274 セレスとの邂逅(かいこう)
本日2話目です。
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《レリトニール公子視点》
壮大な眺めだ。
シェーハさん達女神様の言うことには、ここは天界の中でも一番下に位置するのだそうだ。
下と言うのは比喩だ。
なぜなら一番上は地球側、一番下が宇宙側なので見方を変えれば一番上と言ってもよい。
そこからの眺めは最高だった。
足元には天界が広がり、さらに下には地球の姿が見えた。
ただ、この惑星は地球のはずなのに大陸の形は全く違うものになっていた。ユーラシア大陸もヨーロッパ大陸もアメリカ大陸もオーストラリア大陸も存在しない。もちろん日本もね。
こんなに地形が変わるなんてどれほど時間が経過しているのか? それともここはやはり異世界なのか? まぁ、ガイアが嘘を吐いても仕方がないので地球なのだろうが、あまりの代わり方に異世界と言っても良いのだろう。
そもそも神様なんて存在したり魔法があったり地球とは全く様変わりしているので今更だけど。
さて、足元の地球はともかく、宇宙だ。
真っ暗な宇宙。
そこにはすぐ目の前にあるかのような月の姿が暗黒の宇宙にクッキリと青い姿を見せていた。
これも前世の地球からの光景と全く違うものだ。
テラホーミングされた月は地球の小型版だった。
「綺麗だ」
「ええ。ルナ様の星」
「ルナ様って?」
「はい。月の女神様。ガイア様のお妹君様です。それは美しい女神様です。わたくしもこの世界に逃げてきた時に少し間だけしかお目に掛かっておりませんが」
「へえ。ガイアがあんな姿なのに妹のルナ様は美しい女神なの?」
俺はシェーハさんの説明に興味を持った。
「はい。ルナ様は可愛い生き物が大好きでガイア様はあのようなお姿になられたと聞いております。白はルナ様の色なので黒になられたと聞いておりますが今は白いのですよね」
ほう。ガイアはシスコンらしい。それほど可愛いのだろう。
「行ってみたいな」
俺がポツリと呟くと
「いえ。あそこはジャストフットの巣窟となっているそうでから。お可哀想なルナ様は囚われの身に」
シェーハさんが悲しそうに説明してくれた。
「はあ? モーフの奴。妹を人質に取られてるくせに眠ってたの?」
俺は大声をあげた。それは捨てては置けない。ルナ様の救出。俺の心の中に新たな目標が刻まれた瞬間だった。
ん? あれは何だろう?
俺たちは天界と呼ばれるが、恐らく巨大宇宙船の先端にいるはずだ。
そこは今までのような巨大な空間が広がる世界ではなく、体育館程度の広さの部屋で、天井に巨大な楕円の鏡のような物が置かれている。あれは宇宙船のデッキの映像などでよく見る前方を映し出すスクリーンじゃない? さらにこの部屋にはそのスクリーンを見るような配置でたくさんの椅子が設えてあった。
これってどう見ても宇宙船の操縦室? あるいは司令室? みたいなところに見えるのだ。
俺は調子に乗って一番見晴らしの良さそうな椅子(そう。キャプテンの椅子だ)に座り込んだ。しかしシェーハさんも特に注意などしなかった。
俺の椅子の前には、手に届く位置にいわゆるパネルが有った。そしてそのパネルには、はっきりと日本語で『操作パネル』と書かれていた。
操作パネルの一番上に『主電源』と書かれたところがある。
さっきからそれを押したくって仕方がない。
「光公子様。何をソワソワしておられるのです?」
リビエラ嬢はやはり鋭い。なぜ俺がやったらダメでしょってことをしたくってうずうずしていることが分かるのだろう?
「いやぁ、そこらじゅうを触りまくりたいなぁって」
俺は正直に白状した。嘘を言ってもこの人、絶対見破るに違いないし。
「ダメですよ。絶対に触らないでください」
リビエラ嬢が全力で俺の暴挙を止めようと叫んだ。
「ふふふ。大丈夫ですよ。それらの不思議な装置は長年に亘り我々天津神の者が試しに触って試していますから。どこを触っても全くなにも起こりません。
ここ天界は攻撃された時だけ自動的に迎撃するだけです」
そうなの。
「じぁ、この主電源ってのを押してみるよ」
俺は何気なくそれを押した。
俺が主電源のスイッチを押す直前にシェーハさんが「貴方はこの文字を理解できるのですか?」なんて叫んでいたが答える暇はなかった。
変化は急激だった。
天界全体が鳴動した。エンジンを稼働したかのような反応だった。
次の瞬間、天井にある丸い鏡に光が灯った。
「主電源の押下および、起動シーケンスの発動の思念を受諾しました」
丸い鏡の中に女性が現れ彼女が俺に向かって言った。
「俺に言ってるよね」
あ、俺は答えてから彼女が日本語で話しかけてきていること、俺も日本語で答えたことに気付いた。
「ごきげんようマスター。五十六億七千万年振りの起動となります。起動シーケンスが正常終了しました。指揮権をセレスよりマスターに移譲します」
「ありがとう」
あ、なんか適当に答えちまったけど、、、
「受譲の意思を確認しました。よってセレスは全ての指揮権をマスターに移譲しました。これよりセレスはマスターの命令下に入ります。ご命令を」
「えっと、、、」
俺は振り向いて直ぐ側に立っているリビエラ嬢の顔を見た。
「光公子様。先程から分からない言葉を話されていましたが、あの女性とお話しされているんですよね? だから不用意に触るなと、、、」
リビエラ嬢の顔が怖いし近い。
あゝ、そう言えば日本語で話してたんだ。リビエラ嬢には分からないんだよね。
「うんそうだね。この天界ってさぁ、本当にセレスって名前らしいよ。でさ、ここの全権を俺に渡すから命令してくれってさ。困っちゃうね。
で、どうする?」
「「「「「「「「「「はい?」」」」」」」」」」
その場にいた人が女神も含めて皆、叫んだ。
「あははは」
頭をカキカキしたが、なぜかシェーハさんほかの女神様をも含めた全ての皆さんが生暖かい視線を俺に向けてきているような気がするんだけど、気のせい?
五十六億七千万年も経つと太陽が燃え尽きて白色矮星になってしまうとか、それよりも前に赤色巨星になるので地球は飲み込まれているとか、そのな点が気になる方はご容赦ください。あくまでもギャクジャンルですので、ハードSFのような科学考証は全くされていません。
魔法ってなんだよみたいなことも聞かないでください。
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