったとか。本人曰く。
「当然です」
だそうだ。
元々賢者と言うレア職業に就けるほどの才女だ。俺なんか比べられない才能をお持ちなのだろう。
第一関門の能力測定は、正門で行われているのだ。
学園の正門を初めて見たが。
鳥居?
鳥居だよね。
そんな形だった。
巨大な鳥居が俺の前にある。学園は高台の上に建てられていて、街を見下ろす位置にある。
外観は、沢山の建物群と中央に巨大な城のような建物があり、そこが俺達が明日から通う学園本校である。
俺は本校の第一学年のSクラスに入学が決まっている。何しろ公子様だしね。
もちろん我が最愛の姉達も皆、Sクラスだ。
「あれが?」
俺は巨大な鳥居を見ながら聞いた。
「はい。アーティファクト。『神実の門』です」
「しんじつのもん?」
「はい。神々からの授かり物である果実を測定するゆえにそう名付けられそうです」
なるほど。やっぱりこの娘。なんでも知っている。
「あそこを通り過ぎる時に天の声が聞こえるそうです。天の声はそれぞれに近しい守護霊が直接話しかけてくれると言われていまして、人によって声音など印象が違うようです。
ごく稀に気まぐれな神が直接話しかけてくださることもあるそうです。文献によりますと神威の高い方からの語りかけは無いそうですが、それでも神から直接語りかけられた人は、その余りにも大きな存在に気を失ったと記録されています。
公子様なら間違いなく神々のどなたかが話しかけてこられると確信しております」
力強くリビエラ嬢が言った。
そんなはずはない。そんなにご贔屓にしてくれるならモブなんて職業になるはずがない。
この門での試験は、単なる確認作業のような物だ。鳥居をくぐると精霊が能力についてお告げをする。それを筆記係が控えると言う流れになる。
精霊の能力により測定される内容が変わるらしいのがこのアーティファクトの面白いところだ。
強い精霊ならより深い能力の内容のお告げを残すとのことだ。
まぁ、俺なんかにじゃ小さな妖精さんが出てきてこんにちはって言って終わりそうな気がする。
どちらにせよ、俺がモブで無能なのはある程度バレバレだろう。
俺はいっそ自分の無能が明らかにされた方が良いとすら思っている。なぜなら有能を装うのも疲れるからだ。
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