028 麗しいのメーラシア嬢
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「ここだよ」
ミーチャちゃんは、とある下町の長屋の玄関の前で立ち止まった。そして指差して言った。
前世の記憶がある俺にはなんでもない下町の光景が広がっている。この長屋は小さいと言っても小綺麗な方だろう。
しかし、身分の高い嫁候補達には、見たこともない下町のはずだ。
更に言えば、下町の人々は綺麗に着飾ったお姫様達がゾロゾロやってきて何事と思っているだろう。
場違いな俺達の突然の侵入は完全に近所迷惑のはずだ。この付近の住民の皆さんには悪いことをしてしまった。
大勢で押しかけたら迷惑だよと言って嫁候補だけに限定したのだがそれでも多過ぎた。
貴族のお姫様達をゾロゾロ引き連れて歩く馬鹿な若旦那を地でやってる気がするのは気のせい?
ミーチャちゃんが早く入りたそうに俺の手を引っ張ってきたので、俺は意を決して言った。
「ごめんください」
この世界での下町の作法なんて分かるわけがないので日本風に入ってみた。
玄関を開くとそこは土間だった。これは前世でも見た事がない風景である。床などは無く、地面に藁が敷いてあるだけの質素な佇まいだ。
「どなたかな?」
若い女性の答えを想像していたが帰ってきた声は老人の声だった。
「爺や誰?」
奥に別の部屋があるのか、そこから女性の声がした。
ミーチャちゃんが俺の手を離して俺の横から中に入って行った。
ミーチャちゃんは、お爺さんも押し退けて土間の中を進んで、子供らしく遠慮なしに女性とこちらを遮っている引き戸を勢いよく開いた。
引き戸の向こうの部屋の中には目も醒めるような美しい女性が寝床から半身を起こそうとている姿が目に入った。
女性の寝巻き姿の艶かしさに俺はドキドキした。
ミーチャちゃんは構わずその女性の胸に飛び込んだ。やはり怖かったのだろう。
それを女性が優しく受け止めていた。どうやらこの女性がメーラさんのようだ。
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