029 戦闘爺屋
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「うぬ? お前達は何者?」
ただならぬ迫力が俺に注がれている。
どうやら目の前の爺さんからのようだ。
剣王アイリスが俺に無遠慮に殺気を放ってくる爺さんを成敗しようとして首を刎ねようとした。
おい! なんでそんなに躊躇なく人殺しするの? やめて。
俺は慌てて、剣王アイリスの剣尖に手を伸ばしてむんずと摘んだ。
ふう。 紙一重で止めた。
何度も見た、斬撃を飛ばす剣王のスキル『斬撃龍破衝』だ。
しかし、この爺さんも只者ではない。俺が立ち塞がるドアの僅かな隙間からの無理な斬撃を飛ばす攻撃だったものの放ったのは剣王である。
実際には斬撃は発動しなかった訳だが、その斬撃を見事に見切りギリギリのところで躱しているではないか。
そもそも斬撃が飛んできて爺さんの首をちょん切るなんて初見でどうして分かる。
斬撃が飛んでこないので身構えていた老人は、怪訝な顔になっている。
それから俺が剣の先を摘んでいるのに気付き、何も起こらないと見た爺さんは、俺達の方に近づいて来つつアイリスの剣尖を摘む俺の指先と俺を交互に見て目を見開いて驚いていた。
「何者だ? お前達」
老人は、掠れた声で聞いた。
「突然、訪れ。いや斬撃で申し訳ない。アイリスも威圧を受けた程度で早まるな」
「公子様に威圧など、万死に当たります。公子様、わたくしの剣の先を摘むはおやめください。さっさとその骨ジジイを切り刻んで短冊にしてスッキリさせましょう」
恐らく無理に剣を動かせば、俺が怪我をすると思ったのだろう。今度はアイリスまで闘気を放って対抗しようとした。
爺さんの威圧とアイリスの闘気が物理的な現象を引き起こし火花が散った。漫画みたいで少し面白い。
いやいや、これダメなやつでしょ。
剣王や目の前のこの爺さんのように威圧や闘気を放つ者は普通の人じゃない。魔法でもあるまいし、気合いで相手を倒す術を持っているという少しやばい人達なのだ。
『威圧』は戦士系のジョブの者が放つことができる相手に物理ダメージを与えつつ自身の防御力を高めると言う万能なスキルである。一方のアイリスの『闘気』は剣士系のジョブの者が放つことができる同系のスキルだ。
達人と称される者のみに許されたスキルであり殆ど全てのスキルを持つ俺ももちろんレベル3だが持っている。
魔法を極めるも武術を極めるも行き着く先は同じ化け物となるわけだ。
この目の前の老人もアイリスと同じく化け物の領域に足を突っ込んでいるのだ。
火花が次第に本格的になり出したので俺は仕方がなく、後ろを向いてアイリスの額に手を伸ばすとその美しく白い額を優しく撫でつけた。
俺が撫でつけたのが相当痛かったのかアイリスは涙目になって額に手を当てた。涙目でなぜか少し嬉しそうだ。
「アイリス。やめろと言ったぞ」
めだ。め!
少し睨みつけると、なぜか頬を染めて喜んでいるので少し呆れる。
だめだこいつ。
少しため息を吐いて眉を顰めると途端に慌てて頭を下げて謝った。
「すみません。すみません。すみません」
コメツキバッタになった。
謝ると途端に可哀想になる。頭を撫でてやる。
よしよし。
急にしおらしくなって嬉しそうに微笑んだ。
なにこの可愛い生き物。
ほっこりする俺。
そんな中、未だアイリスに向けて威圧を放ち続けている老人に向き直り俺は言った。
「老人も、少し気を落ち着けてくれないか。これでは話にならない」
「ん? あ。すまん。つい久々に本物の剣気を浴びて嬉しくて興奮しちまった。こりゃやっちまったか」
老人も悪さが過ぎたと恥ずかしそうにして威圧を放つのをやめた。
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