292 レベル4星系級の神
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《天の視点》
ノアは月の世界に限らず、太陽星系において、最高神であると自負していた。
なぜなら彼の『定理の強制』のレベルは4で、ここ太陽系程度なら彼自身の能力だけで思うがママにできるからだ。
それ故に彼のような神を星系級の神とも言う。
ノアは、ジャストフットの神々の中でも相当に高位であり、言い換えれば彼はジャストフットの貴族神だった。とは言え多くの星系を支配するジャストフットにおいて最高の神様と言うわけではなく単なる辺境の星系の司令官に過ぎないとも言えた。
そしてノアは辺境の太陽系に赴任させられたことに不満を持っていた。
セレスが月にやってきたと知った時、ノアはこの忌々しい衛星や目の前に広がる醜い惑星ガイアを滅ぼせる好機だと心の中で小躍りしたのだった。
そんな理由があったためノアは、セレスを好きにさせていたが、もちろんセレス側の動きを探る事は忘れていない。
レリトニール達が月に降りて攻撃してきたことも知っていた。
「しかし、大した強制力も持たぬ半端な神のくせに我々を攻撃してくるとか笑わせる」
ノアは嘲笑するように言った。その時だった。彼の部屋のどこにも存在しないはずのドアからノック音がした。
恐らくそんなことができるのは秘書のサンの仕業だ。
太陽星系に中央から赴任させられているのはノアだけではない。
サンは彼の秘書であるが言い換えれば副司令官だ。サンの能力はその家柄から想像すると相当高いはずだ。
サンの実家は、ジャストフットの大貴族ミトス家の家系で中央で大きな勢力を誇っている。どうしてこれほどの大物貴族の令嬢がこのような辺境に来ているのか不思議でもあり警戒すべき相手でもある。
彼女を招じ入れると秘書のサンがどこからともなく入ってきた。
「閣下。おやすみ中すみません」
サンが優雅な仕草でお辞儀をしつつ言った。
「どうした」
「はい。セレスからガイアの民が月に降りて来ました。それだけでなく大暴れしておりました。『定理の強制』が働き被害は皆無でしたが騒ぎを起こして女神を助けようとしたと推察されます」
「分かっている。今、奴らはA区画に隠れている」
「やはりご存知でしたか。しかしA区画に彼らが逃げたことまで知っていたのですね。彼らを始末させましょうか?」
秘書サンは感情のこもらない声で尋ねた。事務処理を淡々と実行する有能な女性職員のようだ。
ノアは、サンの言葉を聞いた直後に、古いジャストフットの醜い姿からガイアの貴族風の男に姿を戻した。
「私が彼らに会いに行くよ。君も一緒に来るかね?」
ノアが尋ねた。
「ご一緒します。その方々に少し興味を持ちました」
珍しくサンの声に力が入っていた。
二人は共も連れず何の用意もせずにレリトニール達のところに転移していた。
彼らがそうした裏に、強力な『真理の書替』の権能が働いていたのだが彼らがそれに気付くのは少し後の事だった。
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