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260 スパッとやっちゃってよ

今日は三話投稿予定です。


昼頃投稿します。


ブックマーク。高評価。いいね。よろしくお願いします。

《レリニートル公子視点》


 転移してみると大変なことになっていた。


 獣王国の宮殿の上空いっぱいに数えきれない神々がひしめいてやばい状況だった。


 光の洪水が巨大な渦となり、一方の神々を取り囲もうとし、それを炎の渦が阻もうとしているようだ。


 見たことも無いような大きな亀と炎の渦を吐く巨鳥が巨人達にうちかかろうとしており、赤いドレスを纏った巨大な女神が先頭で攻撃しようとしていた。


 あれ? あの赤いのなんか見たことある?


 ああ、ラクシュミー様じゃん。


 何やってるの?


 光を放って攻撃しいるのはサラスバティー様のようだ。その攻撃を受けている巨鳥は朱雀だろう。


 光と炎の衝突による轟音が雷のような耳を塞ぎたくなるような音を轟かせていた。


 俺はレオン王子を目標にして転移したので、目の前にレオン王子の背中が見えている。どうやら王子は空の神々の戦いに意識を集中しているようで俺たちの転移に気付いていないようだ。


「レオン殿下、どうしたの?」


 俺はレオン王子に聞いた。


「は? 光公子様!」


 拳聖天レオン王子がびっくりして叫んだ。


「どうしたの?」


 再度質問した。


「そんなの分からないですよ。天空で戦っているのは神々なのですよね。私がここに来る少し前にあちらの巨神達が光公子様を尋ねてきたそうです。巨神達は光公子様がいないと知ると意気消沈して帰って行こうとしていたらしいです。

 ちょうどその時に私はここに帰って来たのですが、森の方からあの亀、龍、巨鳥、白虎を先頭にした神々の集団がやって来まして、あの巨神達となんか口喧嘩になってああいう具合に。

 もう、世界の終わりなのでしょうか?」


 なるほど。


 ガイアの話では、この世界の外には強敵がひしめいていると言うのに仲間割れらしい。


 なんとも前途多難だ。


 俺は背後を顧みて、従者達の表情を見渡してみた。皆の表情は普段と変わらないようだ。


「みんな、あの戦いを見てどう感じた? あっちはインダスの神々であっちは四神達だろうね。神々の中でも最上位の神々も混ざっているようだけど、あの神々を相手に戦えそうかい?」


 改めて修行の効果を皆に確認してみたのだ。


「ええ大丈夫のようです。迷宮の最後に戦っていたボスの方が強かったように感じます」

「はい。なんか大したことありませんね。あれならなんとか」

「ふーん。どうしてあの狐程度であれほど手こずったのでしょう」


 皆口々にそんな事を言って神々の戦いを余裕を持って見られるようになっているようだ。


「本当だ。シヴァ神達や四神は皆、私よりも高い一位の神格を持つ最高神のはずなのに、二位であるわたしの方がよほど強く感じます」


 アスラ様が驚いて呟くように言った。一緒に修行して強くなったようだ。


「光公子様。次元切りやっちっても良いですか?」


 アイリス嬢が尋ねた。


「ん? でもアイリス嬢が本気で次元切りしたら神様達みんな死んじゃうよ。ラクシュミー様やサラスバティー様、その他のインダスの女神様達には当たらないようにできる?」


 入り乱れて戦う神々を見ながら俺は尋ねた。


「はい。あの一番派手な巨神を狙ってもいいですよね」


 アイリスが重ねて聞いてきた。四神達な動物系統の神々なのに対してインダスの神々は人形の巨神だ。恐らくあの巨大な男神はシヴァ神だろう。なんでインダスの主神を狙い撃ちするんだろうか?


「どうして? あの巨神を狙うの?」


「いえ。後ろから偉そうにラクシュミー様とサラスバティー様に命令されている姿に少しイラっと」


「ダメだよ。あれってシヴァ神なんじゃないの? あんな人、いや神か。偉そうに命令するのが息をするのと一緒みたいに偉いんだよ。悪気は無いんだよ」


「しかし、光公子様はもっと偉いのに決して後ろに隠れて命令なんてされません。いっそ一番前で戦われます」


「え? そんなことないよ。皆の方が強いんだから。いつも皆の背中に隠れて見てるよ?」


 臆病な俺は決してアイリスの前に出て戦うなんて事はできない。ボス部屋周回祭りでも常に前衛はアイリス達だったもんね。


 それを思い出しながら俺はが言うと。


「どの口がそんなことを言うのです? 先程も突然現れた大穴に真っ先に飛び込んだのは光公子様では有りませんか!」


 怖い表情をしたリビエラ嬢が俺の顔を睨みながら指摘した。


「リビエラさん。怖いから。落ち着いて。ひ弱な僕なんかに全力の威圧をかけたら僕確実に死ぬから」


 俺はタジタジになってそれだけ言うと、モーフだけを連れて神々の戦う方に向けて数キロだけ転移した。


(逃げたのである)


「死にません、、、あ!」


 リビエラの言葉を半分も聞かまずに転移した。


 ごめんねリビエラ嬢。


「光公子様。転移はもう光公子様だけの特技では有りませんよ!」


 あれ?


