220 あわあわ
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《天の視点》
《時間は少し遡る》
第二大魔王ゼクスカリバーは、要塞からどんどん出てくる軍に目を見張っていた。
「ふふふ笑わせるでは無いか。馬鹿どもめ。音楽など奏でてなにを浮かれておるのだ。そうは思わぬか?」
大魔王ゼクスカリバーは、おかしそうに腹を抱えて笑った。
「まさに。本当に馬鹿ですな。あんな立派な要塞を築き上げながら打って出るとは」
側近のエルダードワーフが答えた。
しかしその余裕の嘲笑は直ぐに驚きへと変わった。
「おい。どれだけいるんだ?」
大魔王ゼクスカリバーは側近に向かって尋ねた。
「さあ?」
「おまっ、ここには多くいても数万って、見ろよあれが数万なんて人数か?」
「すみません大魔王様。ですが確かにケーセシャリー軍は多くても五万程度ってことでした、、、」
側近は申し訳なさそうに言い訳した。
「なんかおかしいだろ? あんな要塞があるって話も無かったし。その情報を持ってきた奴らは無能なんじゃねぇか?」
「大魔王様の仰るとおりですな。こんど締めてやります。しかし雑魚がいくら多くいても我ら巨大アイアンゴーレムがあれば安泰でしょう」
そんな話をしている間にも要塞から出てくる軍の数はみるみる増えていった。
「あ、あんなにいるとはこれは十万や二十万では済むまい。しかし、この軍団の練度はどれほどなのだ。みるみる陣形を変えていくではないか?」
「左様ですな。とは言え我らの最強のアイアンゴーレムさえあればひ弱なヒューマンやトカゲ共などいくらいようと恐れるに足りませぬ」
「そうだな、ふふふふ」
笑う二人の顔は、いきなり走り始めた敵軍がグングン近づいてくるに従って次第に引き攣った。
「馬鹿な! 奴らに勝算が有ると言うのか。それとも数で一気に攻めればなんとかなるとでも言うのか?」
側近が引き攣った顔で叫んだ。
「とは言え、数は力だ。早々に集団魔法を準備せよ。アイアンゴーレムも始動し、長距離攻撃をする準備だ。あんな数で突撃されたら我らの軍も無事ではすまぬぞ」
「はっ。射程に入り次第、攻撃できるように準備は整っております」
別の者が第二大魔王ゼクスカリバーに答えた。
その時だった。
今までに感じた事もない不思議な感覚と共に頭上を何かが飛び去る【ザン!】と言うような音と共に衝撃が第二大魔王軍数千の全員の身体を貫いた。
「な、何が起こった?」
「敵の攻撃でしょうか?」
側近も驚いて辺りを見回した。
「ん? アイアンゴーレムの様子がおかしいぞ、稼働しておらんのでは無いか?」
異変に最初に気付いたのは大魔王ゼクスカリバーだった。
「今のはアイアンゴーレムを一時的に停止する魔法だったのでしょうか?」
側近も停止しているアイアンゴーレムたちを見て顔を青ざめさせながら答えた。
「直ぐに復旧させよ。敵軍が直ぐに来るぞ。集団魔法で敵の来るのを少しでも止めるのだ。
そろそろ射程だぞ!」
第二大魔王ゼクスカリバーも叫んでいた。
そう、叫んだ時だった。
巨大アイアンゴーレムの一つの上半身が徐々に傾き始めたのだ。
そのアイアンゴーレムを操っていた達人級、豪級魔導士達が悲鳴を上げて異常事態を知らせた。
「な、あれは攻撃だったのか?」
第二大魔王ゼクスカリバーは、唖然として傾いて徐々に傾いていく巨大アイアンゴーレムを見上げて嘆息した。
しかし、彼らは直ぐに異変がたった一機のアイアンゴーレムに起きたのでは無いことを知る。
「大魔王様、別のアイアンゴーレムに亀裂が発生しておりますぞ!」
異変に気付いた側近が叫んだ。
「何? どれくらい被害が出ておるか直ぐに調べろ。修理のできるものはさっさと修理を、、、、」
その時、傾いていたアイアンゴーレムのバランスが一気に崩れた。
自軍の最高戦力が無惨にも破壊される様を見て各所で悲鳴が上がった。
「回避しろ! 倒壊するぞ!」
アイアンゴーレムの近くで稼働させていた者たちも必死で叫んだ。
アイリスゴーレムの下の者たちが蜘蛛の子を散らすように周囲に走って逃げた。
その時、大地を揺るがせて一機のアイアンゴーレムが崩壊した。大音響と土煙が舞い上がった。
各所の悲鳴が更に大きくなった。
しかし、彼らはその混乱の中に更なる悪夢を目の当たりにすることになる。
一機のアイアンゴーレムが崩壊した振動により幾つかのアイアンゴーレムもバランスを崩し始めて倒壊し始めたのだ。
「逃げろ。巻き込まれるぞ」
アイアンゴーレムの操作員達は悲鳴を上げて倒壊するアイアンゴーレムから逃れようと走った。
「な、なんだ? 我がアイアンゴーレム軍団に何があったと言うのだ?」
第二大魔王ゼクスカリバーは、うわごとのように言うとあわあわと慌て騒ぐのであった。
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