250 7神と四神
248話が掲載できていませんでした。今朝、248話を249話の前に差し込みで掲載しています。大変申し訳ありません。
248話は筋に影響のある話では有りませんが、良かったら目を通して頂けると嬉しいです。
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《天の視点》
レリトニール公子達が宴会をしている頃、四神サイドでは各地から続々と国津神が集まりつつあった。
なぜなら四神の呼び掛けは、時流に適っていたからだ。
ヒューマン達の勢力が拡大するのに対応して国津神達の末端達である妖や妖精などは確実に姿を消しつつあった。
神々の力は眷属と信仰者の多さに左右される。
信仰の対象が土地神から天界の天津神にどんどん移行するに従って、古き神々に対する信仰心は時代と共にどんどん薄れていた。
もはや後戻りなど起きるはずもなく国津神は消えゆく運命だと誰しもが感じるようになった。
そんな中、急激に増えるヒューマンの人口もまた、古き神々には面白く無い変化なのだった。
自分たちの信者でない何者かが増える。それは敵対勢力の拡大を意味するからだ。
面白く無い。ただ退屈なだけではない。いても立っても居られぬ、焦燥感が胸を苛んでいた。
そこに便りが届いたのだ。
送り主は、国津神の重鎮の神である青龍・白虎・朱雀・玄武の四神だった。
呼び掛けたのがこの四神であったことにも大きな意味があったのだ。
本来国津神でありながら天津神の眷属となっている神々もたくさんいた。彼等は他の国津神と比べると天津神の影響を受けて一定の繁栄をしていたのだ。そして天津神派の代表格が7神であった。
7神は、東・水(青帝)、南・火(赤帝)、中央・土(黄帝)、西・風(白帝)、北・空(黒帝)の五帝に地帝と最高神の天帝(昊天上帝とも呼ばれる)の七帝のことで、方位と属性の神々であった。
須弥山と言う山に住む天帝を代表とする強力な国津神達であり、他の国津神が衰退しているのが何かの間違いなのかと思わせるほどにヒューマンからの人気(信仰)を博し繁栄を極めていた。
一方の四神は衰退を極め、もはや伝説かのような扱いを受けているが由緒ある神なのである。東・水の青龍、西・風の白虎、南・火の朱雀、北・地の玄武と、7神と全く同じ方位と属性の神として古くは非常にポピュラーな神々であったのだ。
全く同じ方位と属性の神々がこれほどに盛衰の対極にいることで、四神は衰退しつつある神々の象徴的な存在となった。
そんな四神が呼び掛けだからこそ国津神はこぞって集まったのだ。時流、言い方を変えれば流行だ。国津神達はそのトレンドに乗ってどんどん集まって言ったのだ。
もし、ここで、南方の国津神達の主神であるシヴァ神が四神の呼び掛けに呼応していたら、東方・西方・北方の主神達も蜂起していたかもしれないのだ。
事実、国津神達はラクシュミーとサラスバティーが四神の呼び掛けに答えて参加すると聞き自分達も有力な使者を送ろうとしていたのだ。彼等が使者を送るのが遅れたのはラクシュミーやサラスバティーのような高位であるが好奇心いっぱいの適当な使者がいなかったからだ。
そうこうするうちにラクシュミー達が実際には参加していないことが知られら事になった。急な不参加の理由は何だと騒ぎになり、これには裏があるとの結論になったのである。結果として東方・西方・北方の主神達は参加を見送ったのだ。
レリトニール公子が偶然ラクシュミー達と邂逅していなかったら更なる混沌は避けられなかったのかもしれない。
☆
三日後、主神ゼリューシュの元に、四神サイドに以下の大物の神々が参集しているとの緊急の報告が入った。
◯正一位大禍津日神、正一位八十禍津日神の太陽神の2柱
◯正一位伏犧、正一位女媧、正一位農神の三皇
◯正一位アトゥムを筆頭としたヘリオポリス九柱神
◯正一位クトゥルフを筆頭とする古き神々達
主神ゼリューシュが地方の主神級の国津神が四神の呼び掛けに参戦するようなら知らせよと命じていたための急使である。
その知らせを聞いた主神ゼリューシュは、頭痛が発生したかのように頭を押さえてしばらく動かなかったと言う。
まさかこれほどの神々が謀反に参戦するとは考えていなかったのは態度を見れば明らかだった。
「これは、お知らせするべきかと迷いましたが、シヴァ様の奥方様であるラクシュミー様とサラスバティー様並びにアスラ大神の三神が四神の集まる森の近くに集合しているそうです」
主神ゼリューシュは少し首を傾げて見せてから。
「おいおい。シヴァまで敵対する気なの? こいつらの集まってると言う場所って? はあ? レリトニールが訪れているって言う獣王国の宮殿じゃねぇの?
あいつらまで四神側に味方するって言うなら、全面戦争にならざるを得ないぜ」
主神ゼリューシュは、顔を蒼白にしてこれまでにないくらい厳しい顔になっていた。
(むしろあんたの怠慢のせいでもう全面戦争になっている)
「お父様。ラクシュミーさんとサラスバティーさんのお二人がレリトニールちゃんを尋ねたようですがレリトニールちゃんは、謀反するつもりありませんよ」
いつもレリトニール公子の様子を伺っている(ストーカーとも言う)アルテミス神が即座に答えた。
「ん? そうか。あいつは白なんだな。驚かせんじゃねぇぜ。ほっとしたよ。とは言え思ったより大事になりそうじゃねぇか。なんか面倒な奴らがよくも集まりやがった。
こりゃ、7神だけでは心許ないか。仕方ねぇな。魔法神カーラー、戦神アート、火神イーディン、水神サーシャの四神に天帝ら7神を支援させるようにしようかな。
アルテミスよ。もし可能ならあの野郎にも手伝わせろや。褒美に天界に来ることを許してやるから」
偉そうに言う主神ゼリューシュの顔にはそうなったら心強いなぁって希望がありありと見えていた。
「え? お父様。本当ですか? レリトニールちゃんが天界に入ることを許して頂けるんですか?」
「手柄次第だよ。只働きなんて真似はヒューマンじゃあるまいししやしねぇよ。俺は公平でたとえ自分で決めた規則でさえ破ったこたぁねぇよ」
「うーん。お父様。今までのレリトニールちゃんの特別扱いを棚に上げてどの口が仰ってるんです?」
「はぁ? 知らねぇよ」
「空口笛などやめて真面目に答えてくださいまし。今度こそ約束は絶対に守ってもらいますからね」
アルテミスの叫び声が天界に響きわたったのであった。
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