233 ソチはどこの神かえ?
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《リビエラストの視点》
わたくしがモーフ様の言葉を反芻していたら光公子様が意を決したように言った。
「でも黙って見ていられないよ。ちなみにそのオオカミの祟りを受けたら僕でも危険なの?」
「そうじゃな。オオカミ如き小物の祟りなど大聖天様に影響を与えるとは思えんのじゃし」
「そうか。分かった。じゃ僕はあの雲の下の人達を助けに行ってくるよ」
レリトニール光公子様は、それだけ言うと姿を消して転移して行った。
後に残されたわたくし達は、またかみたいな雰囲気で消えた光公子様の方を見た。
「うむ? 祟り神がこの国にも舞い降りてきようじゃし」
モーフ様が空を見上げながら言った。直後に空が真っ赤に染まった。
それを見上げたモーフ様は、可愛い目を釣り上げて。
「なんとワシがここにいるのじゃし。それを気にも止めずに火を降らせてくるとは許せんのじゃし。小娘め、お尻が赤く腫れ上がるまでお仕置きしてやるのじゃし」
モーフ様もそれだけ言うと姿が消えた。転移して行ったようだ。
「リビエラスト様。いかがいたしましょうか?」
空が真っ赤に燃えている。火の勢いはどんどん増しているようだ。
「モーフ様が行かれたのだ。大丈夫でしょう。しかし何があるか分からないので皆で待機よ」
わたくしはそう言いながら空を見上げた。
空の色はますます赤さを増しているようだ。
ここまで行くと空の異変に気付いた者達が空を見上げ、悲鳴を上げて逃げ帰って行き、街は大騒ぎになった。
その時、遥かな上空で眩い閃光が走り、ドドーンと耳を塞ぎたくなるような大音響が響き渡った。
空の上で何かが起こっているようだ。
「リビエラスト様。あれは何でしょうか?」
そう言ったのは目の良い黒聖天エーメラルダ嬢だった。
黒聖天エーメラルダ嬢の指差す方を見ると、空から何かが落ちて来ているようだ。
わたくしは瞬時に遠視の魔法を発動して落ちてくる物を見た。
「ん? あれはモーフ様? 皆厳戒態勢!」
わたくしの叫びにアイリス、リリーアージュ、エーメラルダ、サスティナの四人は身構えるだけでなく、魔法の障壁を築きあげていた。
その時、隣国のセミーツの空の方で眩い閃光が閃いた。何か大変なことが起こっているようだ。
慌ただしく目まぐるしく事態はどんどん進行していくようだった。
「大聖女様、モーフの治療をお願いしてもよろしいですか?」
わたくしは大聖女リリーアージュ様にお願いした。
「はい」
大聖女リリーアージュは、勇ましくベールをたくし上げると力強く答えた。緊急の時のリリーアージュ様は本当に頼もしい。
大聖女様は、瞬間移動と見紛うような速度でモーフの落下する場所まで移動すると落下して来たモーフを抱き上げた。あ、スカートがと思わないでも無かったが目をそらす。
リリーアージュ様は抱き抱えたモーフ様にすかさず治癒の魔法を全力で掛け始めた。
バシ!
稲光が走り、無防備なリリーアージュ様に向かって走り落ちた。
大聖女リリーアージュ様は、右手を高々と上げると瞬時に魔法防壁を形成してその稲光を防いだ。さすがだ。
その時、頭上から強い魔力の気配が舞い降りてくるのが分かった。
「来ます!」
わたくしは大声で叫んだ。
見ると九本の尾を大きく開いた大狐が舞い降りてくるところだった。
「ガイア! 逃がすか!」
九尾の大狐はそう叫ぶとリリーアージュ様に向けて急降下して行った。
九尾の大狐の後ろには一回り小さな妖狐が少し遅れて付いてくるようだ。その妖狐は何やら叫んでいる。
「お姉様。ガイア様にそのような事はなりませぬ。まだ幼子では有りませぬか!
きっと庇護者がおられるはずです」
「あははは。ガイアが幼生となって現れたのだ。このような好機を見逃すなどできぬわ。
ワチキはこの者を始末して更なる大神になる。そしてこの大地を天津神より取り戻してやる!」
九尾の大狐は、高らかに笑いながらそう叫ぶと新たな雷槍を作り上げ、大聖女リリーアージュ様を目掛けて投げつけた。
この間近からの雷攻撃は避けらぬだろう。
「くっ!」
大聖女リリーアージュも流石にモーフを治癒しつつでは防御できないと身構えるしか無いようだ。
その時、ギィィーン! と金属を割くような凄い音が鳴り響いた。
いつの間にと思う速技で剣技を発動したのだろう。剣を抜いた剣聖天アイリス嬢が大聖女リリーアージュを庇うように立っていた。
「剣聖天様。ありがとうございます」
大聖女リリーアージュ様が剣聖天アイリス嬢に礼を言った。
九尾の大狐が投じた雷槍を剣聖天アイリス嬢が剣で跳ね返したのだ。
「ほほー。ワチキの大雷槍を跳ね返すとはソチはどこの神かえ?」
巨大な九尾の大狐がアイリス嬢とリリーアージュの前に降り立つと言った。
わたくし達も、すかさずリリーアージュ様の後ろに付いた。
感謝の気持ちを込めて本日二話目です。
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