033ー1 エデンバーグ子爵家エーメラルダ嬢
今回は、少し長くなったので二つの話に分けました。連続して掲載します。
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《エデンバーク子爵家、エーメラルダ嬢の視線》
わたくしは、エデンバーク家の出身だ。つまり学術尚書の家系である。
インテリジェンスなんて格好の良い言い方だが、平ったく言えば殺し屋の家系だ。
本来は、人様の困った情報を、収集してそれをネタに色んな工作を行う。そんな人から嫌われる仕事が我が家の代々の仕事なのだ。
わたくしがテンシラーオン公爵家にご奉公に上がったのは、国王陛下からの直々のご命令があったからである。
王家よりも権力があると言われるテンシラーオン公爵家の動向を探り、謀反の兆しがあれば知らせる。それがわたくしに課せられた使命である。
もちろん、わたくしの出自を考えれば、わたくしの影ながらの仕事など秘密でもなんでもなく誰にでも直ぐに想像できてしまうであろう。
わたくしは、ご奉公に上がる前から敵認定されていたと言うことだ。
こんなわたくしなど誰も相手にしてくださらないと覚悟していた。いやそれどころかいじめられるに違いないと思っていた。
最初の公子様の出会いをわたくしは、鮮明に記憶している。
「え? インテリジェンス? それってどんな仕事なの?」
未だ幼かった公子様は、無邪気にそのようにご質問なさっていたのを今でも覚えている。
わたくしを連れて来て公子様に紹介してくださった父上は、そんな質問をされても平然としていたのはさすがだった。
「私共の仕事は、あらゆる情報を集め、分析して国家への影響を測るという極めて重要なお仕事を任せられています」
父上はそう説明した。恐らく何度も説明してきたのだろう。澱みなくスラスラと答えていた。
わたくしは、助かったと思って父上に黙礼を送った。
「情報を扱う仕事。インテリジェンス。なるほど。各国の様々な情報だけじゃなくて、あらゆる情報を分析するんだね。名前の通りとても利口な仕事だね。エデンバーク卿は、利口な人達の親分って訳だね」
それを僅か8歳の公子様が仰ったのだ。
嗚呼、やはりここ方は、わたくしのことを全て教えてもらって知っておられるのね。
でも、本当にわたくし達の仕事の本質をこのお歳で理解されているよう。信じられないほどにご聡明なのだわ。
「よろしく。エーメラルダ嬢。僕の情報も国のために正確に伝えなきゃダメだよ」
そう付け加えられた言葉に絶句した。
なに?
情報を正確にって、これって意図的に有利になるように情報を操作しろってこと?
「仕事は仕事。私事は私事。公私を分けていれば君は天にも誰にも恥じなくても大丈夫。なかなか辛い立場だけど僕が守ってやる。たとえ、僕が不利になる情報でも正しく伝えないとダメだよ」
へ? は? なに?
わたくしにはレリトニール公子様の真意が分からずただただ混乱した。
しかし、後になって父上から公子様の真意を説明していただいて公子様の懐の深さに感動したのを今でも忘れられない。
父上は、こう仰ったのだ。
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