247 美の女神
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それは天界の美の女神アルテミス様からの呼びかけだった。
《レリトニールちゃん。お話が有ります》
俺は慌てて答えた。
「はい。何でしょうか?」
《今、国津神と会ってますよね》
「ええ。アスラ大神様とラクシュミー様、サラスバティー様の眷属の女神様達です」
《なんですって? そのよう大物の国津神と会っていたのですか?
今、あなたのいる獣王国の宮殿の近くの森では青龍、白虎、朱雀、玄武の四神の呼びかけで天界に謀反を企てようとする国津神がたくさん集まっているのをご存知ですか?》
「アスラ大神様がそのようなことを申されていましたので大体知っています。それとたくさんの神々が空を飛んで森に入っていかれるのを見ました」
《そうですか。これは国津神の体制が大きく変わったために起きていることなのですが。
国津神の中には我々と戦ってでも天界を取り戻したいと考える神がおられるのです。今回レリトニールちゃんには彼らに加担しないようにお願いしたのですが。いかがですか?》
「はぁ。そんな気は全く有りません」
《良かったですわ。須弥山では7神が集まって国津神との対決に向け準備中ですし、このままでは大きな争いに発展しそうなのです》
「そうなんですか?」
《はい。そこにいるラクシュミーさんやサラスバティーさん達にも戦いに参加しないようにレリトニールちゃんから頼んでみてください。彼女達が参戦するのとしないでは大きな違いがあります》
「やはりラクシュミー様、サラスバティー様はそれほど偉い女神様達だったんですね」
《はい。彼女達が動けば南界のシヴァ様が動かれますし、そうなれば西界ゼウス様、北界オーディン様、東界の天照様などの有力な神々も静観されてはおられないでしょうから》
「なんか世界大戦みたいですね」
《その通りです。ですからレリトニールちゃんからラクシュミーさんとサラスバティーさんにくれぐれも自重してくださるように説得してほしいの》
「はい。大した力にはなれませんけど頼んでみます」
《ありがとう。なによりもレリトニールちゃんと戦うようなことにならなくって本当に良かったわ》
「あははは。アルテミス様に歯向かうつもりなんて全くありませんよ」
《ありがとう。ではお父様、ゼリューシュもですか?》
「え? 主神ゼリューシュ様ですか? もちろん逆らうつもりなど毛頭ありませんよ。でもモブなんて職業しか頂けなかったから、感謝もしてませんが。それではダメでしょうか?」
《いえいえ。大丈夫ですよ。お父様のことを好きになれなくても憎く思っては欲しくありません」
「憎く? そんなつもりはありませんよ。モブについては言いたいことも有りますが」
《そ、そうですよね、、、、あははは。でも憎く思っていないと聞いてホッとしました。もし良かったら今回の国津神との戦いで私たちの味方をしてくれれば更に嬉しいのですが?》
「味方ですか? いつもお世話になっているアルテミス様のお役に立てるであれば応援しますが、僕にできることなど有るのですか?」
《いえ。できることをして頂いたらいいのですよ。レリトニールちゃんがいる獣王国からですと西南に行けば須弥山と言う世界で一番高い山があります。そこには先程も言いましたがお父様の部下の天帝、黒帝、黄帝、白帝、赤帝、青帝、地帝の7神が集合して戦いの準備をしています。
良かったらレリトニールちゃんも7神に混じって国津神と戦ってもらえないかしら?》
「はあ。僕如きが神様同士の戦いに参加しても何ほどの事もできないでしょうが、従者とともに少し鍛えてから参加したいと思います」
《ええ? まだ鍛えるのですか?》
「もちろんです。今回ばかりは自分の実力の無さを痛感しましたから」
《あら? 何かあったのですか?》
「はい。かくかくしかじかです」
《なるほど。それはそれは。レリトニールちゃんはさすがね。怒りのコントロールはなかなかできないものよ》
「いえ。今回は頭に血が上り前後が見えなくなって反省しております。高貴な神様であるラクシュミー様やサラスバティー様の他、大勢の女神様にご迷惑をかけてしまったようですから」
《そうね。でも思い切ってラクシュミーさんやサラスバティーさんと戦うと言う選択肢は無かったのかしら?》
「もし、ラクシュミー様がアイリス嬢を殺そうとしたのなら命をかけて戦うつもりでした。
しかしラクシュミー様もサラスバティー様も最初に手を出そうとされた時以外にはそのような雰囲気は全くありませんでしたし」
《レリトニールちゃんはそう思ったのですね》
「はい。一瞬アイリス嬢を攻撃された時は驚いて頭に血が上りましたが、まさかあれがラクシュミー様の本気の攻撃とはとても思えませんでしたし。
後で考えればラクシュミー様の温情で手加減してくれたからアイリスの頭を割られずに済んだのだと思います。もし本気で戦っていたらと思うと背筋が凍りそうです」
《あらそうなの? わたくしにはラクシュミーさんが手加減したとは思えないですが。
背筋が寒かったのはラクシュミーさんの方な気がしますわよ》
「またまたご冗談を。ラクシュミー様の寛容な心のおかげで今回は何事も無く終われて本当に良かったです」
《あらそうなの。レリトニールちゃんがそう思っているならラクシュミーさんもサラスバティーさんもとても喜んでいるんじゃなくって?》
「さすがアルテミス様。何もかもお見通しですね。ラクシュミー様もサラスバティー様も今回のことを無かったことにしてくださることにとても前向きなんですよ。
とても快諾してくださいました。本当に気の良い女神様達です」
《あの気難しい女神達を気の良い人達って、、、彼女達の置かれた立場なら快諾するしか無かったでしょう。むしろ死者が生き返れたほどの喜びに身を震わせていたはずよ》
「あはは。アルテミス様は大袈裟ですね。さすがにそれほどでは無いでしょうけど」
《む。わたくしはいつも正直で真面目な女の子よ。それよりもレリトニールちゃんは、女神達の誘惑には絶対に靡いちゃダメよ》
「まさか。女神様が僕なんかを誘惑する訳がありませんよ」
《自分たちの住む宮殿に誘ったりしなかったかしら?》
「はい。お誘いくださいました」
《はぁ。本当にラクシュミーさんもサラスバティーさんも人妻のくせに。いやらしいんだから。レリトニールちゃん。それが誘惑なのよ》
あれ?
なんか急に怖くなった。いつも優しい女神様なのに。
《良いこと。レリトニールちゃん。女神は皆、古狐ばかりと思って近づいちゃダメよ》
なんか逆らってはダメだと思わせる迫力が、、、、
「はい。分かりました」
俺は直立不動でアルテミス様の命令に従うと誓った。それ以外の選択肢は存在しなかった。
☆
「光公子様。光公子様。どうされたのです?」
俺はリビエラ嬢の呼びかけに我に返った。
「あ。ごめんごめん。アルテミス様と話してたんだよ」
「なんですって? アルテミスって天界の?」
サラスバティー様が驚いて尋ねた。
「はい。アルテミス様には昔からとてもお世話になっています」
「、、、、はぁ。処女神の癖に光公子様に色目を使うなんて、、、、」
サラスバティー様が良く聞こえ無かったが何か呟かれた。
「なんですか?」
「いえいえ。なんでも有りませんわ。ふふふふ」
サラスバティー様が妖艶に笑われた。純白のドレスの大きく切り開かれた胸元が大きく揺れているようだが視線を向ける勇気はなかった。
「光公子様!」
リビエラ嬢が耳元で強い口調で叱ってきた。
見てませんよ?
なぜかリビエラ嬢の視線が厳しい。
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