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235 大丈夫、見えてませんよ

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《剣聖天アイリスの視点》


 こいつ、強い!


 わたくしは、神速技で次々と剣を振るったが、その悉くが空を切る。


 九尾の俺狐は、華麗に舞うように、わたくしの剣を避けた。更には余裕でこんなことを言う。


「ふむ。ソナタなかなかやるのでありんすな。その剣は神剣でありんすか?」


 これほど攻撃しているのに余裕なことだ。


 わたくしは、心眼を開き相手の動きを先読みした。そして予測したところに斬撃を放った。


 これこそわたくしの必殺の技なのだが、それすらこの九尾の大狐は避けた。


「ヒュー。凄い凄いでありす。避けた筈なのにその避けた先の頭を切るなんてソナタ、本当に何者でありんすえ?」


 凄いのはお前の方だと言ってやりたかった。


 しかし話す余裕がない。明らかに実力差があるのが感じられた。


 ビュッ!


 大量の金貨が九尾の大狐に向けて投じられた。


 サスティナ嬢の支援だ。彼女は金貨を手裏剣のようにして戦う。


 冗談のような攻撃だが馬鹿にできない。命中率も破壊力も通常では考えられないような効果を発揮するのだ。


 サスティナ嬢によると、お金そのものに特別な意味があるため、威力が高くなるのは当然なのだと言う。


 広く無数に投じられた金貨の攻撃は物理攻撃と魔法攻撃さらには特殊攻撃の三要素を含んでいるのだそうだ。あれはわたくしでも避けるのは無理だ。


 さすがの大狐も大きく空中に跳ね避けることでしか身を躱すことが出来なかったようだ。


 大狐と距離が離れたことでようやく一息ついた。


「広範囲魔法を放ちます。消滅の惨禍イクスティオクラディス!」


 賢聖天リビエラ嬢が宣言するのが聞こえた。


「続いてブラックホール放ちます」


 黒聖天エーメラルダ嬢も必殺の魔法を放つと言った。


神聖なる煉獄刑サクラムパガトリウムポエナ放ちます」


 白聖天リリーアージュ大聖女も最上位白魔法を放つと宣言した。


 最初に賢聖天リビエラ嬢が放った魔法が発動した。それは薄い白色の炎だった。賢聖天は、あらゆる属性が使える万能魔法の使い手でる。


 超難易度の魔法を簡単に構築して使用するのが素晴らしい。


 九尾の大狐は巨大な魔法陣が形成された瞬間に更に空高くに身を引いたが、賢聖天の魔法は、それを覆い隠すほどの巨大さに膨れ上がっていった。


 その時、九尾の大狐の背後に小さな黒点が発生。ブラックホールのコアだ。


 さすがの大狐は、小さなその黒点の本当の恐ろしさを理解したのだろう。大狐の背後で凄まじい戦いに目を白黒させていた妖狐を口に咥えると反転し、大きく弧を描いて我々に向かって来た。凄い速度だ。


 しかし、大狐が進む方向に、真っ白な壁が発生した。リリーアージュ大聖女様の魔法のようだ。


 この魔法は相手を牢獄のような部屋に閉じ込めてしまう魔法だとリリーアージュ嬢から聞いたことがある。白魔法最高峰の魔法だと言う。


 大狐は、その壁から身を引いた。凄い運動能力だ。


 そしてチラリと我々の方を見た。


 金聖天サスティナ嬢が新たな魔法を発動させようとしているのが気配でわたくしにも分かった。


 三方からの攻撃と、新たな大魔法が発動されようとしていることに九尾の大狐は、一瞬だけ険しい顔をしたが、すでに意識すら失ってしまった大狐の口に咥えられた妖狐に意識を向けると観念したのか姿を消した。


 転移したのだ。


 その時わたくしの背後から声がした。


「済まなかったのじゃし」


 モーフ様が意識を取り戻したようだ。


「モーフ様。気付かれたのですね。良かった」


 わたくしが背後を見ると可愛いらしいモーフ様が空中にふわふわと浮いているのが見えた。


 見ると賢聖天リビエラ嬢、大聖女リリーアージュ嬢、黒聖天エーメラルダ嬢、金聖天サスティナ嬢の四人の皆さんが地面にへたりこんで肩で息をしておられた。


 それほど皆さんが全力で戦われていたと言うことだ。


 九尾の大狐。


 本当に恐ろしい相手だった。


「良かった。あの魔法はうまく発動するか不安だった」


 ぽつりと賢聖天リビエラ嬢が呟くのが聞こえた。


 賢聖天つまり魔法のスペシャリストである彼女が発動するか怪しいような大魔法を放ったのだと言う。


 どれほどの魔法だったのか。今は皆の魔法はキャンセルされているのでリビエラ嬢の魔法がどんか魔法だったのか不明だ。


 いつも冷静でテキパキとした彼女が地面にへたっているその姿こそが今回の危機が相当に危ういものだったと言うことの何よりの証拠だろう。


 その姿を見ると恐ろしさが一層増してくる。


 エーメラルダ嬢もサスティナ嬢も同じように地面に手を付いている。本当に緊張していたのが分かる。


 そして、最もお疲れの様子なのは大聖女リリーアージュ嬢だった。


 いつもは深く被っているベールを後ろに跳ね除けて、女神かと見紛うような美しい顔を曝け出されている。


 大きく肩で息をされて相当に苦しそうだ。


 わたくしは慌てて彼女の足元に駆け寄りお召し物の裾を正してから一息ついたのだった。


「大丈夫」


 何も見えてませんよ

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