 皆が俺の後ろに転移してきていた。


 まずい。ここは話を逸らす方向に逃げることにする。全力でアイリス嬢に話を振るぞ!


「なんか。ごめんごめん。じゃあアイリス嬢。さっさと次元切りやっちゃってください」


「はい」


 嬉しそうにアイリス嬢が答えた。そう。そのノリだよ。


 リビエラ嬢が仕方ないと肩を竦めて見せた。


「もう。光公子様ったら。仕方有りませんね。じゃあアイリス嬢。あの亀さんの甲羅は硬そうだから試しにはちょうど良いいでしょう。スパッと切っちゃってみて」


 リビエラ嬢が諦めたように言った。さすがにインダスの神々への攻撃はしないつもりらしい。とは言え、こんな戦いを繰り広げられたら獣王国の人達はたまったものでは無いだろうし、さっさとやめさせないとね。


「スパッとですね。でもあの亀の神様は死にませんか?」


「上の方を少しだけ削るなら大丈夫よ」


 女性陣のなんだか怖い話を横に聞きながら俺は玄武の甲羅がスパッと行った後に全力で治癒魔法を掛けることにした。


「では」


 アイリス嬢が気合いのこもった声で皆に言うと。


 場の雰囲気が重たくなった。アイリス嬢が覚えたばかりの次元切りを世間に初披露するので、彼女は少し緊張しているのだろう。強い剣気が彼女から放たれていた。


 アイリス嬢は、剣の柄に片手を添えると、ゆっくりと身体を低くして構えを取った。


 一瞬の溜めの時間。


 次の瞬間、目にも止まらない素早さで剣を鞘走らせていた。


 ザン!


 そんな音が聞こえたように感じたが恐らくそれは空耳だ。なぜならアイリス嬢の斬撃は空間と時間を切る斬撃だ。


 音など超越している。


 そして俺には確かにアイリス嬢が玄武の甲羅を真っ二つに切り裂いたのが見えた。


 おおい! 結構真ん中をスパッと行ってんじゃない?


 俺は慌てて本体の方の玄武に治癒魔法を掛ける。


 恐らくあまりの切れ味に玄武自身も斬られたことに気付かないんじゃと思うほどの切れ味だった。


 玄武が死んでしまったらアイリス嬢は神殺しになってしまう。


 あれ? 格好いいな。


 玄武の甲羅の上の二割当たりのところが徐々にずれて行くのが分かった。


 先程まで激しく戦っていたインダスの神々と四神達だが、両陣営の皆がその異変に気付き同時に動きを止めた。


 絶対に壊すことができない厄介な甲羅であるはずの玄武の甲羅が今、上部の方と切り分けられたのである。


 誰一人、何が起こっているのか理解できなかっただろう。


「「「やったね」」」


 嫁候補達は、ハイタッチしつつ合唱するように喜んで叫んだ。


 従者達は拍手して一緒に喜んでいる。俺も従者達に習って拍手した。


 一人残された可哀想かレオン王子が目をしろ黒させて驚いていた。


 我々と一緒に来ていたアスラ様もやんややんやと喝采を放っていた。


 可哀想なのは玄武だろう。神の中でも最も守りに特化した守護神の防御の象徴とも言える甲羅がなんの抵抗もできずにスパッと切り分けられ落ちて行こうとしているのだ。


 甲羅のズレは加速度的に大きくなり遂には落ちて行った。


 そして、あまりの出来事に玄武も空中でバランスを崩して落下して行くのだった。


 死んで無いよね? そう信じたい。


「まずい。モーフ。受け止めてあげて」


 俺は慌てて叫んだ。


 モーフは俺の肩から飛び立つと、異次元の穴で出会った巨大なガイアほどに瞬く間に巨大化すると全速力で飛んで行った。


 直ぐに玄武の真下まで飛んで行くとモフモフの毛皮が更にどんどん膨れて行った。


 玄武と甲羅の切れ端は一緒になって巨大化したモーフの上に落下した。


 ボヨヨーンと二度三度ジャンプしてからモーフの上に着地した。


 俺はその様子を見てホッと息をついたのだった。


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