267 あれどうして消えたの?
本日3話目です。
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《レリトニール公子視点》
俺は白旗を出してそれを掲げながら、天兵軍に一人で近寄って行った。
アイリス嬢などは絶対に付いて行くと言うのを説得するのが大変だった。
白旗だが、用意が良いとか言わないで欲しい。臆病な俺はいつでも降参でにるように巨大な白旗をいつでも出せるように無限倉庫に常備しているのだ。
心許ないのは巨大と思っていた白旗だ。自分が巨人化しているためにこの白旗がお子様ランチの旗のように小さく感じてしまう。
それでも俺は白旗を全力で振って天兵達のところに飛んで行った。
あ、折れた。
ふと、自分が巨人化できるなら、白旗も巨大化できるのでは無いかと考えてやってみた。
できた。
旗の持ち手が折れた少し不格好な白旗を大きく振って天兵達に近付いて行った。
「何だお前は、そんな物を振って。何がしたいんだ」
先頭の北斗星君に言われた。
え? 白旗って神々の世界で通じないの? まぁいいや。
「これは、戦う意志がない事を示す旗です。
先程も言いましたが僕は天界のアルテミス様から天帝様達7神に協力するように言われたのです。お疑いなら天界に確認してください」
俺がそう言うと、北斗星君は馬鹿にしたように笑った。
「何を言うかと思ったら天界に連絡しろだと? そんなに簡単に天界の女神様と話せるはずがないだろう。嘘を吐くならもう少し疑われない嘘を吐くのだな。
話は終わりだ。弱そうなお前が一人でやってきた勇気だけは認めてやろう。お前があの集団に戻るまでは攻撃せぬ。
お前があそこに戻ると同時に戦闘開始だ。よいな」
「こちらは戦う意志がないと言っているのに、どうしても戦うと?」
「お前たちには、最も強い大禍津日神や三皇などの神々が見当たらぬではないか。どこかに隠れて不意打ちなどを狙っておるのだろう」
これは何を言っても聞く耳をもたないと俺は諦めた。
俺は踵を返すと皆の待つところに飛んで行った。
俺が皆のところに戻るのと同時に戦いの火蓋が切られた。
山のような燃え盛る炭火の入った火桶をひっくり返したところを想像してみて欲しい。
まさにそんなイメージの炎の攻撃が天兵から放たれた。
数えきれぬ火の玉が轟々ととどろきながら俺たちの方に迫ってきた。
俺はそれを横目に見ながら叫んだ。
「迎撃態勢、それぞれ最大防壁を。アイリス嬢は相手の攻撃を切っちゃって」
俺の叫び声が終わらぬうちに、従者たち全員が直ぐに行動を起こしていた。
賢聖天リビエラ嬢は、即座に数百千の防御結界を形成し、相手の攻撃に向けて放った。ボス部屋で何度も使っていた爆裂魔法乱れ打ちの応用である。
同時に黒聖天エーメラルダ嬢は、ブラックホールを無数に打ち出し、金聖天サスティナ嬢は、金貨をシャワーのように噴出させていた。
大聖女リリーアージュは、白魔法の絶対防御壁を広げていき、俺たち全員をその防御壁で包み込んだ。
それぞれの者達が各自の特性を活かした素晴らしい対応力を示してなんとも心強い限りだ。
そして、アイリス嬢が剣を振った。
火の玉の絨毯攻撃が真っ二つに割れて、アイリス嬢の斬撃は更に天帝の後方の空に吸い込まれて行った。
アイリス嬢の斬撃で弾幕が真っ二つに割れてアイリス嬢の攻撃に驚きざわついている天兵達の姿が丸見えだ。
アイリス嬢に叩き落とされなかった火の玉は、リビエラ嬢、エーメラルダ嬢、メーラシア女王、シュレディ、アドリュート、リージィー、エカテリーナ、ノイツ、イールド、そしてレオン王子などの従者の皆が放った防御が魔法により次々に落とされていった。
最後まで生き残った攻撃もリリーアージュ嬢の絶対防御魔法の障壁に当たると掻き消えるように全てが消えた。
俺は、驚いている天兵に向けて白旗を大きく振って戦意の無いことを示した。
「光公子様。反撃してはダメでしょうか?」
アイリス嬢が鋭く尋ねた。相当鬱憤が溜まっているようだ。しかし反撃は少し躊躇われる。どうしようか?
「少し待って。もう一度、お願いしてみるよ」
俺は皆を押し留めて、白旗をフリフリ、天兵に近付いて行った。
しかし、白旗に余り意味は無いようで構わず攻撃が飛んでくる。近付けば近付くほどに攻撃は激しくなっていく。アイリス嬢の斬撃が怖いのか、近付く俺の方が的になるのかほとんどの攻撃が俺を目掛けて撃ち込まれてきた。
俺は、飛んでくる火の玉を白旗の柄の部分を使って弾き返えしていたが遂に柄の部分が壊れてしまった。
もう、白旗も機能しなくなってしまった。これじゃ降参できないよね。
なんだか次第に腹が立ってきた。
アルテミス様との約束ももうどうでも良いいや。
この鬱憤を完全に晴らしてやる!
俺は腹の中の魔力を取り出すとその全てを両手に等分に分けて二つの球体にした。
それを怒りに任せて天兵軍に投げつけると天兵軍に衝突する寸前に魔力を広げて天兵軍全てを俺の魔力空間に閉じ込めてやった。その魔力空間を鷲掴みにすると全力で彼方に投げ付けてやった。
あれ?
天兵軍が消えたけど?
どこに行ったの?
俺がキョロキョロしていると、リビエラ嬢がやって来た。
「なんで天兵軍を殲滅した当の本人がキョロキョロしているのです?」
「あ。でも投げただけだよ」
(はい。大丈夫でした。天兵軍は天界にまで凄い勢いで飛ばされてしまっただけで皆無事でした。ちなみに天界は大騒ぎになったのは言うまでもありません)
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