237 伝承の神々
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《天の視点》
「フェンリル。アンタ良く分からない奴にコテンパンにされて逃げ帰ってきたらしいわね。九尾もガイア様の幼体に手玉に取られたんですって?」
フェンリルと九尾の大狐は、不満なのか答えようともしない。
質問したのは彼らの前の一匹の巨大な龍だ。
龍神アオ
国津神の代表すべき存在だ。伝承によると海を支配する神の一柱である。
余りにも古い伝承である。なぜなら彼女もガイアと同じく長らく寝ていたからだ。
「アオ姫。この子達をからかってやるな」
優しい声で二人を庇ったのは、真っ赤な大鳥だった。
朱雀シュ
彼も長き眠りを目を覚ましたところだった。
「九尾の子狐。何があったか説明せよ」
白虎ハク
巨大な虎が雷鳴のような声で尋ねた。
「ハク様。ワチキはガイアが幼体になったと知ったので餌食にするため向かったのでありんす」
「九尾狐。ガイア様はどうしておられた?」
最後に尋ねたのは玄武オウだ。
四柱の大御柱が揃うと壮観としか言いようがない。
それぞれが山のように巨大でもあり、神格の高さゆえにあまりにも神々しく光輝いて見える。
「それが想像とは違う姿で、ワチキにも本当にガイアと言って良いのかわかりんす」
「そうなのですか? どんなお姿でした?」
玄武オウが重ねて尋ねた。彼女は木属性、土属性の神なので他の三柱とくらべてガイアへの憧れが強いのかもしれない。
「はあ。ガイアはなんか丸くってモフモフしていたでありんす」
「ん? モフモフ? 丸っこい? 見てみたい」
玄武オウは目を輝かせて言った。
「したが、今代のガイア様の後見はどの神が?」
神龍アオが独り言のように聞いた。
「フェンリルを子供扱いしたと言う神か? フェンリル。その者の特徴は?」
「普通のヒューマンにしか見えなかったぞ。しかしあの強さは四神のアンタ達を超えていたぞ」
フェンリルは、思い出しただけで震えそうになる。
「ほう。それは聞き捨てならぬ」
雷鳴のような声で白虎ハクが吠えた。
「へえへえ。降参。でもアンタにいくら吠えられても震え上がりゃしねぇよ」
フェンリルは、グルグル唸りながら言った。
「狼の。虎の。やめておくれ。それが我ら国津神の悪いところ。せっかく楔だったガイア様が幼体になられ、我らもこうして目覚めて本来の力を発揮できるようになったのだ。この好機に国津神の総力を集めて天津神に戦いを挑もうと世界中の強き神々を集めようと話していたところなのに。
可能なら幼体のガイア様を説得して主戦派になってもらい、そのガイア様の後見の大神にも助けてもらえたらなお頼もしいのではないか?
お主たちもガイア様の幼体を餌食するなどとセコイ真似は謹んおくれ。天津神の下級神を餌食にすれば良かろう」
「はあ、天津神の下級神か、それはうまそうでありんす」
九尾の大狐が涎を垂らして言った。
「で? どの大御柱を呼ぶ?」
「暴風神アシュラは外せぬ。冥神ハデス。魔神ヘル、、、」
伝承では悪神邪神とされていた神々の名前が次々と上げられて行った。
「そんな方々が集まれば天津神の奴らも」
フェンリルが熱に浮かされたように呟いた。
「そもそも国津神の温情で天を分けて貰いながら地上にまで細々とくちばしを突っ込んでくる。奴らのせいでヒューマンは調子に乗り、八百万の神は棲家を奪われて小さき妖精と成り果てた。
これで本当に良いのか?」
朱雀シュが皆を見回しながら言った。
「変えねばならぬ」
答えたのは本来温厚な玄武オウだった。
「「「「そうだ」」」」
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