272 国津神の蜂起
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《天の視点》
禁断の森のとある広場。そこで国津神が集まって話し合っていた。四神が帰ってこないからだ。
そこに遥かなインダスより知らせが入った。
知らせてくれたのは像神ガネーシャだった。彼は四神に参戦するべくシヴァに働きかけていたインダスの有力神だが、今回置いて行かれて怒っていた。
(単に連絡のミスです)
四神と思しき神々がインダスの神々と共に須弥山に登って行った後、凄まじい戦いが繰り広げられたと言うのである。
天が裂け須弥山が鳴動したと言う。
話を聞くとインダスのシヴァ神を始め大勢の神々が獣王国に向かっていたと言うのだ。
そうするとガイアを探しに獣王国に向かっていた四神と出会ったと思われる。
その後、何があったが不明だが、あるいはガイアと共に須弥山を攻撃しに行ったとも考えれる。
「なぜ、我々にその知らせをもたらさなかったのでしょう?」
ヘリオポリス(エジプト)九柱神の主神アトゥムが首を傾げて言った。
「お父上。それは四神達がシヴァ神の誘いを受けて抜け駆けをしたのです。直ぐに我らも参戦しましょう」
主神アトゥムの長男であるシューが言った。
「シュー。決め付けはいけませんわ」
テフヌトが息子を諌めた。
「我らヘリオポリスはインダスにくらべて国力が小さいからな。古においてはインダスと比肩できるほどの大国であったが、三皇どのの華国は最近飛ぶ鳥を落とす勢いだとか。羨ましい限りだが」
ヘリオポリスの九柱神ゲフが愚痴った。
「ゲフ殿。どうかここでは国津神の未来について前向きな発言を心掛けて欲しい」
三皇の一人神農が言った。
「神農様。父が申し訳ない」
セトが頭を下げて謝罪した。
「ブクブク、、、、」
暗闇からクトゥルフが何やら呟いたが何を言っているか良く分からない。
三皇の一人、女媧が巨大な蛇の身体を身じろぎさせた。それだけで禁断の森が鳴動した。それほどに女媧は大きいのだ。
今見えてきる女媧の姿は身体のほんの一部に過ぎない。彼女の本体は異空間の狭間に広がっているのだ。彼女の身体は計測できないほどに大きいのだ。
それは彼女の夫の伏羲も同じだ。
古き強い神は存在がそのものが大きいのだ。
神々において大きいとは力の象徴でもあるのだ。レリトニールが百万倍にでもなれると答えてアスラを喜ばせていたのそのような事情による。
意味を無さなそうなクトゥルフの言葉を感じ取った女媧は、クトゥルフに頷きかけた。
「そうだな。クトゥルフ殿。我らも須弥山に行こう。もう待っているのには飽き飽きじゃな」
女媧のその言葉で禁断の森に集結した国津神は戦いの決意を固めた。
☆
須弥山の戦いは世界に波紋を広げていた。
何しろ天界に最も近い須弥山での派手な戦いだ。遠くからでも見える。
(禁断の森は北東の端に位置するので須弥山は見えません)
《ここは、妖精王の国》
妖精王オベロンは須弥山の戦いを見て眉を寄せた。
「ティタニアよ。慈母神セイラー様が我ら妖精を天界に招いてくださると仰っていたが、世界は終末へと向かっておるのだろうか?」
「王よ。先程からセイラー様に思念を送っておりますがお答えくださいません。このような事は千年間もなかった事。
天界で何かが起こっておるのは間違いありせぬ」
「この騒ぎを無視する神はおるまい。世界中から神々が須弥山に向かっておろう。天津神と国津神の戦いが始まろうとしておる。
伝承を伝えるため我らも須弥山に向かわねばなるまい。恐らく我らは荒ぶる神々に消されてしまうだろうが、ご先祖様が伝承を伝えよと申されておるのだから守らねばなるまいよ。
いよいよ神々の黄昏が始まるのか」
☆
《アースガルズ》
(ここは世界の西北端なので、ここから須弥山は見えません)
アースガルズ山の山頂から角笛が高らに吹き鳴らされていた。
それはギャラルンホルン。終末を知らせる角笛だった。
アースガルズの主神オーディンは、戦神トールを呼び出した。
「トール。主だった神々を集めよ。四神が動いた。須弥山で激しい戦いがあり天兵が倒された。世界の様相が変わるぞ」
オーディンはフリズスキャブルと言う世界を見渡すことができる神器を持っていた。彼は四神からの呼びかけに答えなかったのは神器で情勢を見ることができるからだ。
もちろんフリズスキャブルも万能ではない。広く開けた場所を映像として見ることができるだけだ。
オーディンは、今回禁断の森を中心に見ていて四神達が須弥山に向かう様を見ていたのだ。そして須弥山で激しい戦いが繰り広げられているのを見ていた。
ただ映像を見れるだけであるフリズスキャブルは強力ではあるが、完全な理解を得ることまではできなかった。
大きな異変が起こっている。それだけが確かなことだった。
☆
それぞれの国津神は限られた情報の元で勘違いを重ねて様々に動いた。それが世界と言うものだ。
(勘違いが世界を動かしているとまでは申しません)
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