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022ー2 お引越しの前にやらねばならないことって?

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 さて前世の俺の感覚では全く無駄なことだが、次期公爵である俺の住居を変えると言う事は一大事なのである。


 そもそも、俺が移動すれば従者のアイリスやリビエラなど俺の嫁候補達だけでなく男の従者やら更には使用人達も、そして位の高い従者達には彼らにも使用人が存在するわけで、そんな団体が一緒についてくるのだ。


「リビエラ。どれだけつれていくんだ?」


「マーキラーシュ子爵家アイリス様。エデンバーグ子爵家エーメラルダ様。ジェラート男爵家サスティナ様。ラリー公国バーリカルラー騎士爵家リリーアージュ様、、、」


「ああ。僕の従者が皆来てくれるのはありがたいことだと思っているよ。そうではなく使用人達などで総員は何人ぐらいになるの?」


「何人って、それほど少ない訳がありません。何百人でしたか。次期テンシラーオン公爵家の後継者であり、王位継承順位を保有されるレリトニール公子様に相応しい使用人の総員は、簡単に数えられるほどとは、、、」


 なるほど、才女のリビエラ嬢ですら把握しきれないほどいるのね?


 何とも無駄なことで。恐らく俺一人の一日を賄うための金額は、想像を絶するだろう。


 俺は俺の馬車の背面の窓から背後を覗き、何十台もの馬車が俺の馬車の後を追随しているのを見て、大きなため息をついた。


「修行中はアイリスと荷物持ち数人だけだったから気楽だったが、、、」


 俺の呟きを聞いてリビエラは、ギョッとした顔をして俺を見つめた。


「申し訳ありません。アイリス様と変わりましょうか?」


「いや。リビエラと一緒なのも楽しいから良い。もちろんアイリスと一緒にいても楽しい。久しぶりに大勢で移動したので、息が詰まっただけだよ」


 余計なことを言って、彼女達に更なる心労をかける訳にはいけない。


 リビエラの後ろの座席から俺を見ていたアイリスが嬉しそうに俺の方を見ているのを視野の端にとらえた。そしてリビエラもほっとしたようで、表情が柔らかくなった。俺の答え方が間違っていなかったと胸を撫で下ろす。


「せっかく色々、段取りしてくれたのだろうが、できる限り質素に。無駄を省くようにして欲しい。このようなことで皆に申し訳ない」


 俺は優しい笑顔を心がけて、リビエラにお願いした。無駄が嫌いだとかそんな崇高な思いと言うよりも貧乏臭いだけなのだが。何よりも俺なんかモブに対してあまりにも皆に申し訳ない。


「はい。承知しております。本来なら学園内に居館を造営するべきところとは承知しております。わたくし如きでは公子様に相応しい佇まいなどとても無理でした。大変心苦しく存じております。お優しい公子様のお心遣いに感謝いたします」


 リビエラは、深々と頭を下げて言った。


 この娘は、頭が切れすぎるのだ。馬鹿な俺の何でもない一言の意味を深読みし過ぎるのだ。


 彼女の紫の色彩が微妙な光沢となって美しさを際立たせる銀髪が彼女の秀でた額から垂れて彼女の表情を隠した。


 俺はまたまた余計なことを言ったことを悟って慌てて話題を変えることにした。


「リビエラ。エリックは学園で名声を馳せているようだね」


 エリックとはリビエラの兄に当たる。俺よりも四歳上の親戚のお兄ちゃんみたいな存在である。


 途端にリビエラが視線をあげて笑顔になった。


「三年生のトップは、第二王子殿下で次席が兄だと伺っております」


「実質のトップと言うことだろう」


「いえ。兄の話ではエイラート殿下は、本物の天才とか」


「エイラート殿下は、うちの晩餐会で何度かお目にかかったが、お優しいそうな雰囲気が勝る方のような雰囲気をされておられた。天才とまで称せられるほどに達者な方とは存じ上げなかった。迷宮にばかり引きこもっていては世辞に疎くなっていけないね」


 俺はリビエラの表情が明るくなって安心して言った。ちなみにリビエラは二年生のダントツのトップだった。今年彼女は三年生になる。本当に凄い娘なのだ。


「レリトニール公子様は、わたくしがお仕えした時より、なによりもご自身の研鑽を心がけておられました。

 ご家族の皆様や我々部下達、さらには領民達への心配りなど、よくそこまでお気付きになられるのだと本当に感心することばかりです。

 以後、もう少し目立たないように気をつけます」


「そうだね。この行列も華やかで街道の見物人達を楽しませている分にはいいことだよ。しかし、日々の暮らしにままならず、それに追い討ちをかけるような不幸に見舞われている人も一定数いるものだからね。

 彼らの心には不満や不公平に対する怒りが積もりに積もって今にも爆発寸前だ。僕のお父様なら許せても、なんの功績も出せてない学生如き僕などがあまり華美に無駄をしているのを見ると爆発の原動力になりかねない」


「公子様にそのような不敬を働くような者が存在するとは信じられません」


「僕にもリビエラにも、ひとりぼっちで何の楽しみも未来への希望もなく暮らす人の寂しく思う気持ちや世の中への不満は理解できないだろうね。

 でも人の気持ちを想像する事はできるはずたよ。

 本当に不幸に見舞われている人のこころはそうでない人の想像よりも(すさ)んでいるものだよ」


 もちろん、俺にはそんな寂しく不幸な人生を歩む人達の気持ちが手に通るように理解できる。


 なぜなら俺は前世でそんな不幸な人達の一人だったからだ。と言う訳で咄嗟(とっさ)にそんな風に言ったが、本心は無駄な贅沢が怖い庶民感覚なだけだ。ケチとも言う。


 俺が何の気なしに言った瞬間、リビエラは、電気攻撃でも受けたかのような反応をして見せた。


「公子様。自分の浅薄な知識とあさはかな判断力で公子様の深慮遠謀を理解できず。わたくしなどの意見を言うなど愚かなことでした。今後は不必要なところで、目ただないように致します」


 リビエラ嬢は、深々と頭を下げて言った。


 俺はそれを見て何かまた要らないことを言ってしまったようだと悟り思わず口を閉ざしたのだった。

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