033ー2 エデンバーグ子爵家エーメラルダ嬢2
《続きです》
「あの方は異常だ。テンシラーオン公爵様は、快く我々を受け入れてくださった。これは王国に対して二心がないことを表明するための賢明な判断だと私は思う。
しかし公爵様は、お前達子供はスクスク育って欲しいと言う理由で、我々の任務については公子様にお伝えしないそうなのだ。
つまり、公子様は私の僅かな説明だけで、我が家の存在意義を誰よりも深く理解し、更にはご自身が二心の無いことを表明するだけでなく、お前の立場まで心を致されたのだ。
つまりお前の辛さを思って気にすることなく情報を集め、私や国王に報告せよと仰ってくださっているのだ。
なんとも僅か八つの子供とはとても思えない。長くこの仕事をして来たから余計に分かるがあの方の器の大きさ、天性の聡明さ、そして比類なき優しさは古今に例を見ない」
日頃、苦虫を噛み潰したような渋顔で話されるお父上と違って、とても嬉しそうだったのを記憶している。
父上がこのように嬉しそうなのは、恐らく我が家の存在意義を深く理解してくださったのが余程に嬉しかったのだろう。
この日から、我が家の忠誠は王国よりもレリトニール公子様に向けられるようになった。
簡単に言うとレリトニール公子様のファンになったのだ。
この厳格が服を着ているような父上の王国への忠誠心をご自身にすげ返させてしまった公子様の凄さをわたくし以上に知る者はいない。
何よりも、わたくしがもう公子様の虜になっているのだ。
公子様は、わたくしがインテリジェンスの一員であっても他の方と全く分け隔てなく接してくださる。本当に懐の深い方なのだ。
今回の一連の事件は、公子様が仕組んだのではないかと疑うほど鮮やかな手並みだった。
女の子の命を救い、他国の陰謀を鮮やかに回避してみせる。
嗚呼、これほどの天才が存在しているなんて。感動しかない。鳥肌がたってしかだがない。
しかし、リールセラート王国の暗部は想像していたよりも優秀なようだ。亡国の姫など簡単に消すことができるはず。つまり意図的に我国に追いやり住まわせたと言うことだろう。
そして我国の次期最高戦力になる筈の公子様の名声を貶めようとの工作であろうことは疑いようもない。
こうやって全てが明るみに出てしまうとあまりにも危険な手だ。しかしある意味とても効果的な方法と言えるだろう。
亡国のお姫様は、国を追われただけでなく陰謀に利用されたのだ。
しかし、この鮮やか過ぎる解決を見ると公子様は、全てお見通しだったのではと思われる節がある。
わたくしは、チラリと女執事のリビエラ様を見た。
リビエラ様もリールセラート王国の陰謀は理解できているはずだ。
微かにリビエラ様が頷かれた。思うようにやれとのご指示だ。
わたくしは無言で心の中でガッツポーズを取った。ようやく公子様にご恩返しができるのだ。
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次回は、お昼に掲載予定です。