217 荒縄地獄
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《リビエラストの視点》
わたくしは、修行を終えてステータスボードを確認しているととんでもない事に気付いた。
賢王の称号が消えていたのです。
それは驚愕しました。
賢王に代わり、賢聖天と言う初めて聞いた称号が生えていました。
わたくしがその事実に驚き混乱していると
「は? 剣聖天?」
わたくしと一緒に迷宮から上がってきた剣王アイリスがステータスボードを確して驚きの声を上げたのです。
見れば公子様がわたくし達の方を見てなんだか楽しそうにニマニマ笑っているではありませんか?
「公子様。わたくしの称号が賢聖天になりました」
何かあるに違いないと思い、そう報告したら
「うん。女神アルテミス様がつい先程ご降臨されてね。王級より上の人には聖天級を授けて頂けるそうだよ」
と、なんでもないことのように説明された。
そう言えば、迷宮で少しだけ公子様の動きが変になっていることがあった。
「ああ。あの時ですね。では公子様も?」
「ああ。僕は大聖天って称号を頂いたよ」
なるほど大が付くのだから普通の聖天よりも上位と思って間違いないだろう。
「さすがに公子様ですね」
「ん? 違う違う。皆のと僕のとは少し意味合いが違うらしいんだよ。僕の場合はアルテミス様が不憫に思っての特別な扱いって奴なんだよ。無理矢理? みたいなもんだね。エコ贔屓って言っても良いね。でもそのせいで僕はレベル制が無くなっちゃうんだって。
僕のステータスはレベルと乖離してめちゃくちゃになっちゃったんだって。だからレベルを消すんだって。もっとレベル上げたかったんだけどなぁ」
光公子様は、なんか良く分からないことを言いながらすごく残念そうだ。
「レベルが無くなるのですか?」
驚いてわたくしは尋ねた。
「そうだよ。アルテミス神様がお父上の主神ゼリーシュ様にお願いしてくれたらしいよ。
僕のモブ職をランクアップして欲しいってね。でも残念だけどあれって僕の固有職で変えられないんだって。代わりにサブ職業に光公子って職業を貰ったよ。これも僕の固有の職業らしいんだ。光魔法のスキルが使えるようになるそうだよ」
光属性。そんな属性は聞いたことがない。
「公子様、あ光公子様でしたね。神様から授かった固有職なのですからそうお呼びすべきですよね。その光属性魔法と言うのは神の奇跡なのでありませんか?」
「ああ。そんなことをアルテミス様も言っていたよ。神属性魔法とも言うらしいよ」
なるほど、神属性魔法が使える職業を固有職業として授かったのだ。
すとんとわたくしの胸に落ちた。光公子様は神になられたのだろう。いつ天界に登られてもおかしくないほどお美しいと思っていたが、わたくしの想定よりもずっと早かった。
「光公子様は、アルテミス様の恩恵がとても厚いのですね」
光公子様は、いつもアルテミス様の恩恵を受けてらっしゃる。
もしかしたら女神アルテミス様も光公子様がとてもお好きなのだろうか?
処女神とも言うし、光公子様のことを? まさかね。
「ああ。そうそう。アルテミス様から秘密と言われていたから言えなかったんだけど、今回お許しが出たから言うけど、アルテミス様の恩恵は実は10なんだよね。
ステータスには5《秘密》って表記されているんだよ。でも実際は10だよって言われていてね。あははは変だよね。でも今はステータスボードに普通に10って表示されるようになったよ。ようやく安心して見せられるようになったよ」
そう言いながら光公子様はステータスボードをわたくしになんの躊躇いもなく見せてくださった。
はい。光公子様のステータスボードはとても変です。
そもそも恩恵は3までだと言われいました。アイリス嬢が恩恵4を得たので光子様の恩恵がもしかしたら5だと仰るのも冗談ではなく本当かもとか思っている時もわたくしにはありましたが、、、
本当に10だ、、、、
それに何よ? このステータス値は? めちゃくちゃと神様が仰るのも分かる。
全てのステータス値が一千万を超えている。
わたくしはレベル886だがステータスの値は万の位だ。
「アイリス嬢のステータス値で10万の桁はあるのか?」
わたくしは皆に聞こえないように小声で尋ねた。
「はい。攻撃力が12万です」
アイリス嬢が耳元で答えてくれた。
やはりそうか。最もレベルの高いはずのアイリス嬢でもその程度なのだ。
この方はもうとっくに神様に御成になっていらっしゃったのだ。
どうりで、光公子様と一緒にいる者は簡単に神の恩恵が授けられるはずだと納得してしまった。
そもそも光公子様に好かれるとはそう言うことなのだろう。
しかし、この数えきれないスキルはなんなのだろう?
見るとスキルに必ず付いているはずのレベル表記がない。
「光公子様。ステータス値が一千万を超えているんですね。それにスキルは何百個あるんですか? あ、光公子様のスキルもレベルが無いのですね」
わたくしが皆に聞こえるように説明してあげると皆はギョッとしてわたくしの方を見た。色々想像していたのでしょうけど、光公子様のステータスはそんな想像を遥かに超えるものでしたね。
お手上げですわね。わたくしが目で皆に語りかけると、皆、盛大に頷いてくれた。
「あ! 本当だね。スキルレベルまで無くなっているじゃん。あーあとても残念だよ。少しずつスキルのレベルが上がっていくのが唯一の楽しみだったのに。これから楽しみはステータス値を上けるだけになっちゃったね。でもステータス値もあまり上がらなくなったしね」
「そうなのですか? とてもステータス値はお高いように思いますが」
「前は修行したら10パーセントくらいは上がってたんだけど。今は、上がっても10万程度しか上がらないんだよね。
アルテミス様も笑っておられたんだけど、あまり急に上がると楽しみが無くなりますよ。だってさ」
本気で残念そうに光公子様は盛大にため息を吐きながら言った。
なんと今回の修行で光公子様のステータスは10万も上がっていたらしい。想像を絶する上がり方だ。
わたくし達は光公子様よりも大きなため息を吐いたのは言うまでも無い。
☆
なんと言う成果なのだろう。
我が軍は、モンスターでぎゅうぎゅう詰めの迷宮で修行した。
光公子様曰く、『僕の迷宮だから魔物を出したい放題なんだよ。楽しいでしょ?』だそうだ。
あまりにも嬉しそうに言うものだから本当に楽しいことのように感じるのが不思議だ。
しかし迷宮のあまりもの魔物の多さに修行中意識を失うものが続出したそうな。
もちろん気を失っている間も上官に縄で引っ張り回されたのは言うまでも無い。
(迷宮での縄付き修行を誰言うこともなく『荒縄地獄』と言われる様になったのはこの時からです)
たった二週間の修行により、この軍がどれほど成長したことか。
「光公子様。やり過ぎなのでは?」
わたくしはそう追求せざるを得なかった。
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