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209 天才は天才を知るが自分のことを普通の人と思っている

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《賢王リビエラストの視点》


 公子様の何も考えてませんのポーズに騙されてはダメだ。


 リールセラートの統治権をリールセラートの貴族達から取り上げた時のことだ。


「僕は軍の運営が苦手だけど、得意な人いる?」


 と聞いてきたのだ。


 それを聞いて、わたくしは八方手を尽くして、リールセラートの軍務総監に据えたのがラーケンことラキュー・ホワイトと言う聖騎士だった。


 彼は国の為に、自ら死んだと偽って他国で諜報機関の長をしていたような人物だ。


 公子様は、部下の恩赦を願い出ていた彼の願いをこともなげに叶えた上にリールセラートを手中に収めると彼らを全員解放していたのだ。


 テロなどが起こることを危惧したわたくしはその時も止めたのだ。


「テロ? 僕よりも上手く統治できるって示して欲しいね。そうすればいつでも返すけど?」


 公子様はそう仰った。


 この話は瞬くうちにリールセラート中に広まり、自分に統治させて欲しいって人がいっぱい現れた。


 どうするつもりかと尋ねたら。


「じぁ、その人に内政を任せてみたら?」


 そう仰られて役職を与えられてしまった。


 もう、めちゃくちゃ


 そんな人達の皆が優秀だったら問題無かったのだが中には酷い施策をする者も多くて苦情が後を絶たなかった。


 わたくしは、その度に公子様に国政をしてくださいとお願いしていた。


 公子様は、それらの人々の施策について様々な角度から情報収集をさせた。


 さらに詳しいレポートを作らせ、その中から特に悪評や鋭い意見だけを公開された。


 そんな失敗した施策の悪評をそんなに詳しく公表して意味があるの?

 

 わたくしには疑問だった。


 案の定、公子様の施策はめちゃくちゃだとの悪評は巷にあふれた。


 公子様はその悪評も分析させて、それまで公表してしまったのだ。


 ご自身の施策の失敗を明らかにした上に分析し、その方法の悪いところを公表するなど普通の逆だ。


 しかも、悪評を博した者をふくめて誰一人罰しようとされなかった。


 ただ悪評や意見に対して反論した者の意見はその者の名前共々必ず公表した。


 その反論が公表されるとそれがまた批判される。


 その批判まで分析して公表すると言う徹底ぶりで一部の役職などは大激論の的になった。


 わたくしにはなぜそんな訳の分からない面倒な事をされるのか理解できなかった。


 公子様のなさってらっしゃること全てがめちゃくちゃとしか思えなかった。


 わたくしは、人材不足の今のリールセラートでは何をしても混乱するのかもしれないと半ば諦めていた。


 ここにきて不思議な変化が起こり始めた。


 酷評された部署が様々な意見を取り入れて変化し始めたのだ。


 公子様はそれらの変化を公表してこの変化に対する意見まで分析して公表した。


 この辺で公子様の公表する内容に変化があったことに気付いた者はどれくらいいただろうか?


 公子様はこの時期から意見や悪評意外の言わば好評だった部署についての情報や、分析の結果成果を出している部署についての分析結果を公表するようになったのだ。


 更にわたくしが驚いたのはこれらの部署に対して気前の良い恩賞を与えてしまったのだ。


 資金などいくらあっても足りないこの時期にお金をばら撒くことにわたくしは猛反対した。


 そもそも財源はどこにあるのか?


 ところが公子様は始商王サスティナ様に秘策を授けて儲けさせた資金を湯水のようにばら撒いたのだ。


 悪評に晒されて反論もできず改善もできなかった者達への評価は更に悪化し、公子様はそれを容赦なく公表された。


 居た堪れなくなった者達から次第に役職を自ら辞し始めたのは言うまでもない。


 公子様は相変わらずで僕もやめようかなんて冗談とも本気ともつかないことを仰っておられたが。


 彼らがそんなに簡単に辞める事ができたのは公子様から、地方の行政官の斡旋があったからだと思う。


 こんなことになると公子様は最初から分かっていたようで、地方の行政官の席を用意していたようなのだ。


「人は窮するとなにをするか分からないからね。逃げ道を作っておいたんだ」


 だそうだ。


 地方の行政官になった人は、地方での評判は上々らしかった。


「一度失敗した人は強くてとても優秀な人材になるんだよ。元々、新しい施策に名乗りをあげるような積極的な人材を無駄にしたら勿体無いよ」


 そう言うものかと公子様風の人の操り方を学ぶ思いだった。


 そして、ここからがわたくしの驚いたこと。


 彼らが辞して空席となった役職に公子様が登用したのは最も的確な批判をした者たちだったのだ。


 なるほどと感心してしまった。


 その人達は、全くその役職とは無関係な素人や市民などの身分にとらわれていなかったことにも驚かされた。


「身分のない人こそ優秀な人は見つけにくいよね」


 だそうだ。


 そんな中には役職に勤め始めた一年生を登用したりした。


 面白いのは、公子様は批判するなら自分がやってみろと今度は少し強引な形で役職に就かせてしまったことだ。


 嫌がる者に義務や期限を設けるなど公子様らしく無い少し強引なやり方で内政に関わらせていた。


 公子様でもこのようなやり方をされるんだと驚いていると


「逃すなよ。お金では手に入らない貴重な人材だからね」


 だそうだ。


 面白い発想


 でもさすがと驚いた。


 この者たちは非常にうまく国政を実行し始めたのだ。


「人の失敗を参考にし、分析した情報を元にシステムが大幅に改善されたからかな?」


 なんて、公子様は仰っておられたが、自分で仕掛けておいてよく言うと呆れた。


 考えてみるとこんなに国が乱れている時には人材など求めても集まらないものだ。


「内政なんて地味な仕事に対して優秀な人材は、これだけ国が乱れている時にはなかなか見つからないよね。

 彼らは保身の達人でもあるからね。だから安全だと思わせて意見を言わせてみるしか無かったんだよね」


 最初から何もかも公子様の策略だったのだと分かる一言に思わず睨みつけてしまった。


 公子様は空口笛を吹くふりをしつつそっぽを向かれていたが、、、


「こんな荒技は優秀な賢王がいるからできるんだよ。情報は暗殺王が上手く集めてくれるし、お金は始商王が集めてくれるし

 ウホウホだよ」


 嬉しそうにそう仰ってくださる。


 天才はどこまで行っても天才だ。非才なわたくしなどがとやかく申し上げることがおかしかったのだと反省したのは言うまでもない。

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