004 宝珠
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《テンシラーオン公子の視点》
この世界。職業システム制度を基本とした世界だと思っているのは俺だけではあるまい。
職天祭。
なんだよ。
モブって。
ゲームで、職業システムを取っていた場合は、どのような職業になるかで全てのステータスは決定されてしまうはずだ。
良い職業になれば、レベルと連動して様々なスキルやらステータスやらがザックザックって具合だ。
一方、農民とか、無職なんてもんになってしまったら、、、、悲惨な事になる。想像するのも恐ろしい。
モブなんて農民以下じゃん。
で、公子様で英雄な俺はその地位を悪用して職業システムの抜け穴を探しているわけだ。
この世界には職業以外に神からは、称号と恩恵が与えられる。
称号は偉業を果たした者に、恩恵は神の気まぐれにより授けられると言うのが定説である。
つまり、モブな俺がそんな物を得ることは望むべくもないって訳だ。
「公子様。宝珠をご存知ですか?」
そう尋ねてきたのは、従者のアイリス嬢だ。
彼女は、うちのテンシラーオン公爵の寄子のマーキュラーシュ子爵家の令嬢であり俺の従者の一人だ。
子供の時からの従者で、幼馴染でもある。親同士から認められた嫁候補でもある訳だ。
変な虫が付く前に、嫁候補を当てがうのだ。いつでも男女関係になって良いと認められている二人でもある。
しかもアイリス嬢は、超極上の姫騎士ちゃんだ。
前世の俺なら泣いて喜ぶ状況だが、難しいのは、そんな嫁候補が複数名存在する事だ。
今の俺には、誰を選ぶべきかが分からない。男なら全員に手を出してハーレムを作るのが最高な訳だが、複数人に手をつけたらどうなるのか想像できない。微妙な話だし、人に聞きたいがそもそも聞きにくい。結論は保留中だ。ヘタレとも言う。
いかにも俺らしい。悔しい!
それはともかく。
「宝珠って?」
「あ。はい。なんでも昔の聖人様が大変な力を授かった事があるとの伝説がある物だそうです」
「だから宝珠なのか」
「はい。公子様ならご興味が有るかと」
まあ、確かにスキルの種とか無い? とか聞いたし、心配してくれているのね。
俺はモブ職。碌なスキルが生える訳がない。
【埋没】なんて変なスキルが生えた時には両膝を抱えて泣いたのは言うまでもない。
そんなに目立ちたくないのか! と自分のスキルに怒鳴ってしまったほどだ。
一方、目の前のアイリス嬢は、『女騎士』と言うちょいとレアな天職を授かった。さすがに姫騎士ちゃんだ。羨ましい。
ぜひ『くっころ』なんて言って欲しいわけだが、、、
彼女は【剣術】【槍術】【馬術】などのスキルを開花させ、御前試合で優勝した後、剣聖の称号まで得てしまった。本物の天才だ。
俺を憐れんで、そんな情報を仕入れてくれたのだろう。
「ほ、宝珠?」
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